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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、師と出会う②

「どけ、次は私の試合だ」

 試合場に来たのはアウグスト王子だった。不機嫌そうにカレンを追い払う。カレンは視線を下げ、逃げるように試合場を後にした。

(くそ、この私が、獣人やダークエルフのような下賤な者どもより、下だというのか!それにあのガキ、強すぎるから見学だと!?ふざけるな!)

 アウグストはラルカをにらみつける。しかしラルカはアウグストの試合には興味が無いようで、ライラとカレンが教師から治癒魔法を受けているところを見ていた。

(こ、このガキ、私を無視する気か!)

 怒りで手が震えている。無視も何もラルカに声すらかけていないのだが、もはや彼は冷静さを欠いていた。

「始め」

 ダルタニアンが試合開始の合図をすると、アウグストは闘気を身に纏った。いつもなら取り巻きたちから「素晴らしいです殿下!」「この年齢で色持ちとは、末恐ろしいです」との声が上がるが、先ほどそれを上回る色を見ていた周囲の生徒たちからも特段反応がない。

(どいつもこいつも、私をバカにしやがって!)

 アウグストは力任せに剣を振り下ろした。相手の生徒も剣で受けるが、アウグストと闘気の質が違いすぎる。三合打ち合ったところで剣を弾き飛ばされてしまった。

「それまで」

 ダルタニアンが試合終了を告げる。しかしアウグストは闘気を納めず、剣を思い切り相手に振り下ろした。

「死ねえっ!」

「うわああっ!?」

 しかし、アウグストの剣は生徒にあたることはなかった。ラルカの隣にいた謎の教師がいつの間にかアウグストの右手を掴み、またダルタニアンも自身の剣でアウグストの剣を弾き飛ばしていた。

「まったく、試合はすでに終わっていますぞ、殿下」

「今の行為は間違いなく反則にあたります。次に同じようなことをしたら、停学もあり得ますからね」

 右手を掴んでいた教師があきれたように言うと、ダルタニアンも同調するように非難の言葉を口にする。アウグストは舌打ちをして剣を拾いに行った。

「きみ、だいじょ―」

 ダルタニアンが相手の生徒の無事を確認するため振り返るが、そこに生徒の姿はない。慌てて周囲を見ると、試合場の外にラルカがすでに担ぎ出していた。

(今の一瞬で、あそこまで移動したというのか。しかも人ひとり担いで。わたしは剣を防ぐだけで精いっぱいだったのに)

 謎の教師は内心で舌を巻いた。

「きみ、大丈夫?怪我はない?」

 ラルカは心配そうに生徒に声をかける。するとまだ怒りの収まらないアウグストが、

「おい貴様、なに私の試合の邪魔をしている!余計なことをするな!」

 従者の生徒二人もそうだそうだと言っているが、ラルカは無視して生徒の様子を見ている。どうやらけがはない様子だ。

「おい貴様、聞いているのか!なぜ邪魔をした!」

 ラルカがゆっくり振り返る。

「アウ君、今のは君が悪いよ。彼にちゃんと謝らなきゃ」

「な、な、な、なんだと・・・」

 アウグストのこぶしが震えている。今にもラルカに切りかからんばかりだ。

「もう試合は終わっていたんだ。それなのに君は攻撃をしようとした。しかも剣を、無抵抗の相手に振り下ろそうとしたんだよ」

「ふん、油断するから悪いんだろうが。それに実戦ではそんな言い訳は通用せんぞ」

「試合はあくまで練習だよ。すなわち互いがより強くなるため、お互いに殺さない、また重度のけがを負わせない前提でするものであって、実戦とは違うよ。君がやったことはそれを破ったただの不意打ちだよ」

「ふ、不意打ちでも何でもありなのが実戦だろうが」

「だからこれは実戦じゃない。練習なんだ。練習で不意打ちばかりする人は強くならない。たとえ負けても全力を出すことが練習になるんだよ。今のはアウ君にだって何の練習にもなってない。上手くなったのはただの言い訳だけだよ」

「い、言わせておけば・・・」

 アウグストの顔が真っ赤になる。これではいけない、とダルタニアンが止めようとしたとき、

「じゃあ、殿下とラルカ君で試合をしてみてはいかがかな」

 そう言って謎の教師はマントを脱いだ。中から現れたのは大柄な獣人の男であった。耳から察するに熊の獣人だろうか。発達した筋肉の大きさはジンブにも負けてはない。しかし彼にはそ右目と右腕がないという、それを凌駕する大きな特徴があった。恐らく魔物にやられたのであろう。顔の右半分をほぼつぶした大きな傷が、それをつけた魔物が強大な相手であることを雄弁に語っていた。

「ヒショウさん。勝手なことを言われましてもこまります」

「まあ、いいじゃないかダルタニアン君。若者は時にぶつかり、時にケンカするのもいいものだ。言葉では伝わらないこともあるからな」

 ヒショウと言われた獣人の男は豪快に笑った。

お読みいただきまして、ありがとうございます。

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