少年、ギルドに到着する③
「いよいよ明日ですな」
翌日に入学試験を控えたブレディス学園の一室で、教師の一人が発した言葉に、ヨミを筆頭とした教師全員が頷いた。
「今年の入学希望者は427名、ここ数年では一番です」
この学校は基本的には初等の学校を卒業した者が入学する、騎士学校や魔法学校と同じような、いわゆる高等教育の機関である。本来であれば他と同様、誰でも受験を受け入れていたのだが、学校があまりに権威を持ちすぎて入学希望者が殺到することになった。そのため現在では初等学校卒業者は成績優秀者に限り、それ以外の受験生は一定以上の受験資格、事実上の予備試験を課している。その結果、普段の受験生はせいぜい200人程度だった。
「さすが“闇の子”の世代と言ったところか」
「その言葉は慎むがよい」
ヨミの言葉に、発言した教師が頭を下げた。闇の子とは今年十五歳になる世代、すなわち666日の冬が発生した年に産まれた子たちを差す。理由は不明だが、この世代は生まれつき大量のマナを持っていたり、怪力を持っていたりと戦闘力が極めて高い子たちが多い。しかし世間では闇の子と言う言葉を尊敬にも恐れにも、そして侮蔑にも使用する。ヨミが注意したのも無理はない。
「それより学長、例の推薦受験のこのことですが」
また別の教師が、少し咎めるような口調で話し始めた。
「私は未だに反対です。他の生徒が十五歳以上でしか受験を認めていないのに対し、たった十二歳で受験させるのは不公平です」
やれやれまたか、と言った顔をしてヨミは教師の話を聞き流している。
「この例外を許すと、王族や貴族から自身の子も推薦で入学させろと要求されますぞ」
「ふむ、一理ありますね」
「それに万が一この子が合格した場合、ほかの生徒と比べて劣等感にさいなまれる可能性もあるかと。この年頃だと、たった一歳違うだけでも実力差は大きいものです。また、友人もできにくいのではないですか」
他の教師たちも、ほとんどが反対のようだ。しかしヨミは、
「まあ、わしも基本的にはお主たちと同じ考えじゃ。しかし、ラルカに関してはその心配はあるまい。何しろ、わしの秘蔵っ子じゃからの」
かんらかんらと高笑いするヨミに、教師たちは疑念の表情をした。
「まさかとは思いますが、学長の隠し子ではありますまいな?」
その言葉にヨミの眉がピクリと動いた。笑いを止め、ゆっくりと右手の人差し指を立てる。その瞬間、その言葉を発した教師の周りに氷の柱が突き刺さっていた。
「次はないぞ」
その教師は頭が取れるかと思う速度で何度もうなずいた。他の教師たちにも緊張が走った。ヨミがその気になれば、この場にいる全員皆殺しにすることなど造作もないことを知っている。
「まあ、わしは推薦するだけじゃ。試験については任せる。当然じゃが、ひいきなぞしなくてもよい。ま、合格間違いなしじゃがの」
教師たちは顔を見合わせる。
「明日、お主たちのおどろいた顔を見るのが楽しみじゃわい」
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