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        03

キッドがヒースロー空港に着く頃、キリ-はアリスを見ていた。

キッドに預けてひと月、アリスの急激な伸びに驚いたが、それはまだ口に出す訳にはいかない。

だが良く聞いている、良く見ている、何処かぼんやりとした表情は今もさほど変わらなかったが、ルウの言葉では無いがやっと自分の立ち位置が判ったようだった。

キッドの仕込みでは動きが4割、力は5割。その数字は驚異的とも云えたが攻撃は一切させていない。躱しきる事を大前提とした訓練に嫌な顔一つせずのめり込んでいた。

今ではキリ-は自分の力量を五分五分として相対していた。幾らガタイの良いアリスでも軽く吹っ飛んでしまうが、躱しを覚えるには確かに痛い眼に合った方が速い。

そして今日も今日とてアリスは吹っ飛ばされていた。



「月龍が出たぞ。」

エラ-のお化け呼ばわりの声に情報室に行くと大型モニタ-に相変わらずの美貌を誇るキッドが映っていた。

絹の光沢にも負けない肌、形良い頭、すんなりと伸びた首筋からデコルテの美しさは匂い立つようで、振り向いた煌めく瞳や視線を外せない唇までを見なくても美の女神の申し子と呼ばれるのが判る。プレパーティでは花嫁の白が許されて居た為、本人が一番好きな真珠色のドレスを纏っていた。

華やかな笑顔を振りまく月龍姫にジ-ンとキリ-は何処か不安げだった。

出しなの機嫌の悪さを知って居るだけに二人は思わず顔を見合わせる。

「大丈夫か?」

「帰ってからが怖いな。」

少し考えてジ-ンが云った。

「なぁキリ-、帰国したら二日か三日キッドの相手をして遣ってくれ、発散させた方が良いだろう。」

「・・・もっともだな。」

別の意見も有った。

「やっぱり綺麗ですね、キッドは。」

カイルの声に那智は首を傾げた。

「綺麗だけど僕はアマゾンの女王のキッドの方が好きだな。この人は動いていた方が溌剌としている。」

ハクが吹き出した。

「確かに飾り物には不向きだ。大体がじっとしてない。」

「知らないと云う事は幸せな事だ、見ろよイギリス士官の面を。涎を流さんばかりだぜ。」

シュリの笑いにモクが答えた。

「ディランのお蔭で月龍姫は士官好きとなったからな。制服きてりゃ良いってもんじゃ無いんだが。」

イヴも頷いた。

「制服もだけど、今回はやけにショートカットのレディが多いですよ。とても似合わない顔の人までショートにしている。」

ジ-ンがいきなり吹き出した。

「知ってるか、連隊の床屋の親父が自慢してるのを。月龍姫御用達と看板まで出す勢いだった。」

狭い情報室に笑い声が充満した。

多種多様の情報を流す情報番組でも特別枠を組むほどの英国皇太子ご成婚のニュースが終わると、G倶楽部員達はわらわらと出てきてそれぞれに散って行った。

キリ-に声が掛かったのはその時だった。


「キリ-、少し良いですか。」

ジンジャーの固い表情にキリ-は中庭へ連れて出た。

21期生の第一順位、G倶楽部のジンジャーはこの処精彩を欠いていた。

ラウルやアリスが派手に伸びているせいか気付きにくかったが、エラ-もジ-ンもシュリからの報告もジンジャーに関しては芳しくない。伸び悩むと云うより迷って居る様だと聞いていた。

怜悧な頭脳、整然とした言動、徹底的に追い詰める攻撃性はコオハクでさえ思わず眼を見交わすほどの冷徹さに満ちている。体力的にも何の問題も無かったが、今の表情にはその片鱗さえなかった。


「最近はどうだ?」

「私が思っていたG倶楽部と随分違うようです。」

静かなキリ-の問いに返されたのは辛辣な言葉だった。

思わず顔を見たキリ-にジンジャーは訴えた。

「日本陸軍最精鋭G倶楽部と聞いていたのですが、私の眼にはそうは見えません。情報番組を見て笑っているなんて考えても居ませんでした。まして任務でも無いのに社交界紛いの扮装をする必要が何処に有りますか。

それがG倶楽部の第二戦闘兵士だなんて。幾ら腕が立ってもあれでは話になりません。此処の皆さんは彼女が可愛くて甘やかしているようですが、私からすれば信じられません。軍人と云うのはもっとストイックなものでしょう。

私が云ってる事は間違ってますか?」

暫くの間キリ-はジンジャーの言葉を噛みしめていた。

結果は明白だったが速攻で告げる訳にはいかない。

「俺達はごく普通の人間だ、飯を喰うように笑いもするし怒りもするがそれが悪いとは思わない。過酷な任務の間に仲間たちと過ごして元気を充電してまた出て行く、それの繰り返しだ。そしてキッドの月龍にはそれなりの理由が在る。今ここでお前に説明しても意味は無いからする気も無いが、月龍誕生には九龍島との長い付き合いからの絡みが有るんだ。単に甘やかしている訳ではない。」

「云って呉れなければ判断の仕様も有りません。」

木で鼻を括ったような答えに思わずキリ-も強い言葉で返した。

「初陣もまだのガキに判断して貰う必要は無い。」

「私は・・・判りました、もう結構です。」

くるりと踵を返してジンジャーは中庭を後にした。

キリ-は僅かに息をついて煙草に火を点ける。


吸い終わる頃にジ-ンが現れた。

「ジンジャーは辞めたぞ、こんな処には居る意味が無いと云ってな。」

「ああ。」

「ラウルとアリスにも声を掛けていたがあの二人は動かなかった。だから余計に怒っていたが。」

「うん。」

「ルウには速攻で連絡して置いた。」

「そうか。」

二人とも解かって居た。自分の価値観以外を認めようとしない者がこのG倶楽部でやって行けない事を。

「軍人も厳しいぞ、あのタイプは。」

「そうだな。」

首を斬るのも嫌なものだが、辞めて行かれるのも情けない気がする二人は、後は黙って煙草をふかしていた。




挙式を明日に控えてキッドは玲蘭と部屋に籠っていた。

ダガーと銀線は思ったより役に立ったので、玲蘭をせっついて新たな暗器の仕込みを始めたのは九龍島から。

ジ-ン達が心配するより機嫌よく月龍を務めていたのはそのせいもある。

今回は針だった。手の平ほどの長さのそれは金属探知機には掛かるものの、ミリタリーでの出動には差しさわりは無い。銀線を使っての砂漠の戦いを話すと玲蘭は何時に無く嬉しそうに笑った。おかしな処でこの二人は話が合うようだった。

「本当に月龍様が次代の刺し姫ならばもっと色々とお教え出来ますものを。」

「無理を云うな、二股は得意じゃない。」

日本陸軍の軍人と月龍を掛けている事をすっかり忘れているキッドと玲蘭だった。

「毒はお使いにはならないのですね、あれは楽ですが。」

「うーん・・・どうも苦手だな、今更だが殺すために手段を択ばないと云うのは・・・戦っての事なら納得出来るんだが・・・」

玲蘭は優しく微笑んだ。

「月龍様は軍人ですからね、それで宜しいと思いますよ。」

この二人以外には繫がりの分からない会話だったがそれは其れとして、

今回の月龍の衣装の見立ては珀龍だった。

今までは蒼龍の好みが満載だったが同じ兄弟でも趣味はかなり異なる様だった。

シンプルさを好む蒼龍に対して珀龍は華やかさを前面に押し出し、化粧もきっちりと造り込んでいた。眼尻に入れた僅かなラインはキッドの双眸をより引き立て長い睫毛もいっそう際立つ。

圧巻は唇であった。

青光りするほどの深い真紅、元々が形の良い唇に塗られた紅はキッドの肌に良く似合う血の色だった。

ウェストミンスター寺院の大聖堂に現れた月龍は圧倒的な存在感を放っていた。

つけられた本人さえどうやったのか判らないほどしっかり止められた左耳の花は芍薬、その大輪の華やかさに引けを取らない美貌、淡いグレーと淡いピンクの流れる様なドレスはローブデコルテ。誰の眼も花嫁のプリンセスエレンよりも月龍姫に向けられていた。


「珀龍はここぞとばかりに楽しんでるな。」

ジ-ンがうんざりと呟くとキリ-も苦笑した。

「後の事も考えてくれると良いんだがな。」

だが、キッドの機嫌は最高に良かった。昨晩珀龍とキッドの宿に同宿する一行が着いたのだが、東ヨーロッパの新興王国、アルバインのアルバート一世その人であったのだ。

当然だがイギリス王室が知って居た訳では無い。珀龍からの申し出により実現したに過ぎなかったが、アルバインの経済状況から見ればホテルなどは厳しいだろうし、仮にも一国の王であれば粗略にも扱えないイギリスには渡りに舟と云った処で話がまとまったのだろう。

挙式が終わったらすぐに帰国すると云っていたキッドだったがさすがにアルバートを残しての帰国は控え、結局は最後の夜会まで残りイギリス王室と珀龍の面目が立ったのは云うまでも無かった。ましてや華やかな月龍とあどけない少年王のワルツは微笑ましく、イギリスメディアは自分たちの手柄の様に描きたてた。

「パリの社交界とロンドン社交界は昔からライバルだった。初お目見えはパリだが訳在りで速攻の引き上げとなったから、今回はイギリスの面目躍如と云った処だろう。」

帰りの機内で珀龍が如何にも満足げに呟いたがキッドにすればどうでも良い話だった。

「珀龍、多分これが最後だと思うぞ。これからはそんな暇は無さそうだ。」

「解かって居る、此方も忙しくなりそうだ。」

だからだろうか、いつもなら真っ直ぐに日本に帰るキッドが珍しく九龍島に二泊して蒼龍とも遊んで帰ったのは。



迎えに出たのはキリ-だった。

「何か有りましたか?」

会うなり聞かれてキリ-は苦笑する。相変わらず感が良い。

「ジンジャーが辞めた、合わなかったようだ。」

「そうですか。ラウルとアリスは?」

「あの二人は残った。」

「なら良いです。」


キリ-はラウルから聞いた話はしなかった。

『此処に来るまで人には負けた事の無い彼女が、唯一敵わない相手がキッドでした。しかも貴方とキッドの間にも割り込めない。彼女は貴方が好きだったからそれだけで悔しかったんでしょう。』

そんな素振りは見せなかったし、見せられなくて本当に良かったと思うキリ-だったが、

「ジンジャーは私を嫌ってました、G倶楽部ではなく多分それが原因だと思います。」

「何か言われたのか?」

僅かな笑みは苦く見える、キッドのこんな笑顔は見たくないキリ-に返された返事は、

「珀龍がお土産を呉れましたよ、みんなの分も有ります。」

「今回はやけにゆっくりしていると思ったら、そんなものまで貰って来たのか。後で礼を言わないとならんな。」


G倶楽部に帰り着くと相変わらず皆が迎えてくれた。

珀龍からの土産を配り、アルバートとの再会を報告してキッドは早々に自室に引き取った。

「元気が無いな、ジンジャーの件が堪えたかな。」

ジ-ンの言葉は的を得ていたがキリ-には為す術もない。

「明日になれば大丈夫だ。」

後で様子を見ておこうと考えていたキリ-の耳にとんでもない歓声が聞えた。

「何だ。」

見るとアリスが何とも云えない表情で立っている。手にしているのは珀龍からの土産の包み。

エラ-がメッセージカードを読み上げた。

「『麗しのアリス、次は君の唇を奪いに参上する。珀龍。』

キッドはアリスが男だとは云わなかったようだな。」

エラ-の言葉にハクが笑いながら続けた。

「塗って見ろよ、綺麗な色の口紅だ。」

「珀龍が飛んで来るぞ。」

モクでさえ狼狽えた様なアリスを構いだしたが、コオが引きつったような声を上げる。

手にはシルクの女性用の下着のセットがぶら下がっていた。

「『私はこういう趣味だ、忘れないで戴こう。』だと?

キッドの奴、珀龍に話したな。ふざけたガキだ。」

イヴが崩れ落ちる様に笑い出し、カイルは笑い過ぎて涙目になっていた。

那智にはロクシタンのハンドクリーム、嬉しそうに塗っている。

「凄いな、覚えててくれたんだ。スナイパーは指を大事にしろってモクが云ってたのを。」

「良かったな、真面な奴には真面なものが送られるんだ。日ごろの行いと云う奴だな。」

キリ-の言葉に嬉しそうな那智が尋ねる。

「キリ-は何を貰いました?」

手の中には四角い包み、箱を開くと妙に立派なまるで王冠でも入って居そうなビロードの容器が現れた。

「やけに御大層だ・・・っ!!!」


それは完全なビックリ箱だった。

間抜けな顔が飛び出してキリ-の前でビヨンビヨン揺れている。

舞い落ちたカードをジ-ンが拾って読み上げた。

「『ざまあみろ、キッドの前で間抜けな顔を曝すが良い。蒼龍。』

なるほど、真面じゃ無い奴には真面じゃないものか。」


ミシッとキリ-の眉間に線が入った。

「・・・助けてやった恩も忘れて・・次はけしかけてやる。」




まだ寝るには早い時間だった。

ノックをすればやはり返事が有り僅かにドアが開いた。

隙間からハンカチを出しながら入ると照明の消された暗い中、キッドは思った通り泣いていた。

「お前のせいじゃない。判るだろう。」

「でもせっかくG倶楽部に入ったのに、初陣も無いまま辞めるなんて・・・

もう少し配慮すれば良かったんです。」

此奴の配慮は絶対に方向が違うからな、と思いながらキリ-は静かな声で宥めに入った。


「価値観と云うものは個々に有るだろう、自分の価値観を尊重して欲しければ、他人のそれも受け入れなくてはならん。ジンジャーは其れが出来なかった。自分の意見、考え、思考や好みまで一番正しいと思っていたんだ。

配慮と云うのはお互いにするものでどちらかが押しつけるものでは無い。ルウは其れも判ったうえで入れたと云っていた。お前やイヴから学べれば良い兵隊になると思ったそうだ。」

「教える間もなかった。」

「キッド、教わる気が無い者はどれほどの時間を掛けても無駄だぞ。

それはお前より俺達の方が良く知って居る。ジンジャーが初めてでは無い。」

キッドの顔がやっと上げられた。

「どれほど腕が良くても、頭が切れても、G倶楽部と合わない奴はいる。

そういう人間は早く辞めて自分の場所を見つけた方が良いんだ。

空挺の七瀬はジ-ンの誘いを断った。自分には合わないのを知って居たからだ。

G倶楽部だけが軍では無いし、生きる場所でも無い。

俺達には必要な場所でもそうじゃ無い奴も居る。それは解かるな。」


吸い込まれそうな大きな瞳が男を見つめて頷いた。

「G倶楽部の今までを、その歴史を知らない者や知ろうともしない者が何を云っても気にする事は無い、俺達が刻んで来た痛みや涙は俺達が知って居れば良い。

お前も俺も、此処で生きて来た。俺達がG倶楽部なんだ。」

手が伸びてキリ-の身体に回される。キッドの額がキリ-の胸元にコツンと当たると低い声が続いた。

「私は貴方の役に立っていますか? 迷惑ばかり掛けて困って居ませんか?」

一瞬のうちに理解した。やはりジンジャーに何か云われたのだと。だが、今のキッドに問いただしても答えはしないだろう事も解かって居る。だから、

「情けない事を云うな、役に立つから大事にしてる訳じゃ無い。こんなに長い時間を一緒に過ごして来てまだ判らないか。」

言葉はぞんざいで口調は怒って居るかのように乱暴だったが、キッドを抱きしめる腕は強く優しかった。

キリ-の優しさが包み込む感覚にキッドは緩く溶けて行く自分を感じていた。

「明日の朝ごはんも食べてくれますか?」

静かで心地良い低い声が笑う。

「その権利だけは誰にも譲る気は無いな。」



翌朝キッドの眼は僅かに腫れていたが、いつも通りに素晴らしく美味い朝食を用意してくれていた。

カジキマグロの生姜焼き、見事に切り揃えた野菜炒め、茶わん蒸しに海苔の味噌汁。

蒼龍からの土産でキッドを笑わせてから尋ねた。

「お前には何を呉れたんだ?」

「怒りますよ。」

「今更何をだ・・これお代わり有るか?」

味噌汁をよそいながらキッドが笑った。

「私は珀龍から真珠のピアス、蒼龍からはバングルです。」

ププッとキリ-は吹き出した。

「扱いの差が歴然だな、此処までされるといっそ気持ち良いぐらいだ。」

その後アリスやコオの話になりキリ-は無邪気に笑うキッドを見て僅かに安心したが、彼は有る事を画策していた。



「今日から複数戦に入る、これに関しての注意点は全体の脚を見る事と、呼吸法だ。お前が一番弱い部分だろうが、この三人を躱して倒さなくては本格的な戦闘訓練は出来ない。まずは腹を括って躱しきれ。」

コオハクシュリの三人は薄く笑いながらアリスに向き合った。如何に強くてもまだ三月足らずのガキに勝たせる訳にはいかない。G倶楽部の先達としての意地を掛けても負ける事は許されなかった。

そして案の定、アリスは僅か二分で床に転がる。

「私は何と云った、見ろと云ったが寝ろとは言わないぞ。」

立ち上がったアリスの表情が変わる。


「脚だ、躱せ!遅い何を見ている。」

「動け、止まるな。」

「良く見ろ、意識を拡散して集中しろ!」

「やたらと手を振り廻すな、無駄に動くな。」

驚くべき事に対複数戦は二時間にも及んだ。

アリスは当然伸びたが、コオハクシュリの三人も終了と同時に膝から崩れ落ちた。

文句を言いたくても声さえ出ない。

「ほほう、キッドにこき使われているな。たまにはガキの気分も味わえて楽しいだろう。」

如何にも楽しげなジ-ンに返されたのは三人の恨みがましい視線だった。

「明日も宜しくお願いしますね。」

軽やかなキッドの言葉にだけはかろうじて頷いたが、下手なプライドが邪魔をして断われない自分が何とも腹立たしい三人であった。


丸一週間と云うものアリスは三人を相手に躱しを続け、その中で動きが変化していく。見る間に無駄が削ぎ落され、最低、最小の洗練された形を取りつつあった。

「良し、攻撃を許す。」

アリスの顔つきが変化した。今まで一度として攻撃の許可は下りなかったが、今初めて許されたのだ。

「躱しを忘れるなよ、行け。」

それは圧倒的なパワー、三人の攻撃を僅かな動きで躱したままの一連の流れで手足が一閃すると三人が弾き飛ばされた。信じられないように眼を見張ったのはジ-ンでもキリ-でも無く、アリス本人だった。

「良いだろう。対複数戦はいったん終了する。これからは私が戦闘訓練をつける、違いをコオに良く聞いて置け。」

アリスがコオ達を助け起こすのを見ているとキリ-と眼が合った。

「大したパワーだ。動きも良くなったな。」

「まだまだです。力技に頼らずに戦えるようにならないと意味が無い。ラウルはどうですか。」

「まったく正反対だな、身が軽いのは良いが、攻撃に重さが無い。カイルでも弾く程度だ。」

キッドがニヤリと笑った。

「両手を縛って躱し技を仕込むと良いですよ。上体がしなやかになるまで続けると踏込が深くなる。」

キリ-の大きな掌がキッドの肩を叩いて笑う。

「助言痛み入る、早速やって見よう。」



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