第3話 女の子
「俺の名前は黒沢 蛮」
青年バンは目の前に座りこんでいる女性に手を差し出しながら自分の名前を名乗った。
しかし、女性はバンの声で我に帰ったのか『ハッ』とするとバンを睨み付け、手を払いのけて走ってどこかに行ってしまった
「んだよ、愛想ねぇなぁ」
バンはそう言うと誰に言うでもなく独り呟いた
「ここどこだよ……」
バンの声は悲しく森に響いた。
それからバンは感を頼りに森を進んでいった。
そして湖を見つけたバンは近くにあった岩に腰かけ、背中にある剣を目の前に置き、剣を手入れしようとしていた。
バンが持つ剣は片刃で刃がノコギリの様に大きなギザギザの物。
そして、片刃だけを残し他の刃の部分は白と黒の鉄で覆われていた。
そして柄の長さは、60cmくらいで柄と刃の接合部には四角い鉄があり、その中には鎖が埋めこまれ鎖の先端にはチェーンソーに着いているような引っ張る物が着いていた。
バンが剣の手入れを終え湖近くの岩でくつろいでいると、前方の草村からガサガサと人が歩く音が聞こえ、バンは前を見て剣を手にした。
前方の草村から出て来たのはまだ十歳にもならないような女の子だった。
女の子はバンの事に気付かず湖の近くにトテトテと近づき、湖に両手を入れて 手の平を、お椀のようにし
…………バンの方に向かって水をかけた……
湖はある程度は広い為に、真ん前にいるバンにはかからなかったが、女の子は水が上がった方を見てバンと目があった。
目があった女の子はバンの方を見て『ぼぅ』っとしていたが突然『ビクッ』として湖から離れようとした。
が、湖の何かに躓いたのか湖の近くでバランスをとろうと必死になっていたが、結局バランスをとることは出来ずに
『ドボンッ』
と湖に落ちた……
「あ、落ちた……」
バンは女の子が落ちた事に対して大きくリアクションを取らずに『ボー』ッとしていた
「って、落ちたぁ〜!!」
リアクションを取らないのではなく頭が『ボー』っとしていて取れなかったらしい。
バンは装備をはずし湖に潜り女の子を救出するために動いた。
………15分後………
湖の近くには湖に落ちた女の子とバンは水浸しで岩の近くで火にあたっていた。
「大丈夫か?」
「……………」
「痛いとこないか?」
「……………………」
バンは先程から何度か女の子から痛い所はないか?
などと聞いているが返事は帰ってこないで、ただ女の子はバンを『ジー』っと見ている。
そしてただ向かいあって座っているだけという奇妙な物が出来た。
「くしゅんっ」
女の子がくしゃみをしたのでバンが
「寒いか?」
と聞いても返事はない。
バンは自分が先程着ていたコートを持ち女の子に近付く。
女の子はバンが近付くと体を強張らせ小さくなった。しかしバンがコートを女の子の体を包む様にかけてやると、女の子は『キョトン』としてバンを見ていた。
「あったかいか?」
バンは女の子から返事が来ないと思いつつ尋ねる
「……………」
(ダメか、……)
バンが思ったとき、
『キョトン』としていた女の子はバンを見ながら
「あったかい……」
と笑ってバンの体に抱き着いた。
バンは女の子が抱き着いてきたのに驚いたが女の子の頭を撫でてやると女の子は
「エヘヘッ」
照れていたがどこか嬉しそうな顔をして笑っていた。しばらくそうしてると女の子が顔を上げ
「お兄ちゃん、お名前何て言うの?」
「俺か?俺は黒沢 蛮って名前だ」
「クロサワ バャン?」
「ハハハ、ちょっと違うな、バ・ンだ」
「バャン!!」
「んー、バ・ン」
「バ・・・ン?」
「そうそう、俺の名前はバン」
「バン!!」
バンを指差しながら言う女の子
「バン!!お名前バン!!ユイ!!お名前ユイ!!」