02
僕は失敗した。
結局、ひとが言ってくれるほど僕は大人では無かった。
母の表面だけを見てなんの変わりもないと思い込んで、自分の事だけにかまけていた。
待つだけの母の生活は、対象が父から僕に変わっただけで、折れそうになる心を護るために事実を否定するしか無かったのだ。
父の話題が過去形ではなく、今も存在するひとに対しての口調に変わっていた事さえ医師に言われるまで気が付かなかった。
陸軍の病院は親切だった。
伯父と伯母に来てもらう前に入院手続きをしてくれ、ご丁寧にも知らない間に雪代中尉にも連絡してくれた。
消毒液の匂いのする広く清潔な廊下で、座る僕の前に大きな影が落ち見上げる前に涙がこぼれた。
だから、嫌だったのに。
この人と遭う時はいつも情けない顔をしている。
10分か15分か僕は顔を上げられなかったが、雪代中尉は何も云わずにまるで僕を守る様に立っていた。
『医者の話は聞いた、お母さんは病院に預けるのが一番良いだろう。
お前はどうする? 受験も控えているし病院もあるから、地方には行きたくはないだろう。』
伯父も伯母も関東圏だけど東京ではないし、学校にも通えるほど近くはなかった。
『家を離れる気は有りません、一人で大丈夫です。』
『では、俺たちもなるべくフォローしよう。』
その言葉を当てにしようとは思わなかった。
病院での検査の結果、母の病名は統合性精神疾患症。重度だったため面会も制限され、週に一度しか会うことが許されない。医者は言わなかったが僕の不用意な言葉が、ギリギリで均衡を保っていた母の心を奈落に突き落としたのだ。
軍人遺族の医療費用は国が面倒を見てくれる。
父の替わりに。
母を壊した息子の替わりに。
僕は雪代中尉に見栄を切ったのに全然大丈夫じゃなかった。
母の入院後一週間で家の中は物が散らかり、洗濯物がたまり、反対に冷蔵庫は空っぽになった。
夜は眠れなくなり、父の形見のように残っていたアルコールに手が伸びる。受験も何もない、今現在の勉強さえ頭に入ってこない日々に登校する事も出来なかった。
『汚ねえな、ここはゴミ箱か?』
遠慮のない大声が響いたのはうとうとしていた時だった。
『ジーン、見ろよ。ガキが生意気に酒喰らって寝てやがるぜ。』
『誰・・』
いきなりひっぱたかれた。
座っていた椅子ごと飛ばされ壁に叩き付けられる。
口の中に鉄の味が広がった。
雪代中尉が僕の前に立ちはだかっていた。
『なんだ、この様は。』
低く唸るような声よりも、冷ややかな視線のほうが恐ろしかった。
音ひとつ立てずに近づいてくる。
『担任の山口先生に話は聞いた、この10日登校してないそうだな。』
壁にへばり付いた僕のむなぐらを掴んで引きずり上げると、そのまま壁に押し付ける。
『病院にも行ってない、母親を見捨てたのか。
父親にそうしたように切り捨てたのか。』
男の眼の恐ろしさに引けていた僕の中で、何かが弾けた。
『父さんが捨てたんだ! 僕と母さんを先に捨てたんだ!
あんたたちと楽しくやってた、家ではあんな顔しなかった。僕たちよりあんた達の方が父さんは大事だった。
何年も何年も・・ずっと待って・・もう待ち疲れたよ・・』
男の手が離れ、僕はずるずると座り込んだ。
『知らないくせに・・8歳になるまでに父さんに合った回数と、今まで貴方に合った回数はたいして変わらない・・・そんな人 他人と一緒じゃないか。
いっそ他人の貴方の方が僕達の面倒を見てくれた。
父さんが僕達に何をしてくれた?・・・母さんの病気だって父さんを待って・・未だに待っている、今まで待っていたからきっともう一生待ち続けるんだ・・・僕は父さんの子だから、母さんを突き落とした。母さんに止めを刺したんだ。』
自分でも支離滅裂だし八つ当たりだと判っていた。
判っていても歯止めが利かなかった。
『父さんのやりかけた事を僕が仕上げたんだ。
僕が母さんを壊したんだ!僕が母さんを壊したんだよ!』
『そうだな、お前が壊したんだ。』
ひどく低い声が僕の頭上から降りかかった。
不思議なことにそれは興奮しきった僕を一気に現実に引き戻した。
『その事に俺も一役買った。 後悔しているよ、あの時お前ひとりに任せないで俺も行っていれば良かったと。
18のガキが、世間知らずのガキが追い討ちをかける事なんか判っていた筈なのに・・・』
『ジーン、それは・・』
なにか言いかけたのはあのヒグマのような男、それを抑えるように雪代中尉は続けた。
『病院から連絡を受けて、心底悔やんだぜ。神藤中佐を死なせた時より後悔した。俺はまたしても間に合わなかった・・だから・・直人、お前だけは失う訳には行かないんだ。』
僕はただぼんやりと雪代中尉を見上げていた。
なんで父さんが出てくるのか判らなかった。
『覚悟しろ、お前がたとえ泣こうが喚こうが、俺はお前だけは真っ当にしてみせる。 二十歳になるまでは俺がお前の保護者だ。』
雪代中尉の宣言は・・・本当だった。
雪代中尉とウルフ(絶対ヒグマだと思うけど。)は、その日一日をかけて家を片付け、今後の方針を決めた。
夏休みまでは衣食住のヘルパーを付け、休みに入ったら立川の連隊でひと月の合宿、その後は多少の猶予があった。
彼らの言い分は、
『なに、ひと月もあれば人格まで変わるさ。』
で、あった。
確かにそれは正解だったと思う。
僕のような一般市民が軍隊の生活を体験できる事は多くはない。今まで母とふたりで穏やかに暮らして来た生活はなんだったのだろう。父が軍人でもその生活が自分に降りかかるとは全く考えてもいなかった。
夏が過ぎ、秋が往く頃、僕は最終的に進路を決めなくてはならなかった。
『東大が目標ならそれは構わん、例え何を目指してもそれをお前が本当に望むのなら好きにすれば良い。』
雪代中尉の声は深く静かだった。
『神藤中佐はお前が何を目指しても決して口を挟まなかっただろう、これは俺の独断だが・・おそらくは軍人だけにはなって欲しく無かった筈だ。
あの人はお前達を心から大切にしていた、髪の毛一筋も危険が及ばぬように、そんな言葉も耳に入れないようにしていた。 だが、口を開けば俺達の話題は危ない方向へと向かってしまう。そう云う所は不器用な人だったから、口を閉ざすしか無かったのだろう・・・お前の元気な顔と奥さんの手料理だけが楽しみだと、良く言っておられた。』
そんな事があるのだろうか。
本当にそうだったのだろうか。
信じられない思いとは別に、この4ヶ月雪代中尉を見ていて嘘は言わない人だと僕は感じていた。
父への想いをこの人に重ねた訳では無い。
でも・・・父がもっと話してくれたなら・・
いや、父を拒んだのは僕だった、子供の僕が大人の父を切り捨てたんだ。
父はきっと僕が大人になるのを待っていたんだろう。
今になって父を知りたいと思う。
僕はいつも間に合わないけど、
『雪代中尉は何故軍人の道を選んだの?』
いま眼の前にいる人には心の底から聞きたかった。
彼は何の躊躇いも無く応えてくれた。
『大事な人がいると思いたいからだ。』
オモイタイカラ・・・
いまさらこの人の前で格好をつけても仕方がないが、僕は泣けてしまった。こんな悲しい言葉は聴きたくなかった。
この人の今までの人生はどんな色だったのか、僕なんかよりももっと厳しく寂しいものだったのではないのか。
人とは違う色の瞳には何が映って来たのだろう。
『なんだ、直人。 お前は泣き虫だな。』
涙は止まらなかった。
泣いて泣いて・・目玉が溶けるほど泣いた。
辛くて、悲しくて、怖くて、悔しくて、泣いたのとは違う涙は子供の僕を洗い流していった。
今からでも間に合うだろうか、子供だった僕が失くしてしまった大事なものは、もうこの手には取り戻せはしないけど・・これからの僕の人生で関わってくる筈の大事な人たちを、守ることが出来るだろうか。
その為に道程を選ぶなら僕にはひとつしか見えなかった。
担任の先生は惜しんでくれたし、母の担当医師の言葉にはしないままの否定を僕は理解していた。
雪代中尉は・・・緑灰色の綺麗な眼で長い間僕をみつめて何も言わなかった。
冬の頼りない陽に照らされた病室で僕がそれを告げると母はその瞬間、不思議なほど正気に戻った。
『お父さんの名を汚さぬように、しっかり精進なさい。』
幸せな夢のなかに漂っていたとは思えないほど毅然とした言葉は僕を勇気付けてくれた。
『また心配を掛けるね、ごめんね。』
母は以前の様にすこし首を傾げて微笑んだ。
『大丈夫、慣れてるから。』
嬉しかったのはそれから母の具合が良くなって来た事。
少しずつでも現実を受け入れ始めたのは、僕という新たな心配事が出来たからだろうか。
時間が掛かっても良い、失くしかけたひとつが戻るなら僕はいつまでだって待てるだろう。
麻布の陸士大学にはもうひとつ学校が併設されていた。
仕官になる為の陸士大学とは目的が異なり、兵隊を育てるための短期大学。
一般的には落ちこぼれ専門との噂もあったが、僕は仕官様になりたい訳ではなかったから2年で十分だ。試験は2月、合格発表は3月。
面接試験では担当教官が陸士大学と間違えていないかと聞かれた、3回も。
合格の報告に連隊を訪れたとき、雪代中尉は大尉に昇格していた。ウルフはなんだか嬉しそうだった。
『早く此処に来いよ、また俺が鍛えてやるからな。』
夏のひと月を此処で過ごしたのは正解だった。
もっともあれでレールが轢かれたのは否めないが、僕の中に後悔の欠片もない事が少し誇らしかった。
国立陸軍短期大学は確かに落ちこぼれも多かったが、決してそればかりでは無く、思わず眼を惹かれる人材も多かった。驚いたのは女性が多いこと、しかもその大半が身体能力に優れていた事だった。
実力主義の軍隊なら自分の能力を活かせると信じて、他人の眼も気にせず目的に向かう姿は気持ちの良いものだった。
卒業後はきっと同じ道を行く仲間になるのだろう。
陸短に同期で入ったのは250名、春の段階で60名が落ちた。入るのは大概が入れる陸短だが卒業までの道のりは厳しいものだった。軍人は国家公務員、軍隊の端に留まれば退職金も年金も馬鹿にならない金額が手に入る。
それを目当ての輩を篩い落とすのは簡単だった。
走る、走る、また走る。
現役を退いた下士官は陸短の教官となり、鬼軍曹そのままの仕込みを貫いた。結果、秋までにまた50名近くが脱落して教室の眺めが広がった。
少し落ち着いてきた冬の初め、母が一時帰宅を許された。
歓迎の意味で僕の手料理を振舞うと、何ともいえない顔で僕を見て恐る恐る口に運ぶ。
『ダイエットには良いわね。』
そう言って笑い転げる母はその後素晴らしく美味しい料理を作ってくれた。
このままなら春には退院出来る。
雪代中尉・・雪代大尉に電話をしたが出たのはエラーと呼ばれるニュウハーフのような人だった。
『あぁ君か、大尉は出張だよ。伝言は伝えよう。』
軍人の出張は言葉通りには受け取れない。
嫌な予感に黙った僕の耳にエラーの溜息が聞こえた。
『だから身内の電話は嫌なんだ、確かに任務で出ているけど心配は要らないよ、去年の春ほど危険じゃない。
今回は怪我もしないだろ。』
グラっと床が揺れたように感じた。
『エラー、大尉は去年怪我をしたの?』
今度はエラーが黙り込んだ。
『母が病気の時、僕がグダグダの時、雪代大尉は怪我をしていたんだね。』
一呼吸おいてエラーは応えた。
『・・そうだ、銃創を受けて入院していた。一時は危険な状態だったから、人が付いていたんだが・・・』
『母からの電話を受けたのは?』
『私だ、レコーダーを持って報告に行ったら、飛び出してしまって・・ウルフに張り倒された。』
『・・・有難うエラー、大尉にも誰にも言わないから。』
『ああ、そうしてくれ。どうもお前には甘くなるな。俺は神藤中佐とは面識はないのだが。』
エラー達は父の軍葬の時は初年兵訓練の真っ盛りだったそうで、一日の服喪を良く覚えていた。
色々話して電話を切ると僕はへたり込んでしまった。
あの日、家の前まで送りながらも僕を独りで帰したのは、傷を負っていたせいだったのだ。
病院に駆けつけて来たんじゃなく、そこに雪代大尉が入っていたんだ。身動きが出来ないから僕の家にも来れなかった。二週間が経ってウルフ付きでやっと来てくれたんだ。
『ありがとう、雪代大尉、父さん・・』
僕にはこんなに大事にされていたんだ。
ありがとう・・
雪代大尉は無事に帰って来てくれた。
短い冬休みは山のような課題で顔を見に行く暇もなかったけど、大尉の方が来てくれた。
『エラーが余計な事を言ったらしいな。』
開口一番の台詞に僕は笑ってしまった。
『なんで判ったんです? エラーの自白ですか?』
大尉は片眉をあげてニヤリと笑った。
『俺を欺こうなんざ十年早い、お前もG倶楽部に来るなら覚悟しておけ。』
『承知。』
春、母が帰宅して僕は家事の一切から開放された。
2年生になると身体よりも頭を使うことが多くなった。
6月は抜き打ち試験が立て続きに行われ、脱落者が続出した。
入学時の半数以上が消え去った。
8月は夏休み返上で合宿、立川連隊の演習場で走り回る僕達をウルフが大笑いしながら見ていて楽しかった。
10月、医者に太鼓判を押されたと母が言った。
『どうやら私は誰かの心配をしていないとダメみたいね。
だから直人、貴方は遠慮なく頑張りなさい。』
陸短は通学だけど、入隊すれば父と同じ生活になる。
母にはキツイだろうと思っていたら雪代大尉からひとつの提案があった。
立川連隊の仕官食堂で調理人の空きが出たのだそうだ。
『軍属となれば官舎も用意されている、マンションタイプだが2LDK、管理費程度の負担でなにより安全だ。
中佐ご自慢の腕を振るって頂けないだろうか。』
母は箱入り奥様で結婚以前も社会経験がほとんど無い。
まして自宅を空けるのは・・・
『私で良ければ喜んでお受けします。』
悩んだ僕が馬鹿みたいに母は快諾した。
しかも11月の終わりには身の回りの物だけ持ってサクサクと引っ越してしまったのだ。
取り残されて呆然とする僕に雪代大尉はにこやかに告げた。
『母ちゃんの飯が喰いたければ仕官になるんだな。
士官食堂には平のペンペン兵士じゃ入れんぞ。』
卒業試験は2月に行われた。
無事に卒業したのは250人中、97人。
5分の2しか残らなかった。
97人の卒業生の内、立川連隊に願書を出したのは35人だった。後は地元へ帰りその地区の連隊に入るのだろう。僕は家の戸締りをしてダッフルバッグひとつを持って入所式に向かった。
与えられた個室は以前の夏合宿で使った部屋だった。
ロッカーに張られた注意書きに従い部屋を整え、指定された作業着を着用して体育館に行くと、陸短の最初を思い出させる光景が眼に入った。
訓練された人間はすぐ判る。
半数以上は何の準備もないままに此処にきたのだろう。
真っ直ぐ立つことも出来ない人間がこれ程多いとは思わなかった。
担当軍曹の話さえまともに聞いていない。
実際に訓練が、(整列と行進と敬礼は訓練だろうか?)始まると陸短出と伏兵の担当伍長はすぐに眼についた。
それ以外でも体育会系はさすがに飲み込みが速・・・
一瞬、眼を疑った。
今、すぐ横にいるのは・・・キリー?
視線だけで見ると表情ひとつ変えない馴染みの顔が確かにそこにある。
G倶楽部の人間は一般兵ではない。階級も有って無いような物だし、公には口に出すことが許されない特殊な任務をこなしている筈だった。
たとえ伏兵伍長だとしても2年、3年兵士で間に合う筈の伏兵を何故G倶楽部の、それもキリーを潜らせたのだろう。彼はG倶楽部の虎の子と呼ばれる程の戦闘兵士だと聞いている。
エラーほど砕けては居ないし、僕自信も口数が多くはないうえ、いつも任務で出ていて出会う回数は少なかったが、間違いはない。
キリーは其処にいた。
訓練が終わって、部屋に戻ろうとした時肩を叩かれる。
「陸短出だな、俺は河野卓だ。よろしく。」
白々しくも自己紹介をしてきたが、本名は確かに初めて聞くし、黙っているのもおかしいから僕も名乗るしかなかった。憮然とした僕に向けたのは初めて見る笑顔だった。
驚いたのはそれだけでは無かった。始まって僅か五日で頭角を現したのは幼い少女、第18期生の最年少の高村亜湖であった。食堂や廊下で見かけるといかにも頼りなく、いつも困っているようにさえ見えるが、いざ訓練となるとその動きは郡を抜いていた。
非公式の試験は陸短で慣れている僕でも度々引っ掛けられたが、彼女は難なくこなしているようだった。
2週間で注目株となったのを気付きもしない天然さで今日も困ったように立っていた。
(・・・今度はなんだ?)
一昨日は帽子がなくなり、キリーが探して眼につく場所に置いておいた。
昨日は食堂で席がない彼女に僕が譲り、後ろにキリーがいるのを確認して事なきを得た。
このままだと嫌がらせはエスカレートする一方だろう。
と、ひとりの女性兵が話しかけている。
(助かった、さすがにトイレまでは着いていけないしな。)
安心して向きを変えるとキリーが立っていた。
視線で呼ばれる。個室のドアを閉めると彼は低く笑った。
「ご苦労だな、さっきの奴は伏兵だ、今期は女性が多いからひとり潜らせてある。安心して自分に専念しろ。」
「了解、でも貴方がなんで?」
「さぁ、ジーンが決めた事だ。それよりお前、高村亜湖にエースを取られるぞ、ウルフの笑い声が聞こえそうだ。」
思わず溜息が出た。
「何いってるんです、初年兵訓練が終わってから決まるぐらい知ってますよ。それより、随分とサバ読みましたね。確かエラーと大して変わらない歳でしょう。」
「やかましい、こっちにも都合があるんだ。」
だが現実に入隊式で第一順位を取ったのは高村亜湖だった。
正直やられた感はあったが、同じAチームになるとつい気になってしまう。小さい子を苛めてはいけません・・だ。
キリーはやっぱりAチームの班長でお目付け役になった。
仲間内ではひとり、厄介そうな奴がいてキリーがどう対処するのかが楽しみだった。
9人+ひとりはどんなチームになるのだろう。
女性達は3人、美人の歩美は僕と同じ歳、さばさばした真理は23歳、亜湖は18歳。仲は良い、亜湖をフォローしているからすこし安心した。
言動に癖がある木村英嗣は正反対のノーマルな篠崎亮介とよくつるんでいた、良い所を真似てくれれば良い兵隊になると思う。
いかにもひ弱そうな古川雅彦は、IQ180の噂も名高い西田圭佑が面倒を見ていたが、どちらも身体能力には疑問が残る。僕もAチームの仲間として協力しなくてはならないだろう。
太田御幸は・・・きっと生き残るだろう。原始の生き物は理屈抜きに強いものだから・・
なんだか面白かった。
今の僕は良く見える。
何もかもがきちんと片付いて整頓されたように、物事の総てが明確に入り込んでくる。
雪代大尉、僕は何処に行くのだろう。
こんな感覚を共有出来る人間はいるのだろうか・・・