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【短編版】異世界帰りの魔石業者(ブレンダー)は現代ダンジョンで無双する ~現場で作った魔石は持ち出せないので、追放された美女ガンナーに撃ちまくってもらう事にしました~

作者: エルリア
掲載日:2026/09/29

ローファンタジー×クラフト×ガンアクション。

ぜひお楽しみください。

「ん・・・あれ?」


 ゆっくり眼を開けるとそこはいつもの汚い工房・・・ではなく、薄暗い洞窟のような場所だった。


 空気は黴臭く、風はない。


 慌てて辺りを見回してもあるのは岩ばかり、それでも周囲を確認できるのはヒカリゴケが自生しているからだろう。


 ヒカリゴケが生育出来るのは魔素の濃いダンジョンの中だけ、ということは必然的にダンジョン内だと考える。


「いったいどうなってるんだ?」


 なぜ俺はこんなところにいるんだろうか。


 確か俺は魔石のブレンドに失敗して魔力暴走を引き起こしたはず。


 いつものように仕事をして、でもちょっと焦ってブレンドした魔石を床に落としたことで魔石内の魔力が暴走。


 暴走した魔力は周りの物質を取り込みながら消失するっていうのが俺の知っている話なのだが、どうやらそうではないらしい。


 念のため自分の体を確認するも腕がもげているとか足が無いとかそういう最悪の事態は免れているようだ。


 幸運にも五体満足、それは間違いなかった。


 が、状況はあまり幸運とはいえなさそうな感じ。


「とにかく外に出ないと。ダンジョンの中ってことは魔物がいるはず、こんなところに丸腰でいたら命がいくらあっても足りやしないぞ」


 ダンジョンとは魔物が跋扈する危険な場所、異世界では冒険者が生活の為に潜っていたけれどそれは実力があるから出来る話で、俺みたいな職人が行くような場所じゃない。


 過去にどうしても魔石が必要になって護衛を雇って連れて来てもらったことはあるけれど、生きた心地がしなかった。


 幸い周りにその気配はない、ならばさっさとずらかろう。


 足音を立てないようにゆっくりとダンジョンの中を進んでいく。


 出口は分からないけどなんとなく上に向かっていけば出られる気がする、そんな理由だけで先に進み続けた。


 怖い、死にたくない、そんなことだけを考えながら必死に足を動かし続ける。


 せめてナイフとか何か持っていたらよかったのに、ポケットに入っていたのは納品用に持っていた火属性の魔石が二つだけ。


 まったく、これでどう戦えっていうんだよ。


 もし使えるとしたら自分のユニークスキルだけ、使い方次第では足止めの罠とかを作れなくもないけれどそれをするにも材料が必要になる。


 こんなことなら普段からポケットに色々と突っ込んでおけばよかったと、いつもポケットがパンパンだった知り合いの魔石業者を思い出してしまった。


『ブレンド』


 これが俺に与えられたユニークスキル。


 高校卒業後、ふとした拍子に異世界へ召喚されこのスキルを手にしたものの、このスキルで出来るのは【ゴミ屑】と呼ばれるような素材や魔石をブレンドすることだけ。


 漫画みたいにチートスキルを与えられて世界を救う旅がしたかったとは言わないけれど、せめて『合成』とか『錬金術』とかそう言ったものだったら出来ることも多かったし、色々なギルドからの仕事もあっただろう。


 だが、俺に出来る事と言えば魔石同士をかけ合わせて新しい魔石を作ることぐらい。


 魔石を作ると言っても色々あって、無属性魔石から魔素を抽出・再凝縮することで大きくするしたり、もしくは別の素材を組み合わせて属性魔石を作る事が出来る。


 それを繰り返しながらギルドから依頼された数量を加工して納品する『魔石加工』それが異世界での俺の仕事だった。


 正直この魔石が珍しい物だったら俺もチヤホヤされただろうけど、異世界において魔石なんてのはそこら辺の魔物を倒して簡単に手に入れる事が出来る。


 属性魔石でさえ魔石鉱山に行けばいくらでも手に入る、とはいえそこから運んでくるのにはある程度の時間がかかるので、急ぎの場合は俺みたいな魔石業者に声がかかるというわけだ。


 要は間に合わせの仕事、誰にでもできるわけじゃないけどいなかったからと言って別段困るわけでもない底辺の中の底辺といってもいいだろう。


「おっと!」


 そんなことを考えながら歩いてると、ふと足元にある何かにつまずいてしまった。


 慌ててバランスを取り転倒を回避、まったくなんだよ・・・と手に取ったそれは、まだ暖かい何かの脚だった。


「げ、もしかしてこれは魔物のやつか?」


 サイズ的には女性の太ももぐらい、節のある感じからすると昆虫系の魔物だろう。


 しかもまだ暖かいということは倒されて間もないと考えられる、でも周りに死骸らしいものはないということは戦闘中に切断されたと考えられる。


 切断面は鋭利ではなくむしろ爆ぜたような感じ、心なしか焦げた臭いもする。


 魔法か、はたまた爆薬か。


 なんにせよ魔物がすぐ近くにいる、そう思うだけで身震いするのがわかった。


「あ、しまった」


 どうしたもんかと思っていると無意識にスキルを使用、手に持っていた魔物の脚が無属性のクズ魔石に変化してしまった。


 指の間から零れる魔石を慌てて回収、それをポケットの中に押し込んでいく。


「はぁ、いい加減素材を手にすると分解する癖はやめないとなぁ」


 毎日毎日ブレンドしていると、『素材=分解する物』という方程式が出来上がってしまい、つい無意識で変換してしまったようだ。


 素材ならまだ使い道があるのにクズ石にしたら何の価値もない。


 この屑をブレンドしていっても作れるのはせいぜい小型魔石三つか四つ、これでは今日の昼飯代にもならないだろう。


 それならばさっきの脚をそのまま売れば銅貨数十枚にはなったはず、それだけあればエールを一杯つけてもおつりがくる。


 魔石なんてあったところで何の価値もない、でもまぁ折角だしこれを加工して足止め用の・・・って、その素材がないんだった。


「はぁ・・・こんな所で俺は死ぬのか?」


 今日何度目かの深いため息。


 いや、異世界に飛ばされてからどれだけため息をついて来ただろうか。


 異世界転移、ゲームとか漫画では良いように書かれているけれども、実際経験すればそれはただの地獄。


 いきなり知りもしない所に飛ばされ、明日食べる物にも困りながら必死に生きてきた俺の人生。


 せめてもの救いは言葉がわかったことだけど、もしそれも出来なかったら速攻で野垂れ死んでいたかもしれない。


 気づけばもう27、昔思い描いていた未来とは全く異なるけれど・・・でも死にたくはない。


「ちがう、こんな所で死なない、絶対に俺は生きるんだ」


 自分で自分を励ましながら再び前に向かって歩きはじめる。


 ここまでは一本道、もしこの先に魔物の残骸があれば魔物は奥から俺の方へと移動してきたことになる。


 つまりこの先にはもう何もいない可能性が高い・・・でももしそうじゃ無かったら?


 いや、そんなめんどくさいこと考えるのは辞めだ。


 誰かが魔物と戦ってくれているうちに別の場所に移動してしまわないと、怒り狂った魔物に襲われかねない。


 どこの誰か知らないけれど、俺の代わりに頑張ってくれ。


 その時だ。


「あーーーもう!こっち来ないでってば!」


 正面から女性の声がする。


 それもかなり切羽詰まったような声、これはもしかして・・・やばいやつか?


 そう思ったのもつかの間、正面の通路から現れたのは二つのふくらみを大胆に揺らしながら走る美女と、無数の脚をもつ巨大なムカデだった。


 狂暴なまでの二つのふくらみ、そこに思わず目を奪われかけたが強引に目線を引っ張り戻す。


「ちょっとそこの人!こんなところにいると危ないわよ!」


「危ないっていうレベルじゃないだろ!こっちに来ないでくれ!」


「仕方ないでしょ一方道なんだから!」


 正面から向かってくる美女と魔物、慌てて踵を返し全力で走り始めるもすぐに女性が追い付いて来た。


「そんな丸腰でこんなところに何しに来たのよ」


「そんなのしらねぇよ!気づいたらここにいたんだっての!」


「気づいたらって、そんなバカな事あるわけないでしょ」


「実際あるから困ってんだよ。っていうか冒険者なら早くアイツを何とかしてくれ!」


「冒険者?何ゲームみたいなこと言ってんのよ、私達は潜航者、そんなことも知らないの?」


「何でもいいから早く倒してくれって言ってんだよ!」


 普段からそんなに運動していないこともあり、早くも意気が上がって来た。


 見た感じコイツも丸腰だし戦う様子もない・・・っていうかこいつは何で魔物に追われてるんだ?


「倒したいのは山々なんだけど弾切れしちゃってるのよ。ねぇ、ちょっと魔石とか持ってない?屑でもいいんだけど」


「魔石!?」


「あーごめん何でもない、そんなの持ってるはずないわよね」


 この人は何を言っているんだろうか、魔石なんかを取り出したところで魔法が打てるわけでもなければ爆発するわけでもない。


 いや、一応やり方次第では爆発させることはできるけど生憎と材料を持ち合わせていなかった。


 せめてそれさえあればやり過ごすことだってできたはずなのに・・・いや、そんなタラレバを言ってる場合じゃなかったな。


「屑でよければいくらでもあるぞ」


「え、嘘!」


「嘘も何も持ってるって言ってんだ。これがあればなんとかなるんだろ、っていうか何とかしろ!」


「オッケー任せて!それさえあればあんなムカデなんて速攻で倒してあげる!」


 なんだかよくわからないが魔石さえあれば何とかしてくれるらしい。


 慌ててポケットに手を突っ込んで、さっき変換した屑魔石をいくつか取り出すと彼女の伸ばした手に握らせた。


「頼むぞ!」


「こんなにいっぱい!貴方ってお金持ちなのね!」


「はぁ!?」


「これだけあればなんとかなるわ!さぁ、かかってらっしゃい!」


 魔石を受け取ると彼女はその場で反転、一応そのまま走り続けたがどうしても気になり速度を落として後ろを振り返った。


 目に飛び込んできたのは先程の美女がムカデに向かって銃を構える所。


 どこからか取り出した二丁のハンドガンを乱射して巨大なムカデを圧倒している。


 巨体が上から叩きつけられるのを華麗なステップで回避、すれ違いざまに何発か撃ちこむたびにムカデが劈くような悲鳴を上げる。


 すごい、あんな戦い方見たことがない。


 っていうか、銃!?


 異世界では絶対に見る事がなかった物が俺の目の前にある。


 弓とかクロスボウは日常的に見ていたけれど、どこを探しても銃を見つける事が出来なかった。


 一体何がどうなってるんだ?


「これで、終わりよ!」


 どうやら俺が動揺している間に決着がついたらしく、巨大なムカデがその場に倒れ光の粒になって消えていく。


 ダンジョン内で倒れた魔物は光の粒となって消えていき、代わりにドロップ品を残していく。


 死骸が消えない場合は死んでないので要注意、っていうのは新人冒険者に向けた資料に書かれている定番文句だ。


 やはりここはダンジョンの中で間違いない、でも一体どこのダンジョンなんだろう。


 考えても考えても答えは出ない、だがそんな俺を知るはずもなく先程の美女がこちらに向かって戻ってきた。


「凄い凄い!あんな小さな魔石なのに物凄い威力が出るなんてこんなの初めて!」


「屑魔石なんてあんなもんだろ」


「そんなわけないわ!だって一撃でヤツムカデの装甲を撃ち抜いたのよ!ねぇ、あんな高純度の奴一体どこでこれ買えるの?」


「どこって・・・あんな屑魔石ぐらいどこでも買えるだろ」


「あんなのが店売りしてたら苦労しないわよ。ねぇ、もしあったら残りも欲しいんだけど・・・ダメかな。あ!もちろん地上に戻ったらちゃんとお金は払うからさ、お願い、この通り!」


 美女が両手を合わせて俺に向かって頭を下げる。


 まるで拝むようなその動きは異世界に行く前なら当たり前のように見ていたものだが、向こうに行くとその当たり前は当たり前でなくなってしまった。


 にも拘らず彼女はその仕草を当たり前のようにしてくる。


 もしかしてここは・・・いや、そんなはずはないか。


「残りでよかったら全部持って行ってくれ。その代わり、地上に戻るまで護衛してもらいたい。見ての通り丸腰でね、何とか生きて帰りたいんだ」


「それは構わないけど・・・ねぇ、本当になんでダンジョンにいるの?」


「それは俺が聞きたいよ」


「まぁ訳ありなんだろうけど、魔石を貰った以上しっかりと仕事はしてあげる」


「気になってたんだが、その魔石をどうするつもりだ?さっきは銃みたいので戦っていた気がするんだが」


「それはこれを使ってたからよ」


 そう言いながら彼女が手を前に出すと、まるで召喚したかのように何もない所からあのハンドガンが姿を現した。


 銃身真っ白くて何か模様のようなものが掘られている。


 どこからどう見ても銃、異世界では決してお目にかからなかったやつだ。


「それはスキルか何かなのか?」


「可変式魔装銃(マギアバレット)これが私のユニークスキルなんだ。こうやって銃に魔石を飲ませる事で弾にして撃ちだせるんだけど、知っての通りあの値段でしょ?久々に気持ちよく使えたわ」


 そう言いながら追加で渡した魔石が白い銃に吸い込まれていく。


 てっきりマガジンか何かを入れ替えるのかと思ったらそのまま飲み込ませて撃ち出すらしい。


 この物理法則を無視した感じ、間違いなくスキルだ。


「魔石なんて二束三文だろ?」


「は?何言ってるのよ。そりゃ属性魔石と比べたら二束三文かもしれないけど、これを十発撃つだけで素材代が吹っ飛ぶのよ?それを二束三文だなんて言えるわけないじゃない。でもまぁこの魔石なら五発もあれば倒せちゃうから黒字になるかもね」


「そんなもんか」


「とりあえず貰う物は貰ったし、地上までは絶対に連れ帰ってあげる。私は柚緋(ユイ)、桐生(キリュウ) 柚緋。貴方は?」


「真壁 総一郎だ」


 聞こえてきた日本名に思わず自分も同じように返していた。


「ふふ、それっぽい名前」


「なんだよそれっぽいって」


「何でもない。とりあえず上までよろしくね」


 そう言って差し出された彼女の手を少し戸惑いながらも握り返した。


 異世界では『ソウ』という名前で通していたけれど、もしかしたらもうその名前を使う必要はないかもしれない。


 疑惑がどんどんと確信に変わっていく。


 異世界で何度も願っていた事。


 出来ないとわかっていてもそれでもいつかは・・・と思っていたこと。


 それが現実になるかもしれない、そんな期待がどんどんと大きくなっていく。


 その後も何度か例のムカデに襲われたけど彼女の銃が容易く魔物を蹴散らし、ついにその時はやって来た。


 見覚えのある黒い壁を抜けてダンジョンの外に出る。


 まず最初に目に飛び込んできたのは真っ青な空と刺すような強い日差し。


 息を吸えばむせかえるような湿度と夏の匂いが肺の中に広がっていく。


 そしてその見えるのは見覚えのある文字。


 絶対に返ってこられない、そう思っていた光景が今まさに目の前に広がっていた。


「帰って、来た・・・」


 魔力暴走で飛ばされたダンジョンを抜けるとそこは、日本だった。

続きは10/1 PM18:10の第三話からお楽しみいただけます


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