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直人 01

頑張ってます。

僕には父の記憶がたいして無い。

15歳で死別したからではなく、それ以前も。

物心がつく年頃に不思議に思った。隣の家も、向かいの家も、なぜ毎日お父さんが帰って来るのだろうと。

日曜日にサッカーをしたり、出掛けるときは車の運転をしているのだろう。

『お母さん、お父さんはいつ帰って来るの?』

母に訊ねるとちょっと首を傾げて笑った。

『そうね、多分お正月だと思うわ。』

おそらくあれは4歳の頃、幼稚園に入った年だった。


父が帰ってくる時以外は母と僕だけの静かな生活が続いていた。

母は優しいし大きな声で叱ったりしなかったが、レイギサホウと言うのには煩かったようだ。

『ご挨拶はきちんとしなさい。』

『悪いことをしたときには、ごめんなさいと謝りなさい。』

『小さな子を苛めてはいけません。』

それらから始まって年齢に従って増えていったが、その時々で理解できる内容だったので僕は素直に守っていた。


隣のうちには庭掃除とゴミ出しの好きなおじさんと、大きな声のおばさんと、三人の男の子が住んでいた。

三兄弟の真ん中は僕と同じ年だったから良く遊んだけど、必ず弟もくっついて来ていつも泣いていた。

『おまえなんかチビだから帰れよ!』

史也がそう云うと智也はいつも泣き出し僕が慰めた。

『いいよ、智也も一緒に遊ぼう。』

小さな智也を助けようとしているのに、不思議な事に史也が手を繋がない限り智也は泣き止まない。

家の中でも同じようだった。智也が泣き始めおばさんが文也を怒る声が聞こえて来る。毎日のように。


『いつも泣かされてるのに、なんで智也は史也が良いのかな、僕は泣かせた事もないのに。』

母はいつものように首を傾げて笑いながら答えた。

『どんなに喧嘩しても本当は仲良しなのよ、兄弟だから。』

よく分からなかった、僕には弟もお兄ちゃんも居ないから。

でも隣のおばさんは僕に合うと必ず声をかけてくれた。

『あら直人君、おはよう。いつも智也と遊んでくれて有難うね、智也は直人君が大好きだからまた遊んでやってね。』

そう云われるのはちょっと嬉しかった。

お礼を言うとおばさんは大きな声で笑う。

『直人君は本当にお行儀がいいねぇ、さすがにグンジンサンの子だけあるねぇ。』

それは僕が初めて聞く言葉だった。

小学校にあがる直前の冬、お正月の準備に母が追われていた、晴れた寒い朝だった。


父の帰宅は家の一大イベントだった。

年に3・4回、三日ぐらいしか居なかったし、サッカーもキャッチボールもしなかった。車で遊びに行くこともない。

家に居る父は大半を書斎で過ごし、ご飯を食べ、ときどき僕の書いた絵日記や作文を読み、また書斎へ戻った。

お向かいのおじさんのように犬の散歩もしない(犬は居ないから出来ないけど。)。

お父さんの邪魔はしてはいけないと、母に言われていたから僕も絵本を読んでいつも静かにしていた。

父はあまり・・・ほとんど喋らない人で、顔も喜んでいるのか怒っているのか分からなかったけど、家に居る間は僕が父の背中を流すのが日課だった。

広い背中を力いっぱい洗ったが、きっとさぞかし物足りなかっただろう。

湯船に並んで入っている時、僕はいつも父の顔を見つめていた。優しい顔をしている(のぼせそうに見えたが。)父が好きだった。

『肩まで浸かって10数えなさい。』

いつも先に出る父に言われて僕は一生懸命かぞえた。

父が出ると浴槽のお湯が半分に減って肩まで入れるのが大変だった。


元旦の朝、いつもの朝食時間を過ぎてお腹がぐうぐうなりだした9時に父が帰ってきた。

帽子をかぶり灰色の短い上着と同じ色のズボン、靴はいつもピカピカに光っている。上着の胸には綺麗なバッジがたくさん付いていて僕はそれを数えるのが楽しみだった。

『お父さんはグンジンサン?』

食卓で唐突に訊ねたのはその言葉を忘れない内にと思ったからに過ぎない。母の手が止まり、父はゆっくり眼を上げて僕の顔を見つめて頷いた。

『そうだ、私は軍人だ。』

『それは何?』

『職業だよ、軍隊で働いている。』

それから父は子供の僕に分かるように話してくれたが、僕が理解出来たのは今の僕達、母や史也や智也の住む日本という国を守っている仕事だと、言うことだけだった。


その年は帰って来ていた父は2年生になるとぷっつりと帰らなくなり、代わりに手紙が届くようになった。

元気か? お母さんの云うことを聞いているか? 勉強はしているか? 自分のことは殆ど書いてなかったが子供の僕は嬉しくて、必ず返事を書いていた。

それでも6年生になるころにはさすがにおかしいと思い始め、母に食い下がって聞き出したのは、

『お父さんは今が一番お忙しいの、軍隊のお仕事にはお休みはあまり無いのよ。』

たったそれだけの言葉でも真剣な表情で言われると、それ以上は聞けなかった。



僕は中学に上がってすぐイジメにあった。

理由は、軍人の子だから。

人殺しの軍人の子供は仲間外れにされた。

僕たちが住む日本の国を守っているのに、なんで父が人殺しになるのか分からなかった。                                                              僕は仲間外れでも気にしなかったが、担任の先生が物凄く怒ってイジメに関わった生徒8人が叱られた。

『警察官も軍人も大変で厳しい仕事だ、やった事もない者がいい加減なことを言うな!』

先生は怒りに怒って授業参観日に集まったお母さん達にも言ったらしい。

『私の兄は11年前、尖閣諸島防衛戦で亡くなりました。

戦争を肯定しようとは思いませんが、国を守る為に戦った兄を私は尊敬します。そこに居なければ解らない状況も有ります。何も知らない子供たちの前で無責任な発言は控えて頂きたい。』

母から連絡が行ったのか、しばらくして父から手紙が来た。

中には通行証が入っていた。

『お父さんに届け物があったから丁度良かったわ。

独りで行って来れるかしら?』

世田谷の自宅から立川までは子供には遠く、心細かったが行けないとは言えなかった。



夏休みの一日、僕は初めて連隊基地に足を踏み入れた。

正門で僕を待っていたのは黒い作業着を着た大きな人で、乏しい記憶の父と比べてももっとずっと大きかった。

『神藤中佐の息子か?』

頷いた僕をじろじろと眺めてフゥンと唸る。

『細いし小っこいなぁ、まあ良い、来な。』

大股で歩く大男について行く為には小走りになる、通行証を首にぶらさげたまま僕は走った。

新築のように綺麗で大きな体育館のドアを抜けると、見た事もない様なトレーニングマシンが何台も並んでいた。


『直人。』

立ち竦んだ僕を父の声が呼ぶ。

眼を向けると思わず声の主を探した。黒服の男達の中から現れた父は小さく見えたが、近づくとそんな事は無く周りが大きいだけだと解った。

『大きくなったな、もう13歳か。』

父の笑顔は他人のように明るい。

『どうした? お母さんは元気か?』

頷いた僕の肩に暖かい手が置かれる。驚いて見上げると心配そうな眼が見返してきた。

『もう少し待っていなさい、お昼を一緒に食べよう。』

ベンチに僕を座らせて父は男達の中へ戻っていった。


10人ぐらいの黒服の男達は、まるで本で読んだ狼の群れのように見える。そして不思議な事に父が群れのリーダーのようだった。父の合図で動いているからだろうか。

(喧嘩の仕方を教えているみたいだ。)

組んだり離れたり、手や足を使ってもの凄く速く動く中には、僕を連れてきてくれたヒグマのような人も居た。

絶対にヒグマの方が強いと思ったのに、もう一人の人は動く度にビュンビュン音がしそうなほど早くて僕の眼では追いつかない。

空手とか柔道とは違う格闘技で初めて見るものだった。

父は誰とも戦ってはいなかったが、ヒグマを倒した背の高い人に色々教えている。

緑灰色の眼だからきっと外国の軍隊の人なのだろう。

丁寧に、何度も何度も繰り返し・・・その顔は厳しいけれど、なぜだか優しく見えて・・・

やがて時間が来るとバラバラと散って行った。


『待たせたな、直人。』

笑顔が・・・嫌だった。

なんだか、急にもの凄く嫌になった。

笑う父も、話す父も、何かを教える父も・・・

母には笑顔なんて見せないのに、僕にはあんなふうに教えてはくれないのに、僕達には会う時間さえ・・造ろうともしないのに!

何かを言う父の手を振り払うと僕は走り出した。


泣きたくはないのに、負けたくないのに、涙が出て止まらない。息が切れて足がもつれた。正門の近くで転ぶと、もう歯止めが利かなかった。

いつも周りに大人だとか落ち着いているとか云われていた僕が、記憶にある限り初めて大声で泣いた。

まるで智也のように泣き叫んだ。


お父さんは僕やお母さんなんて要らないんだ・・・


泣きながらそれでも僕は願っていた。父が来てくれるのを、

あれは全部違うのだと、本当は僕たちが大好きなのだと、そう言ってくれるのを待っていたのに。


『小僧、気が済んだか?』

氷水のような冷たい声が僕の噴出した感情を一気に冷ます。

蹲っていた僕の頭の近くに立つ二本の足。

涙でぼやけた眼に緑灰色の綺麗な瞳が映った。

『ひとつ教えてやろう、自分を哀れんで泣ける内は幸せなんだ、人は本当に絶望すると涙さえ出ない。

お前の父親はもうお前一人の者ではない、父親に近づきたいならお前が此処に来い。』

『・・・要らない。 あんな人僕はもう要らない。お母さんは僕が守る、もう帰ってこなくて良い。』

思わず返した言葉に男の片方の眉毛が上がった。

それでも僕は、僕の精一杯の力で立ち上がると男に背を向けて歩き出した。

『後悔するぞ、直人・・・』

僕は振り向きもしなかった。




僕はもう父を待つことに疲れていたのかも知れない。

母は心配していたが、僕が父以外のことではあまり変わらない生活(勉強やクラブ活動に熱心だった)なので、様子を見ることにしたらしい。父からは手紙が何通も来たけど僕は封も開けなかった。

頭の中から父を切り離すのは簡単だった。この5年、顔を合わせたのは唯の一度、この間だけだから・・僕の生活に必要な人ではないのだから。


父が消えると急に視界が広がった気がした。

よく見えたし、よく聞こえた。

今まで以上に勉強が楽しくなったし、部活の剣道も面白くなり友達も増えた。その中には以前僕をイジメた何人かもいたけど、今はもう誰も何も言わない。

体育祭、文化祭、くりかえす春夏秋冬。

夏のプール、冬のスキーやスノーボード、前期後期の試験で連続一位が嬉しかった。

身長は相変わらず伸びなくてそれだけが唯一のコンプレックスだったけど。


高校受験でも何の苦労もしなかった。

都内で一番有名な都立A高校は大学進学率100%、その内訳も東大、京大、とそう簡単には入れてくれないような国立大学の名前が目白押しに並んでいた。

『あらまぁ、直人君。すごい高校に入ったねぇ。』

入学式の日、隣のおばさんは僕の制服を見て驚き、デジカメで写真を撮ってくれた。

『お父さんにも送ってあげなさいね。』

そんな必要はないと思ったけど、きちんとお礼を言うとおばさんは溜息をついた。

『偉いねぇ、直人君は。爪の垢でも貰いたいよ。』

史也とは中学では一度も同じクラスにならなかったから、今では遊ぶ事もなかったがあまり良い噂は聞こえて来ない。

『智也は元気ですか、今度3年でしょう?』

『相変わらず史也にくっついててねぇ。』

話を変えようとして失敗した、慣れない事はしない方が良いらしい。


高校生活は充実していた。理数系は途端に難しくなったが、元々好きなので返って楽しいぐらいだった。

剣道も続けていたし、新しい友達もたくさん出来た。


7月生まれの僕が誕生日を控えたある日、父が死んだ。


予兆も前触れも一切無く、午後10時に家に来た軍人から報され、母と僕は車に乗り込んだ。

車内で母は蒼褪めたまま僕の手を握り締め、黙り込んでいた。

連隊本部で説明を聞いたが、演習中の事故としか言わなかったし、遺体との面会は丁寧に断られた。

『損傷が激しいので、お勧め出来ません。』


二日後に軍葬となったが、その直前に僕はひとりで本部を抜け出しあの体育館に向かった。

前に来たときは気付かなかったが、ドアにプレートが掛かっていた。G倶楽部と書かれていた。

中に入ると、男達がまるで僕を待っていたかのように並んでいた。黒服ではなく、白と灰色の綺麗な制服に鏡のように磨き上げたピカピカの靴、真っ白な手袋。


『待っていたぞ、直人。』

あの緑灰色の眼が真っ直ぐ僕を見つめていた。

『お前は父親が嫌いなようだが、この場の全員は神藤中佐に拾われ、救われ、育てられた。真に偉大な人だった。

お父上のお悔やみを申しあげる。』

大きな声ではない、むしろゆったりとした深い声。

圧倒されるほどの深い声・・・


僕が葬儀で覚えているのはそれだけだった。

母も僕も言うなりに動き、されるままになっていた。

最後の敬礼で真っ白の手袋が翻る様は美しいと思ったが。


家に帰って3日の間、二人でぼうっとしていた。

今まで居なくても当たり前だったのに、慣れて居る筈なのに、何だかおかしな気がした。母も同じようで、

『何も変わっていないのにね。』

そう云って少し笑ったけど、きっと今はどうしようもないのだろう。父の兄の弘毅伯父も母の姉の梨花伯母も心配してくれたが、僕はきっと大丈夫だと思っていた。


実際に学校に戻ると以前と何も変わらなかった。

早朝練習の為に朝は6時に家を出て、授業を終わらせてまた部活、帰りは夜の9時を回っていた。

母は食べ盛りの僕の為に毎日ふたつの弁当を持たせてくれたし、部活仲間と食べるようにとおやつも持たせてくれた。

『食べさせ甲斐がないわね、直人は。』

いくら食べても太らなかったけど、嬉しいことに身長は少し伸び始めた。と、思ったらいきなり伸びた。

母が嘆いたのは秋の初めだったのに、正月には176㎝。

20㎝も視点が変わると人生が変わると初めて知った。

2年生になった頃には180㎝を超えていた。

『お父さんより大きくなったわね。』

『そうかな、でもそろそろ打ち止めだよ。』

母は用心深く制服の新調を控えていたから、すこし恥ずかしくてその頃はジャージばかり着ていた。


結局母は正しかった。僕の背は185㎝でやっと止まり、制服もジャージも胴着や袴、靴まで買い換えなくてはならず、私服も同様だった。

『お父さんに合ったら驚くわねぇ。』

生前は父の話題にはあまり触れなかったが、最近はちょくちょく口にする。僕も居ない人を怒る気も無かったし、夜ぐらいは母の話し相手になろうと努めていた。



2年の夏で部活を卒業すると、大学受験一色になった。

国公立以外は考えなかった。

父の年金は決して少なくはなかったし、保険金や預貯金も有ったけど、いま46歳の母の老後は長い。

僕は当然母の面倒を見る積もりだが、人生は何が起こるか判らないから、無駄に出来るお金なんかない。

大学を出て、できれば留学もしたいし、駄目なら院に進むか・・・商社なら一流を、官僚ならまずは赤門か。


『お父さんの跡は? 麻布の陸士大学は難関だけど良い学校だと評判よ。』

『・・・僕は軍人にはならないよ。』

溜息をついたが母はそれ以上言わなかった。

すこし大人になった今なら父の仕事は理解できる。

妻子よりも、国を。その為には部下を育てなくてはならないのも当然だと思う。

でも、それならば父は母と結婚などしなければ良かったのだ。後に何も憂いを残さず自分の信じた道程を突き進めば良かったのだ。この世に存在しなければ息子だって苦しむことも無く、悲しむことも無かった。

それを母に言うことは出来なかったが・・・


3年になった春、だいぶ目標が絞れてきた。

やはり東大なら誰にも文句は言われないだろう。

塾は嫌だったからネットの家庭教師、Aiを駆使して授業以外に6時間、がっちりと詰め込んだ。

全国模試で合格圏に入りほっとした頃だった。

下校時の校門に一台の車が僕を待っていた。

『直人。』

一般乗用車から声を掛けてきたのはあの緑灰色の瞳を持つ男だった。真顔で呼ばれ、車に乗ると、

『今朝、お母さんから電話があった。』

小さいレコーダーから母の声が流れてきた。

それは自分の夫の神藤直哉につないで貰いたいと言う内容だった。直通に掛けても繫がらないが任務で出掛けているのか、何度掛けても繫がらないのだと繰り返す母の声。

相手をしていた女性職員の声は全く動じず、保留にしたうえで誰かにつないだ。つながった途端に女性職員の声にパニックが入る。そこで切れた。

『後は俺が替わった、お母さんの中では神藤中佐が生存している、お前の進路を相談したいそうだ。』

頭が真っ白になった。


『俺は医者ではないから、余計な事は言えない。

中佐は出張だと言っておいたが、いつまでも持つものではない。早く医者に連れて行ったほうが良い。』

黙り込んだ僕に続ける。

『相談できる親族は居るか?』     

『伯父と伯母がいます。でも・・まず僕が話してみないと。』

男は一枚のカードを差し出した。

陸軍大学病院の名が記されていた。

『まだ名乗ってなかったな、俺は雪代、中尉だ。

此処に連れて行け、遺族のトラウマやカウンタークラッシュはベテランだ、きっと治してくれる。』

家の近くまで送ってくれて、男・・雪代中尉は必ず連絡をするように言って帰って行った。


家に入ると母が夕飯の支度をしていた。

『お帰りなさい、もうすぐ出来るから待っててね。』

いつもと何の変わりもない母の声に僕は戸惑った。

レコーダーを聞いていなければ、雪代中尉の話だけなら、絶対に信じなかっただろう。だから・・あの人はレコーダーを持ってきたのだろう。確認しなければならない。

『母さん、連隊に・・電話した?』

母の手が止まり振り替える、笑う、そして・・・

『あら、お父さんから電話が行ったの? 出張だって聞いたけどやっぱり心配なのね。』


落ち着け、落ち着け、落ち着け・・・


『母さん、父さんは一昨年死んだんだよ。』

『・・・え・?』

僕の眼に映る母から笑顔が消えていく、いや・・消えたのは笑顔だけじゃない・・表情が・・・

『母さん、大丈夫だよ、僕がいるじゃないか。父さんなんてもうずっと居なかったんだ、僕が守るから・・』


言えば言うほど母は身を護るように小さくなる・・


母の中の心が、気持ちが、精神が、かじかむ様に縮こまって行くのが見えた。



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