表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/7

少年、少女と出会う①

「すごいすごい、世界は綺麗。世界は広い。世界は、すごい!」

 両親と離れ離れになった寂しさを紛らわすように、ラルカは空を縦横無尽に飛び回っていた。ルクスカーナ王国はヴェレクよりはるか東にある国だ。徒歩、それどころか馬車でも数か月はかかる。しかしラルカは空を飛ぶ魔法を使用しわずか数日で到着した。国境での検閲を無視すればもっと早くついただであろう。今は王都付近の森の上空を飛んでいるところだ。

「あ、そろそろ日が暮れそうだな。今日はこのあたりにしておこうかな」

 急げば今日中にも王都に着くだろうが、別に急ぐ必要もない。ラルカは高度を落とし、今日の野営の場所を探した。

「あれ?」

 その時、ラルカは少し離れたところから金属音が鳴るのを耳にした。


「はあ、はあ、はあ、はあ、」

 少女は全速力で走っている。しかし背後から迫る影は、その大きさに見合わない俊敏さで迫ってくる。木の密集地帯に逃げ込んでも、その影は木を棒切れのように吹き飛ばしてしまう。

(くそ、なんでこんなところにこんな化け物が!)

 安全な依頼のはずだった。今まで何度も受けたことがある、なんてことのない魔物の討伐依頼。年齢の割に戦闘経験が豊富な少女にとって、いつものルーティーンと変わらない。

(はずだった、のに)

 少女は討伐依頼の魔物、クロウモンキーを数体倒し、討伐証明の手首を回収した。後は拠点の街に帰るだけだった。そこに現れたのが、この巨大な猿の魔物だった。大人と比較しても長身の彼女の五倍はあろうその高さから振り下ろされる拳一撃で少女の武器である大斧の柄は折られた。少女はすぐに戦うのをあきらめ、荷物も捨て、逃げることにしたのだ。

(でも、これだけは離すわけにはいかない)

 両断された武器を胸に抱き、必死に逃げる。しかし巨大な猿の魔物は、彼女を追うのをやめない。

(くそ、くそ、こんなところで!)

 少女の息が切れてきた。もう足が持たない。もう影は少女の足元まで迫っている。

(ごめん、とうさん、かあさん、わたしは―――)

「ねえ、お姉さん、なにしてるの?」

 突然の声に少女は驚いて顔を上げた。

(子供!?)

 混乱した。一体なぜこんなところに子供が?魔物に食料として連れ去られたのか?いや、じゃあなぜ私の隣を走っているのだ?

「お姉さん、ダークエルフでしょ?僕、初めて見たんだ」

 少女の銀髪と長い耳、そして黒い肌を見て、ラルカはヨミから聞いた珍しい種族のことを思い出した。

「お、おまえ、誰なんだ!」

「僕、ラルカ。初めまして」

 ラルカは走りながら、ぺこりと頭を下げた。ダークエルフの少女はそののんきな答えにきょとんとしたが、すぐに

「バカ!こんなところで何しているんだ!こいつはわたしが食い止める!そのうちにさっさと逃げろ!」

 少女は立ち止まり、ラルカと魔物の前に仁王立ちした。すでに折られた斧は役に立たないだろう。彼女の“切り札”も先ほど試したが、この魔物と相性が悪いのか、足止めにすらならなかった。しかし、彼女の誇りが死への恐怖を遥か凌駕した。

(とうさん、かあさん、見ていて。わたしは、二人のように、最後まで気高く生きる。この子だけでも守ってみせる)

 ライラは闘気を全力で出し、魔物に相対した。しかしラルカは、少女の脇をすり抜けると、魔物の頭に向けてジャンプした。

「え」

 一瞬のことに少女の頭は真っ白になった。次の瞬間、血の気が引いた。

 ――何をしている?逃げろと言ったはずだ。一体何をしているんだ?なぜ?なぜ?

 守るべき子供の無残な死が頭をよぎった。魔物は少女の身長を遥かに超える長さの腕を振り上げると、ラルカめがけて思い切り振り下ろした。

「月夜烏」

 しかしその腕は途中でその速度を急激に止めた。いや、正確には肘から先のみが空中で止まっており、二の腕は振り下ろす速度のままだった。が、二の腕の運動は肘から先に伝わらなかった。なぜなら、魔物の肘から先が切り落とされていたからだ。少女も何が起きたのかわからない。わかるのは、先ほど守るはずだった子供が、いつの間にか鞘から剣を抜いていたことだった。その子供はジャンプの勢いのまま魔物の顔付近まで飛ぶと、

(かささぎ)

 今度は魔物の巨大な頭が飛んだ。魔物は自身の腕が切り落とされたことも、そして頭が飛ばされたこともわからぬまま絶命した。魔物の頭が大きな音を立てて地面に落ちた直後、ラルカも地面に着地し、魔物の血で汚れた愛刀を一振りし、血を飛ばし、鞘に納めた。後ろで魔物の体が崩れ落ちる音がした。

「だいじょうぶ、お姉さん。怪我してない?」

 呆然とそれを見ていた少女は、頭を振り、正気を取り戻した。

(一体、何者なんだ!?)

 少女はラルカをいぶかしげにみつめた。

(歳はおそらくわたしより三~四歳は下だろう。しかし、この異常な戦闘力、本当に子供か?魔物?エルフ?)

 持っている剣はすでに鞘に納められている。しかし普通剣士は背中に剣を帯びるものだが、この少年は腰に、しかも二本差している。どちらもこの少年に不釣り合いともいえるほど長い。そういえば、先ほど見たら片刃のようだった。(確か東方の国には片刃の剣を持つ剣士がたくさんいると聞いたことがあるが、そこの出身か?でも、その国の人間はほとんど黒髪と聞いたことがあるが、こいつは桃色だしな)

「あ、お姉さん、武器が壊れちゃってるね」

 はっとして少女は自身の相棒を見つめた。思わずかがんで胸に抱きしめる。途端に悲しみが襲う。しかし、涙は流さない。流すわけにはいかない。

「その武器、だいぶ長く使ってたみたいだね。でももう柄も折れちゃったし、新しい武器に替えなきゃだめだね」

「・・・大きなお世話だ」

 今度はラルカがきょとんとしてしまった。少女の大斧は両手で使用する長柄の武器だ。柄が折れてしまったらもう修復は不可能だろう。繋ぎなおしても以前と同じ強度にはならず、またすぐに折れてしまうだろう。

「でも、危険だよ。確かにけっこうな業物っぽいからもったいないかもだけど、もし直してもまた戦闘中に折れちゃったら・・・」

「両親の、形見なんだ!」

 少女の悲鳴にも似た声がラルカの心をえぐった。少女は唇をかみしめ、何かに耐えている。しかしその肩は震えていた。

お読みいただきまして、ありがとうございます。

よろしければ評価、リアクションいただきますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
両親の形見なんだ!という言葉に強い慟哭を感じました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ