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359回目のプロポーズ  作者: 28号
番外編:プロポーズの間で
15/30

現実になったうっかり

「やっぱり買ったな」

「……何のことだ」

「チカちゃんのことあんだけ鼻で笑ってたのに、やっぱり買ったな」

「……だから何のことだ」

「今、お前が机の引き出しにこっそり隠した小箱の中身のことだよ」

 誰にも見られないように注意していたはずが、よりにもよって友人の長谷川はバッチリ見ていたらしい。肝心なところで詰めの甘い自分が、本当に嫌になる。

「これは、友達へのプレゼントだ」

「宝飾店の名前が見えたぞ。それにお前、友達全員男だろう」

 言葉を詰まらせていると、長谷川が楽しそうに俺を見る。

「寂しくなってきたか?」

「そう言うんじゃない」

「じゃあ焦ったんだろ。最近チカちゃん大人気だもんなぁ」

 長谷川の言葉に顔をしかめてしまったのは、先日うっかり目撃したとある現場が頭に浮かんだからだ。

 この時期は玉砕覚悟で告白してくる女子生徒が多く、俺はそれから逃れるために屋上の隅でたばこを吸っていた。

 そこに、あろう事か現れたのはチカと見知らぬ男子生徒である。

 ここは教師以外立ち入り禁止だと告げようと思ったのに、何故だか物陰から出ることが出来なかった。

「千佳先輩が先生を好きなのは知っています。でもどうしても言いたかったんです、好きだって!」

 と、始まった告白劇をそのまま見る羽目になり、俺は何とも嫌な気分になった。

 少し前から、千佳が告白責めにあっているという噂は聞いていた。

 俺が未だに千佳を冷たくあしらっているのを見た一部男子が、これ幸いと突撃を開始したというのである。

「生徒同士、大いに結構じゃないか」

「とか言って指輪を買ったのは誰だよ」

 もちろん俺だが、これは本意ではない。

 あの告白を目撃したあと、何故だかむしゃくしゃしてしまった俺は、うっかり酒に走ってしまったのだ。

 弱い方ではないが、どういう訳だがその日は浴びるように飲んでしまい、あっという間に意識を喪失。

 そして次の瞬間、俺はこの箱を持って家のベッドで寝ていたのである。

 だからつまり、これは魔がさしただけだ。こんな物、あいつだって受け取りたくないに決まっている。

「いっそ今あげて来いよ。保険は大切だぞ」

「だからこれは……」

「358回目も悲恋になったら嫌だろ?」

 こいつまでその話を信じているのかと腹が立ったが、言い訳を重ねるだけ相手に言質を取られるのは明白なので、俺は黙って席を立った。

「チカちゃんの所か?」

「五月蠅い」

 と言いつつ、気がつけばあの小箱をスーツのポケットに入れた自分に、一番腹が立った。

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