僕は
僕は豚の貯金箱である
近頃、少年の目が怪しい
昔は良かった
100円玉が、背中の穴から入る度に
心地よい綺麗な音が、僕のお腹の中で響き
少年をにっこりさせた
少年は耳を近づけ、僕の身体を振り、
幾つもの100円玉が、お腹の中で跳ねる音に、
何度も何度も笑顔を浮かべた
それが今はどうだ
100円玉が詰まり、重くなり、良い音もしなくなった僕
次第に少年は見る目を変えた
僕を見ず、僕の向こうに色んな何かを見るようになった
僕の近くに、金槌が置かれるようになった
まさか
いや、そんな
でも、あの目は
そして遂に
僕の背中の穴が詰まり、100円玉が入らなくなった
少年は喜びの声を上げて、母親の元へ向かった
帰って来た少年の目は
物欲で鈍く光っていた
僕は運命を悟った
少年は軍手をし、金槌を持ち
僕は新聞紙の上
死者の顔に布をかけるように
僕の破片が少年を傷つけないように
身体にも新聞紙をかけられ
そして
衝撃が走った
僕のお腹の中に詰まっていた100円玉達は
自由の光に輝き、弾けた
僕は虫の息だった
しかし、憐れな100円玉達は、今度は財布の闇に飲まれていった
少年は僕を見ず、楽しそうに未来のことを話している
それは、あの日見たのと同じ、きらきらした目だった
ああ
別の何かを見つけたんだ
あの時と同じくらい
少年を喜ばせてくれる何かを
じゃあ
しょうがないか
次の子に
バトンタッチだ
生まれ変わったら
本当の豚になっていた
生まれたての子豚の僕は
少年がきらきらした目で僕を見ているのに驚いた
「この子がいい」
たくさんの100円玉は、
僕の清潔で小さな小屋に変わっていた
僕を抱きしめて、少年は
何度も何度も笑顔を見せた
僕は幸せだ
一つだけ気を付けていることがある
少年が
料理番組を見ている時には
決して近づかない
これだけだ




