第6話
皆が寝静まった頃、一つの客間に包丁を持った人影がうつる。人影はベットに音を起てないように忍び足で近寄る。
「………」
人影はベットに寝ている人物を見て黙っている。その様子は何かに迷っているような、そんな顔付きだった。
「……ごめんなさい…」
人影はベットに寝ている人物に向けて言った。人影は迷っている顔から決意した顔になる。そして両手で包丁を構え、ベットに寝ている人物に突き刺そうと包丁を振り下ろす。
「え………」
包丁は寝ている人物の心臓目掛けて振り下ろされ、寝ている人物の命を確実に奪う。
はずだった。
しかし心臓目掛けて振り下ろされた包丁は、心臓どころか寝ている人物に届く前に人影の手が止まる。
いや、正確には止められた。
寝ていた筈の人物によってその命を奪う凶器は、2m近くあり鋸のような刃をした剣によって止められた。
「今日初めて会った人を、殺そうとするのはどうかと思うぞ?」
寝ていた筈の人物バンは、右手で包丁を防いでいる剣を持ち、眼を開き包丁を持っている人物をしっかり見ている。
「迷いがあるなら、吹っ切れてからくるべきだったな。アヤ」
包丁を持つ人影、アヤは無表情でバンを見ていた。
「いつ、気付いたんですか……寝ていると思ったのに………」
「部屋に入って来る前から起きてたんだよ」
「??」
「要するに狸寝入りだよ。アヤが入って来てからな」
「……そうですか……」
「そうゆうこと……で、俺を狙った理由、話してもらえるか?」
『ズドォン!!』
爆音と共にバンとアヤがいる部屋の壁が吹き飛ぶ。
穴が開いた壁の方をみると、明らかに体格のいい悪人風な恰好をし、右手そのものがバズーカになっている男が立っていた。
アヤは男をみると明らかに表情を変え怒りの眼差しを向けていた。
「何のつもり!!マムシ!!」
マムシと呼ばれた男はアヤに眼を向けると、喜びに満ちた眼をする。
「アヤァ、久しぶりだなぁ、捜したぜぇ。ったく急に牢からいなくなるからよぉ」
男、マムシの眼はアヤを嬉しそうに見つめていた。見られているアヤの眼は対象的に、敵意を剥き出しにしていた。
「アヤァ、さっさと戻ってこいよぉ。じゃないと大事なお母さん、死んじゃうよぉ」
「っ!!お母さんに何をした!?」
「俺は何もしてないよぉ。ただ、牢のモンスターを少し増やしただけさぁ」
アヤの顔が見る見るうち青くなっていった。
「そ……んな………」
「ヒャハハ、今ごろ何人喰われたかなぁ??ヒャハハハハハ!!」
バンの隣でアヤは地面に座り込む。
「おい、マムシ」
「ヒャハハ、あぁ?」
バンの問い掛けにマムシは明らかに苛立った
「あんた、誰に向かって口聞いてんのぉ??」
「てめぇのいる組織の名前はなんだ」
マムシはバンに対して明らかに怒りの表情を向ける。
「あんたぁ、ちょッと調子乗りすぎだねぇ。やっぱさぁ『レイザー』の組織の一員として…
「マムシ、てめぇの組織名『レイザー』なんだな」
「……人が喋ってるときは最後まで」
「組織名『レイザー』なんだな」
「……もぅ我慢ならねぇ!!組織レイザーの名の元においてぶっ飛ばす!!」
マムシは右手と同一化しているバズーカを構えバンに向かって撃つ。
『ズドォン!』
「ヒャハハハハハ、調子乗りすぎるからこうなるのさぁ!!」
バンがいた場所からは煙が立ち込めていてバンとアヤは全く確認出来ない。
『ガアアァァァ!!』
「っな!!」
バズーカの爆音に負けない位の爆音がなると同時に、バンの居た場所の周りにあった煙が全て吹き飛ぶ。煙が晴れると同時に
「っ!!あんたどうやって助かりやがったぁ!?」
鋸のような刃が回転し、
『ドッドッドッドッ』と音を出す剣を肩に担いでいる、無傷のバンとアヤがいた。
「あ、見てわかんねぇか?剣で防いだに決まってんだろうが!!」
バンの大声と威圧感にマムシは本能で感じた。
やばい。あいつはやばい。『殺される!!』
そう感じたマムシは直ぐさま逃げた。
「『レイザー』の組織の奴らは全員、殺す」
マムシの後ろで聞こえると同時にマムシの意識は途切れた。