少年、入学試験を受ける②
ラルカとゴンゾが筆記試験会場に着くと、すでに多数の受験生が座っていた。ラルカはライラを探したが、どうやら別の教室で受けているらしく、その姿はなかった。
「おめー、誰か探してんのか?」
「うん、友達も受験しているんだけど、ここにはいないみたいだね」
「君たち、そろそろ始まりますよ。受験票と同じ番号の席に早く着きなさい」
試験官の声に、慌てて二人が席に座る。どうやら二人が最後だったようだ。
「それでは、今から試験の説明をいたします。まずは魔法、次に歴史、文学、算術の順番で行います」
説明した教師が大小二つの砂時計を置いた。
「一つの試験はこの大きい砂時計が落ちきるまでとします。これはだいたい四半刻(30分)です。終了後答案用紙を回収し、この小さい砂時計が落ち切ったら次の試験を開始します。これは5子時(6分)です。用を足す場合はこの間に行ってください」
教師が続ける。
「不正行為は即失格とし、それ以降の試験を受けることはできません。当然受験料の返却もできません。不正行為は他者の回答を見る行為、魔法の使用、書類等の持ち込み等になります。よろしいですね」
はーいとラルカが返事をした。何人かがにらみつけるがラルカは気にしていない。教師が一度咳ばらいをし、
「また、回答が終了しても途中退出はできません。もちろんですが、試験中は私語は慎むようにしてください。それでは今から初めの魔法筆記試験の問題用紙と解答用紙を配ります。私が開始と言うまで触れないように」
教師が全員に用紙を配り終えた時、どこから鐘の音が聞こえた。
「それでは試験、開始!」
教師が砂時計をひっくり返した。それと同時にラルカたち受験生も問題用紙を開いた。
(なんだこれ?)
魔法の筆記試験は大きく分けて、魔法に関する知識に関する問題と、術式を陣として記述する問題の二つである。他の受験生が頭を悩ませる中、ラルカは別の意味で悩んでいた。
(こんな簡単な問題でいいの?)
そう思うのも無理はない。ラルカは冥府にてヨミやフロート、母エリステルから直接魔法を教わっており、その知識はすでに宮廷魔術師のそれを遥かに超えている。ラルカにとってこの試験の内容は、5歳の時にはすでに理解している内容だった。また、ラルカはヨミが所有していた本を10歳ですべて読破している。もちろん冥府に持ち込んだものだけではあるが、その量は下手な蔵書室一つ分ぐらいはある。ラルカにとっては退屈な時間になりそうだった。
「あー、やっと終わったべ。オイラ勉強はにがてだよ」
ゴンゾがやれやれと肩をまわした。
「お疲れ、ゴンゾー。長かったから肩こっちゃったの?揉んだげようか?」
「ゴ・ン・ゾ!伸ばさない!」
ぷんすかと怒っている。
「じゃ、ゴンちゃんって呼ぶね」
「ご、ゴンちゃん!?」
「だって、どうしてもゴンゾーって伸ばしちゃうんだもん」
「はあ、もうそれでいいべ。そういえばお前は戦闘試験と攻撃魔法試験受けるんだったな。意外だな、魔法はともかく武術なんて」
「そういうゴンちゃんは鍛冶だけなんだね。武術は受けなくていいの?」
国宝と呼ばれる天才鍛冶師ガドンは、戦士としても超一流で、父やジンブも背中を預けて戦うのをラルカは何度も見てきた。そのため、鍛冶師とはそんなものだと思っている。事実、ドワーフは戦闘力が高い者も多い。
「ま、まあオイラは世界一の鍛冶師になる男だからな。鍛冶の試験だけで合格間違いなしだべ」
ゴンゾが慌てた。戦いが苦手とはさすがにかっこ悪くて言いたくない。
「そっか、すごいんだね!じゃあ、お互い頑張ろうね!」
「おう、お前もな」
ゴンゾと別れ、ラルカは武術試験会場に向かった。
武術試験は剣、長柄、遠距離、体術部門に分かれている。剣はラルカのような刀や刺突用のエペのようなもの、また剣ではないが基本片手用の武器である手斧等の使い手もこちらで試験を受ける。長柄は槍やハルバードなどで、ライラの大斧もこれにあたる。遠距離は弓や短剣などで、これのみ実戦形式ではなく試し打ちでの採点になる。体術はその名の通り武器無しの戦闘だ。ラルカが受けるのは最も受験生が多い剣だ。攻防のバランスが最も優れていると言われているため義勇士も騎士も一番人気の武器だ。
剣の試験会場は屋外にあり、そこには百人を超える受験生が集まっている。試験官は二名の教師が担当しており、受験生と実際に試合を行う。単純計算で一人で五十回以上の試合になる。並みの義勇士なら子供相手とはいえ、十回もできればいいほうだろう。それだけで教師たちの実力の高さがうかがえた。
「よし、それでは試験の説明をする。よく聞いておくように」
教師の一人、貴族風のロールを巻いた教師が声を張り上げた。ざわざわした試験会場が一瞬で静かになった。
「まず、武器はこちらで用意したものを使用してもらう。様々な種類の剣を用意した。好きなものを選ぶがよい」
これは高価な武器の力だけに頼った受験生を落とすためである。
「魔法の使用は治癒を含め一切禁止。むろん我らも使用はしない。魔法の使用が確認された時点で不合格とする。ちなみに武器を持った状態で体術の使用はもちろん可能だ。試験は私アレクサンドル・ロベスピエールと、こちらにいるシャルル・ダルタニアン教諭の二名で行う。我らの武器は刃をつぶしてある。とはいえ、怪我に十分注意するように。我らがそれまでと言った時点で試験は終了となる」
以上、と言って二人の教師は試験場にある、四角く線で区切られた場所にそれぞれ移動した。続いて初めに挑戦する受験生が武器を選択し、教師に相対した。
「それでは、初め」
その声と同時に受験生は教師に切りかかっていった。
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