第2話 助け
深い森の中、一人の青年は背中に自分の身長より大きな布が巻いてあるものをもち歩いている。
「ここどこだ?」
いや、迷っているらしい。
「ったく、あのくそ爺め。適当な事いいやがって………」
そう言いながらもしっかりと、目的地に向かっている事をこの青年はわかっていない。
そして青年が歩いていると
「いやあぁぁぁ!!」
女性の悲鳴が聞こえた。
青年は既に声のした方へ走りだしており、さっきまで『うんざり』といった表情だったのだが今は『真剣』な顔付きで走っている。
声のした方には女性の声が聞こえてくる
「やめろ!!私に触るな!!」
叫んでいるのは先程、悲鳴を上げた女性。女性の手を掴んでいるのは、いかにも山賊といった感じの服装をしている男だった。
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!!お前は黙って俺様の言うことを聞いてりゃいいんだよ!」
「いやだ!!離せ、離せぇ!!」
女性は言葉と同時に男を押し放す。
押し放された男は、女性を睨み付け腰に挿していた剣を抜き女性に向ける
「最後だぁ!!大人しく俺の言うことを聞くか、このまま俺に斬られるか!!」
女性は大声を出し剣を構える男に後ずさる……が、男を睨み付け
「私はお前の言うことを聞かない!!それに斬られもしない!!」
男は女性が言うと、同時に女性に向かって走りだし剣を振るった
「死ねぇぇぇ!!」
「っ!!」
女性は固く目を閉じて自分に襲い掛かる激痛を覚悟した。
………が、感じたの斬られる激痛ではなく
『ガキンッ!』
と音を上げる剣戟の音だった。
そしてそこには
2m近くある剣を片手で持ち男の剣を防いでいる青年がいた
「なっ……」
男は自分の剣を片手で防いでいる青年を見て驚愕した顔をする。
男の体格は普通よりも大きく、むしろ巨体とも言えるほどの物だった。
しかし今自分の剣を防いでいるのは、確かに普通よりはガッチリしていて力もあるだろう。
だが、自分に比べると明らかに一回りは小さい青年に自分の本気で打ち下ろし、しかも両手で打ち下ろしたものを青年は防いでいる。
それも『片手』でだ。
男の混乱など知ったこっちゃないと言わんばかりに、青年の前で地面に座っている女性に青年は聞いた
「大丈夫か?」しかし、聞かれた女性はキョトンとしていて答えてくれそうにない。
そう考えた青年は、後ろで剣を防がれている男を睨み付け
「……消えろ」
男はたったこの一言で竦み上がり剣を捨て、森の中に逃げて行った。
青年は男が逃げるのを見た後、目の前でいまだにキョトンとしている女性に
「大丈夫か?」
と聞いて手を差し出しながら言った
「俺の名前は黒沢 蛮(クロサワ バン)