童話のような恋の始まり
358回目のプロポーズの続編です
昔々あるところに、それはそれは美しいお姫様がおりました。
そのあまりの美しさに、お姫様に結婚を申し込んだ王子の数は1000を越えるほどでした。
しかしどんなに素晴らしい愛の言葉を聞いても、お姫様は首を縦に振りませんでした。
なぜなら、お姫様には心に決めた相手がいたのです。
相手はお姫様を守る騎士でした。
優しくて強くて、そして他の誰よりも自分を愛してくれる騎士様が、お姫様は大好きでした。
それを知った王様はお姫様の幸せを一番に願っていたので、さっそくお姫様と騎士様を結婚させることにしました。
身分の差はあれど、とてもお似合いの二人を国中が、いえ他の国の民までもが祝福しました。
けれどただ一人、騎士に恋をしていた一人の醜い魔女だけは別でした。
二人の幸せを妬んだ魔女は、結婚式の前日お姫様に呪いをかけてしまったのです。
「美しき姫よ、貴様は我が呪いにより今日この日より愛を得られぬ定めとなった。例え命果てたとしても、新たなる生を得たとしても、貴様は孤独から逃れることが出来ないのだ」
途端にお姫様は死の病にかかり、みるみる衰弱していきました。
死に行くお姫様は愛を得られぬ身となった事を嘆き、騎士様の手をそっと取ります。
「私のことは忘れてください。そしてあなたは幸せになって下さい」
けれど騎士様は首を横に振りました。
「例えこの生で貴方と添い遂げられなくても、私は何度でも貴方を愛します。魔女の呪いが消え、貴方と添い遂げられるその日を迎えるまで」
その約束は二人の愛と絆を強くする魔法に代わり、程なくして騎士様もお姫様の後を追うように亡くなってしまいました。
けれど二人の恋はここで終わりませんでした。
二人は別の世界の、別の時代の別に人間として生まれ変わることができたのです。
全く新しい体でしたが、二人には前世の記憶があったので、目を合わせた瞬間お互いの存在がわかりました。
けれど魔女の呪いはまだ残っていたので、この時も二人の恋は実りませんでした。
その後も二人は何度も生まれ変わり、そして同じ数だけ恋をしました。
けれどもそのたび戦争や、呪いや、身分差や病気などで二人は引き裂かれる運命を繰り返します。それほどまでに魔女の呪いは強かったのです。
でも二人は諦めず、何度も何度も恋をしました。
そんな二人の努力と愛の強さが、神様に届いたのでしょう。
ついに二人は、何の障害もないとても平和な世界の、平和な時代の、平和な国に生まれる事が出来ました。
そして二人は358回も悲恋を繰り返してようやく、本当の恋人になれたのです。
前作未読の方は、そちらから読むことをオススメします。