少年、入学する③
「まずはお主たち、入学おめでとう。これからの学校生活を十分楽しむがよい」
ヨミが宙に浮きながら挨拶している。重力魔法を自在に操るその姿に、七星使徒を間近で見ることの栄誉を生徒たちは感じていた。
「この学校では様々なことを学ぶ。無論学問や戦闘技術等もそうじゃが、最も大切なことはそれではない。友を作れ。生涯尊敬しあえる友を作れ。生涯助け助けられる友を作れ。生涯共にする友を作れ。友は力じゃ。何物にも代えがたい力じゃ。友は教師以上の教師じゃ。友を作ることはこの世で最高の学びじゃ」
以上、と言うとヨミがもう一人の教師に目配せした。
「具体的な授業内容や学校の規則などはこの教諭からしてもらう。それでは各々、存分に励むがよい。ニル、頼んだぞ」
そのままヨミは宙に浮いたまま出て行った。
「え~、ヨミ学長がおっしゃったとおり、今から僕が説明いたします。僕の名前はニル・アインシュタインと言いまして、算術と魔法学の授業を担当しています。以後お見知りおきを」
学校の授業は、まず基本的に午前中は魔法学・算術・文学・歴史の中から三科目の授業があり、全員参加必須である。
午後はまず武術訓練があり、続いて魔法訓練がある。最後は自由時間となり、生徒の自主性に任せられるが、魔道具の製作や鍛冶技術などはこの自由時間で学ぶことになっている。四日間の授業の後一日休日がある、などの説明がなされた。
「あと、生徒同士の私闘は禁止です。破ったものは退学もあり得ます。よろしいですね」
ニル教諭はアウグストをちらりと見た。アウグストはふてくされるように目をそらす。
「では次に、自己紹介をしてもらいましょう。ではまず、入試試験の首席、ラルカ・エルメル君から」
「はいっ!」
ラルカが元気よく手を上げて立ち上がった。アウグストが驚きと怒りの表情を浮かべた。王族や貴族の子女は試験が特別に別日で行われていたためラルカの噂を耳にしていない。
「ちょ、ちょっとまて、どうして私ではなく、こいつが首席なんだ!」
怒りをぶちまける。しかしニル教諭は動じず、アウグストを一瞥すると、
「自己紹介は順番にするので、それまで他の生徒は座っていなさい。ではラルカ君、簡単に自己紹介を」
「はい、僕の名前はラルカ・エルメル。種族は人間です。出身国はヴェレクで、お父さんは義勇ギルドに所属しています。お父さんのように強く、お母さんのように優しい人になりたいと思っています。みんなよろしく」
ぺこりと頭を下げた。剣聖と聖女の間に子供がいることは、現時点で公開されていない。そのため苗字はエリステルの亡き母のものを名乗っていた。
「ありがとう。それでは次席の、ライラ・プルメリアさん、お願いします」
「・・・ライラだ」
それだけつぶやくと、不機嫌そうに座ってしまった。
「そ、それでは第三席のアウグスト君、お願いします」
(この私が、このガキはおろか、ダークエルフ以下だと!?)
怒りで震えながらアウグストが立ち上がるが、何も話せない。拳を握り締め叫びだしたくなるのを抑え込むので精いっぱいのようだった。慌てて従者の太った生徒が代わりに挨拶をし、アウグストに着席をうながした。
(くそ、こんな屈辱は初めてだ。おのれあのガキめ。それになんだ、この学校の生徒は獣人だけでなく、汚らわしいダークエルフもいる。しかも“奴の娘”までいるとは。おのれおのれ、今に見ていろ、全員この場から追い出してくれる)
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