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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、入学する①

 学校の講義室は、合格した生徒たちであふれかえっていた。皆喜びに満ち溢れている。この学校に入学しただけである程度の成功は約束されたも同然なので無理もない。本日は新入生の入学初日、生徒たちへの学校の説明会が開かれる予定だ。その生徒たちの中、ゴンゾは一人小さくなっていた。

(うう、わかってはいたけんどドワーフはオイラだけで、ほとんど人間だべ。やっぱりちょっと心細いべな)

 一人だけのドワーフは珍しいらしく、みんな遠巻きにゴンゾを見ている。しかし話しかける者はいない。別にドワーフを蔑視しているわけではなく、皆もゴンゾ同様緊張しているのだ。そんな中、のんきな声が聞こえた。

「ゴンちゃーん!ゴンちゃんも合格したんだね!」

 ちょうどいま講義室に入ってきたラルカが走ってくる。見知った姿にちょっとだけゴンゾはほっとした。しかし周りの生徒はラルカを見て、声を潜めた。

(あいつが、例の推薦の奴か。確かに女みたいだな)

(本当にあいつが、教師を試合で倒したのか?信じられないな)

 すでにラルカのことは生徒の間で噂になっていた。

「おう、おまえも合格したんだな。しかしお前みたいなチビ助が、よく合格できたなあ」

 ラルカが頬を膨らませる。

「ゴンちゃんのほうがチビ助じゃない」

「オイラはドワーフだからこんなもんだべ」

「僕だって十二歳だから、これから伸びるもん」

「お、おまえ、十二歳だったんか!?」

 驚いたのはゴンゾだけではない。周囲の生徒たちも耳を立てている。

「うん、だから十五になったら絶対ゴンちゃんより大きくなるもんね」

 ラルカが胸を張って威張る。それにゴンゾが反論しようとしたとき、講義室の空気がさらに変わった。特に男たちが落ち着かない様子になっている。入り口を見ると十五歳とは思えない見事な肢体を持つダークエルフの少女が姿を現した。

「あ、ライラ、久しぶりだね」

「うわっ」

 ラルカは大きくジャンプし、ライラの目の前に着地した。ライラも思わず慌てる。

「お前か。当たり前だ。わたしはこんなところで立ち止まる暇などない。それよりなれなれしく話しかけるな」

「あ、そうだ、紹介するね。こっちがゴンちゃん。入学試験の時に知り合った友達」

「人の話を聞け!」

 ライラが声を荒げるとその迫力にゴンゾや周囲の生徒も委縮するが、ラルカは相変わらずにこにこしている。

「ゴンちゃん、こっちはライラ。入学試験前に知り合って、友達になったんだ」

「・・・お前と友達になった覚えなんてない」

 ライラが冷たくあしらうが、ラルカはまったく気にしていない。

(こいつ、肝っ玉がとんでもなく太いんだべな。しっかしこのダークエルフ、とんでもない美人さんだがおっかないな・・・。やっぱりオイラはニイナのほうがいいべ。絶対鍛冶師として成功して、お嫁さんにすんだ)

 故郷にいる幼なじみを思い出し、ゴンゾはこぶしを握り締めた。

「ふん、全く下賤の者どもは騒がしくて仕方がないな」

 騒がしくも楽し気な雰囲気に冷や水を打ち付けたのは、最後に教室に入ってきた少年だった。わかりやすく豪華な服を身にまとい、従者のように二人の生徒を引き連れている。腰に差した剣には豪華な装飾が施されていた。生徒たちは皆黙り、目線を下に下げている、ラルカとライラ以外は。ライラは不快さを隠さぬように厳しい視線を送っているが、ラルカはきょとんとしていた。少年は金色の髪をたくし上げ、この場の支配者のように歩き出した。

「庶民と同じ席に座らさせるとは。高貴な私の身が穢れるわ」

「全くです、アウグスト殿下」

 側にいる太った生徒が同調する。もう一人のがりがりの生徒が椅子を引きアウグストと呼ばれた生徒がそこに座ろうとしたとき、端にいたある生徒を見つけて眉をひそめた。

「おい、なんでこんなところに奴隷がいるんだ」

 端にいた生徒はびくりと肩を震わせた。頭についた耳がより小さくなる。この講義室にいるたった一人の獣人だった。

「奴隷?」

 ラルカが首をかしげる。他の生徒たちは黙っているが、心なしかアウグストと言う少年ではなくその獣人へ敵意を持った視線を送っているようにラルカは思えた。

「おい」

 ゴンザがラルカの服を引っ張る。関わるな、と言いたげに首を横に振った。

(あいつ、この国の王子なんだ。逆らうとやっかいだぞ)

 小声でささやく。

「奴隷って?」

 ラルカはそれに答えず、引っかかっていたことをゴンゾに聞いた。

(この国じゃ、獣人は奴隷かスラムの住人なんだ)

 ゴンゾが耳打ちした。

「ここは奴隷がくるようなところじゃないぞ。とっとと汚いスラムにでも帰れ。汚らわしい獣人ごときが」

「か、カレンは、奴隷じゃないにゃ」

 獣人の少女は消え入りそうな声で反論した。

「黙れ奴隷が。このお方はお前が逆らっていい方ではない。さっさとひれ伏せ」

 太った生徒がわざとらしく言うと、アウグストは顎をさすり胸をそらしてみせる。

「まあよい。私は心が広いのだ。おい獣人、まずは地に跪き、こうべをたれよ。そして私の靴をなめればゆるしてや―」

「ねえ」

「「「うわっ!!!」」」

 アウグストが下卑た笑みを浮かべながら話していると、突然獣人の少女との間にラルカが現れた。

お読みいただきまして、ありがとうございます。

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