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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、ギルドに到着する②

「な、な、な、なんですかこれは!!」

「魔物です」

「そんなことわかってます!!どうしたんですかこれは!!」

「刀で切りました」

「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!!」

 受付嬢が慌てて奥に引っ込んだ。周囲の義勇士たちも遠巻きに見ている。

(おい、あれ一体なんだ?)

(し、知らねえよ。でもあの大きさ、ただの魔物じゃねえぞ)

(あんなちっちゃい、しかもかわいい女の子が、仕留めたってのか?)

(いやあいつ、男らしいぞ)

(マジか?そ、それはそれでありだな)

 一部おかしい感想もあったが、皆初めて見る巨大な魔物に驚いているのは変わりない。喧騒の中、奥から受付嬢に連れられて、頭をポリポリとかきながら貧相な見た目の男が出てきた。

「なんやさわがしいなあ、見たことない魔物ってどれや?」

「こ、これですオーザカさん、見てください」

 オーザカと呼ばれた男は、ラルカの出した魔物の頭部を細い目をさらに細めてみた。

「こりゃ驚いた。これはグランドバブーンやな」

「グ、グランドバブーンですって!?」

 受付嬢が驚きの声を上げる。

(グランドバブーンってなんだ?知ってるか?)

(いや、初耳だ)

 ざわめきは収まらない。それを見たオーザカは、

「ちょっとお二人、ここじゃ騒がしいから、中で話聞かせてもらえへん?あ、因みにワイは、オーザカって言います。商業ギルド所属でここの責任者みたいなもんですわ」

 かなり胡散臭い見た目と話し方だが、ギルドのお偉いさんらしい。ラルカもライラもおとなしく従うことにした。



 奥に通されたラルカは、オーザカに魔物の胴体部分と腕も出して見せた。オーザカは手慣れた様子でそれを解体し、内部からコアをとりだし、魔石も発見した。その様子を見てライラは舌を巻いた。胡散臭いしゃべり方と見た目に反してなかなかの手さばきだった。

「たまげたなあ、グランドバブーンのここまで完璧な状態の素材を見たのは初めてや」

 オーザカはうんうんと頷いている。

「おい、グランドバブーンってなんなんだ」

 ライラが尋ねると、オーザカはやや芝居がかった口調と手ぶりで答えた。

「よう聞いてくれた。こいつは地属性の猿型の魔物で、全身の皮膚が岩のように固くなっておってな、武器も通用せんし、魔法も水以外は効き難くうて敵わんのや。もちろんこの巨体や、パワーも半端やないしな」

「地属性か」

 ライラは自身の“切り札”が通用しなかったことに納得した。

「しかしこの傷口、皮膚の柔らかいところからきれいに切られとる。こいつの皮膚は頑丈さかい、防具や防壁に使われるし、頭部や手首は貴族はん達がインテリアに欲しゅうてたまらんのや。それがこんなきれいな状態で手に入るなんて奇跡やで。肉は食べられへんから使わんけど。もちろん、コアも魔石もかなり高額で買わせていただくで」

 オーザカは懐から何か珍しい道具を取り出した。ラルカの父、イズミの故郷でもよく使われる“そろばん”と言うものらしい。それを指でパチパチと鳴らす。どうやら計算に使うもののようだ。

「そうやな、加工費はこちらで持つからそれを引かせてもろて、だけど状態がいいからそこは上乗せさせてもらいますんで、320ユリウスでいかがでしょ」

「さ、320ユリウス!?」

「?多いの?」

「多いに決まっているだろう!!」

 ラルカはピンときていないが、ライラはその金額に驚きの声を上げた。一般的な義勇士の稼ぐ金額が、1か月で2~3ユリウスぐらいだ。クロウモンキーの討伐依頼なんて三匹で1アウグスにしかならない。ライラも普段はそのくらいの依頼で日銭を稼いでおり、先ほどのレッドライノのコアように稼ぎがいい素材なんてなかなかとれるものではない。

「へえ、こいつ、そんなに高いんだ」

「おまえ、グランドバブーンって知ってたのか」

「ううん、そういえば昔倒した魔物の中にいたなあって、さっき思い出したんだ」

(倒した魔物の中?)

 ライラがその言い方に違和感を覚えた。まさかラルカにとってグランドバブーンが、冥府で魔物の大軍と対峙した時に、その中に混じっていた一体にすぎない、なんて想像もできないだろう。

「ほんで、いかがです?」

 オーザカが媚びたような斜め下からの目線で促す。

「うん、それでいいです。よくわかんないし」

「いやーははは、だましておらへんから安心してな坊ちゃん。じゃ、受付に戻ってくれますか。そこで銭わたしますんで」

 ラルカとライラが受付に戻り、少ししてオーザカがやってくると、金貨320枚をラルカに渡した。周囲でおお、と声がする。ライラが声を上げた義勇士たちをにらみつけた。ラルカは金貨を童子の宝物庫(トイ・ボックス)に放り入れ、ライラに出ようと目で合図をするが、ライラはそれを手で制し、オーザカに声をかけた。

「おい、ところで、グランドバブーンの災禍規模はどれぐらいなんだ」

「災禍規模?」

 首を傾げたラルカが目をライラへ向けた。

「魔物にはその強さ、狂暴さ、そして人に与える被害の大きさなどから、災禍規模っていうものがあるんだ。例えばクロウモンキーは人食み、レッドライノは猛者切りだ」

 周囲の人間も気になっていたのだろう。そうだ、教えろ、など声がする。

「そーでんな、確かグランドバブーンは、街薙ぎだったと思います」

「まっ」

 ライラが絶句した。街薙ぎと言えば、熟練した四~五隊のパーティが協力して倒すほどの魔物だ。前述のレッドライノの二段階上にあたる。到底一人で倒せる魔物じゃない。しかしライラはこの魔物の強さが決して街薙ぎに不相応な実力ではないことを知っている。

(おい、聞いたか、街薙ぎだってよ)

(ありえねえだろ。あんなガキが仕留められるか?)

(多分死体をどっかで見つけただけだろ。畜生、運がいい野郎だ)

(でもあいつ、空間魔法使ってたよな?)

(多分金持ちのガキで、高価な魔道具使っただけじゃねえか?)

 また騒がしくなってきた。目立つのが好きじゃないラルカとライラは、足早にギルドから出た。

「ぼっちゃん、またよろしゅうな~」

 オーザカの気の抜けた声が背中に聞こえた。

お読みいただきまして、ありがとうございます。


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