4話
【夢原颯太視点】
カラオケの中へと入り、部長が予約してくれていたカラオケルームへと、スムーズに入ることができた。部屋の中は部員二十一名が入ることができるほど広い。まるでパーティールームみたいだ。中央には全員が腰掛けられるくらい大きなソファが二つと、それに挟まれる形で黒い長机が配置されている。その向かいの壁には大きなテレビが付けられていて、下には曲を選ぶためのタッチパネルと、マイクが二つ立てかけられていた。
「よーっし! そんじゃみんな歌ぞー!」
潮田部長を中心に、部員全員が「おぉー!」と声を上げた。田崎もだ。俺も皆に混じって声を上げる。
「ちなみにだけど、今日は部活の思い出作りにもしたいから、最低でもみんな一曲は歌ってもらうよ!」
潮田部長が皆にそんなことを言い出した。たぶん、人のいい部長は良かれと思って言っているんだろうけれど、大勢の集まりの場において、そういうのって人によってはこの上ない苦痛だと思う。まあそもそも、来ている時点で嫌がる人もいないだろうけれど。それでも、強制されるとあんまりいい気にはならないんだよなあ。個人的にはだけど。
「ほんじゃあ、最初は誰歌う?」
次に潮田部長がそうみんなに訊いた。トップバッターで歌うのってなんとなく抵抗ある。だからこういう時に最初に歌ってくれる人って、ちょっとありがたい。
「最初はやっぱり部長がかましちゃってくださいよ!」「部長が最初じゃなきゃ始まんないからな」「潮田! 一年の奴等にお前の歌をみせてやれ!」
二年の先輩や、部長の同級生の先輩たちが笑いながら部長にそう言った。その人たちの投げかける言葉の雰囲気からも、部長がいかに周りに愛されているかが、俺にも伝わってきた。
そんなこんなで、部長もしゃーないなー、と言った感じで歌い出す。満更でもなさそう。
部長が歌い出したのは、今話題のアニメの主題歌。知らない人などいない人気作なので、周囲は盛大に盛り上がりを見せた。
部長が歌い終わると、部長に続いて途切れることなく、皆が順番に歌い出す。田崎も中盤に歌ったけれど、これがなかなか上手かった。田崎の声はかなり低音だけれど、それがいい感じに味を出していた。
「ほら、次はお前が歌え。カラオケ初めてなんだろ? いい機会だし歌ってみ」
田崎が歌い終わると、今度はマイクを俺の前に出した。
「えっ。夢原君カラオケ初めて? いいじゃんいいじゃん! 歌ってよ!」
部長も急かすように誘導してきた。
これに続いて「いいね! 歌ってみ!」「夢原君の歌聴きたい!」「どんな曲歌うの?」などなど、他の人たちも次々に言ってくる。
実際にカラオケは初めて来たわけじゃないけれど、中学時代に遊んだあいつらとの思い出なんて、裏切られた以上もはや無かったようなものだ。
「わかりましたから急かさないでくださいよ」
あまりにもみんなが言ってくるので、俺も少し恥ずかしくなってきた。俺は机の上に置かれたタッパネルを指で操作する。
何を歌おうかと考えたところで色々思い浮かんだけれど、嫌なことに、どれも中学時代にあいつらと歌ったものばかり。曲自体は好きだけど、歌うとあいつらのことを思い出しそうだから、脳内で却下した。
それからパッと思い浮かんだのは、最近流行ったドラマの主題歌。俺が今推している曲だ。よく風呂場で口ずさんでいるからバッチリ歌える。
しかも人気アーティストが務めた楽曲なので、周囲のウケも良いだろう。
俺は立ち上がって口を開き、歌い出した。間奏も含めて終始みんなが手拍子をしてくれたりして、歌いやすかったし、とても楽しかった。曲が終わった後も、部長や田崎、他の部員の人たちも、大いに盛り上がってくれたので、暖かい気持ちになれた。
「夢原。お前意外と歌上手いんだな」
田崎が茶化すように、ニヤけながら俺の腕に肘をぐいぐい押してきた。
「意外とってなんだよ。なめんな」
俺も仕返しに顔の頬に肘を押し当てる。
それからも次々と歌い出して、みんな楽しそうにワイワイ騒がしくしていた。時間もかなり経ったので、歌を歌い続けている人や、椅子に腰掛けて談笑している人なども出てきた。中にはフロントから、ポテトやパフェを注文して食している人たちもいる。っていうかパフェ美味しそう。生クリームと小さくカットされたメロンが乗せられている。俺は男だけど、甘いスイーツに目がない。いや、別にスイーツ好きに男とか女とか関係ないか。
ちなみにスイーツ好きなのは、俺が友達保険を結んでいる孤山凪もそうだ。彼女はよくスイーツ専門店で買い物をする。同じくスイーツ付きということもあって、俺も時々それに付き合うのだけれど、彼女はいつも選ぶのが遅い。行くたびに毎度、店のスイーツが並べられたケージと、長いこと睨めっこをしている。それはたぶん、俺をも凌駕するほどのスイーツ愛を持っているからに他ならないのだけれど、あんまり長いものだから、毎回微妙に疲れる。もう少しスイーツ選びの判断スピードを上げていただきたいものだ。
改めて思うと、そんなふうに気休めにしかならない仮の友達関係である、友達保険を結んだ二人でわざわざスイーツを買いに行くあたり、俺たちって本当に友達いないんだなあ、と実感させられる。
だって友達いたらその人と行くもん。わざわざ仮の友達と行ったりなんてしない。
そんなふうに友達がいない事実を考えると、なんだか悲しく思えてきた。気分が沈んでくる。
いやいや、これからだ。これから作るんだ。いちいち気分を沈めている場合じゃない。
周りがワイワイしている中で、俺も田崎と椅子に座って駄弁っている。あとで俺もパフェ注文しようかな、などと考えていると、横から女子生徒二人が寄ってきた。うち一人は長い黒髪で、もう一人はボブカットだ。
「あの。ちょっといい? うちら一年なんだけど、あなたたちも一年だよね?」
ボブカットの子がそう問うてきた。人当たりのいい明るい笑顔と声の調子的に、第一印象は明るくて気の強そうな人だなと感じた。顔付きも目鼻が整っていて、同世代と比較しても、どこか大人びた雰囲気を感じさせる。先方の問いかけに田崎が返答。
「ああ、そうだけど。それがどうした?」
「急にごめんね。うちら入部してからあんまり一年同士でなかなか交流なかったから、みんなと仲良くなりたくってさ! うちは桜田千代! で、こっちが岩井環奈ね!」
「い、岩井環奈です。よ、よろしくお願いします……」
隣にいた岩井と名乗る長い黒髪の人は、桜田さんとは対照的で、第一印象は陰気で気の弱そうな人だと感じた。けれど、彼女も顔のパーツパーツが整っていて、小さな顔にパッチリとした大きな目と、童顔といえる。大人びた雰囲気を醸し出す桜田さんと比べて、対照的に、幼さを感じさせる可愛らしい印象を受けた。すると、桜田さんが続けた。
「良かったら、うちらともこれから仲良くしてくれないかな? 友達は多い方が楽しいしさ!」
おぉ。なるほど、そういうことか。それは俺としても率直に嬉しい。真の友達を作るためにも、人との交流や人脈は多いことに越したことはない。というか、それらは不可欠にも思える。なんならこの人たちと真の友達になれるかもしれない。異性ではあるけれど、真に信じ合える友になれるのなら、そんなことは別に関係ない。
「うん。いいですよ。俺は夢原颯太です。俺も友達少ないし、こちらからもよろしくお願いします」
俺は第一印象をできるだけ良くするため、にこやかに返事をした。友達少ないっていうか、皆無だけど。
そして、田崎も快く頷いた。
「おう、よろしくな。俺も仲良いやつが増えるなら嬉しいから」
「マジで? ありがとう! いやぁ、うちらも友達少ないから助かるわ。じゃあこれからよろしくね!」
そう言うと二人は、俺たちのすぐ隣に腰掛けた。それから連絡先を交換して、他愛もない話を交わした。
「ねえねえ、あなたたち部室ではよく一緒にいるけど、中学から一緒にいるの?」
「いや、俺らは高校で知り合ったんだ。美術部でな。俺らの部活の一年って、男子は俺たち二人だけだろ? だから必然的にいつも話すことが多いんだ」
「あーね。たしかに男子って一年の中じゃああなたたちだけだもんね。なんか肩身狭そう」
「まあ、俺たちも話していると楽しいので、そんなに気にはならないですけどね」
俺がそう言った直後、桜田さんが俺を見て少し顔をしかめた。なんだろう、何かまずいことでも言ったかな?
「……ねえ。あんた、夢原だっけ? 敬語やめなさいよ。うちら同級生じゃん? なんか敬語使われると距離感じて嫌なのよね」
あっ。たしかにちょっとそれわからないでもない。交友関係を作る場面において、初対面で敬語から入ってしまうと、その時点でなんとなく距離を作ってしまうのだ。俺も重々承知していること。なんなら高校入学前、友達作り講座みたいな動画をSNSで見て、そこでもそんなことを言っていた。
それもあって、俺は相手が年上でない限り、極力初対面では敬語ではなく、タメ口で話すように心がけている。清水君の時もそうした。
ただ。今回の相手は女子。別にタメ口でも問題ないだろうけど、なんとなく最初は敬語で話してしまう。最初から変にタメ口で話すと馴れ馴れしいかもしれないし。などとそんな小さいことを考えている俺、なんか情けない。俺は、頭を少し下げる。
「あ、……たしかにそうですよね。すみません」
「まだ敬語じゃない」
「……ちーちゃん。別にそれくらいはいいじゃない。そんなの本人の自由なんだし、初対面で指摘したら失礼だよ」
桜田さんの隣に座っていた岩井さんが、手をあたふたさせながら桜田さんに言う。気を使わせてしまっただろうか。
というか、ちーちゃんって呼んでるんだ。
「えー。だってカナっちもそう思うでしょ? やっぱ仲良くなるためには、まず敬語を無くさないと!」
それはケースバイケースだと思う。というか、こっちはカナっちって呼んでるんだ。
すると今度は田崎が口を開く。
「っていうかお前ら。あだ名で呼び合ってるけど、付き合い長いのか?」
「お前って呼ばないでくれる?」
「あ、すまん」
「うちらは幼稚園の頃からの付き合いよ。まあ幼馴染ってやつね。それからは小中も一緒」
なるほど。だいぶ長いこと一緒にいるんだな。幼稚園から高校まで一緒だなんて仲良いな。なんかそういうの憧れる。
「なんかいいですね。あっ、いや、いいね。そういうのちょっと憧れるよ」
俺がそう言うと、桜田千代さんことちーちゃんさんは、胸を逸らして得意げな顔をして見せた。今にも、えっへん。とか言いそう。なんかムカつく。
「ふふーん。まあうちらはもはや親友を通り越して大親友だからね!」
……。……親友、か。羨ましい。
さっきこのカラオケに来るまでの会話に従えば、田崎にしてもそうだったけど、やはりみんなそれぞれ、親友と呼べる存在が一人はいる者なのだろう。田崎だって、俺なんかよりももっと他に仲の良い友人がいるんだろうし、分かりきっていることだけど、田崎からすれば、俺はきっと部活動での退屈を少しでも埋めるための、仕方なく一緒にいる存在。……みたいな感じなんだろうな。
まだ出会って一か月くらいしか経っていないとはいえ、現に部活動以外で一緒に遊びに行ったことがないというのが、何よりの証拠。
田崎的には、俺はいなくても対して困らない、取るに足らない存在なのかもしれない。
そう。俺はいまだに、真の友達を作れていない。なれそうな人すらもいない。
いや、まだ入学して一週間だし、これほどネガティブになるのも期が早いのだけれど。
まあでも。こういうどうにもならない切なさと悲しさを少しでも埋めるために、俺は孤山と友達保険を結んだのだ。例え偽りの友達ではあっても、いつか真の友達ができるまでは、孤山との保険関係はなくてはならないものなのだ。
「ちょっとちーちゃんっ。そう言ってくれるのは嬉しいけど、なんか恥ずかしいよぉ」
岩井環奈さんことカナっちさんが、顔を少し赤らめながら、ちーちゃんさんに言う。
「えー。だって事実じゃん。うちら二人いれば最強だし!」
「そ、そうだけど、人前でそんな堂々と」
そんな二人のやりとりを見ながら、俺はふと思った。
これほど絆の固そうな二人だけど、この二人はもし、ずっと親友だと思っていた目の前の相手が、自分を裏切った時、どう感じるのだろうか。俺のように絶望するだろうか。人を信じられなくなるだろうか。最悪、もう死んでしまおうとか考えるのだろうか。
わからない。けれど少なくとも、俺はそう感じた。もう何もかもが馬鹿馬鹿しくなった。今までのはただのおままごと、ただの友情ごっこだったのだと悟った時の、世界からただ一人、自分だけが切り離されたかのようなあの感覚は、今でも鮮明に覚えている。
目の前のこの二人も、俺と同じように、深海の海へと落ちていくのだろうか。
そんな暗いことを考えていると、何やら近くから声が聞こえてきた。というのも、それは俺たちに直接向けた声ではなく、まるで陰口のようなヒソヒソ声で、数名の女子生徒が一か所に固まって会話をしているものだった。顔はちょくちょく見たことがあるので、話したことはないけれど、その者たちが自分たちと同じ一年生だということは俺も把握している。
大変盛り上がりを見せているこの場では、耳を澄ませなければ聞こえないくらい小さな声。俺はたまたま気づいたけれど、田崎らは気づいていないっぽい。
ただしその会話の内容は、なんとか俺は聞き取れていた。
「ねぇ。桜田と岩井とかいうあの二人、うちらにはぶられたからって今度は男子たちに絡みに行ってんだけど」「うわぁ、本当だ。なんか惨めだわ」「めっちゃウケるんですけど」「あの、岩井だっけ? あいつ桜田と二人で初めてうちらに話しかけてきた時もウジウジしててさ、マジ陰キャ代表って感じでキモいし、友達とかマジ勘弁だわ」「そうそう。それでうちらがつき離したらあの桜田が突っかかってきてマジだるかったよね」「ってかうちら、そもそもそんな突き離してなくね? ちょっとよそよそしくしただけじゃん?」「人によって合う合わないはあるんだからさ、別にあそこまで突っかかってくることないのに」「マジそれな」
……ああ、なるほど。おおよそは理解した。
実は俺も少しだけ疑問に思っていた。この二人はどうしてわざわざ俺たちに話しかけにきたのかを。
仲良くなりたいのなら、他にも部内に一年生はいるのに、わざわざ男子の俺たちに話しかけてきた意図がわからなかった。別に俺としては全然構わないのだけれど、こういう時って大抵は、同性の人たちに話しかけるのが定石ではなかろうか? 同性の人たちとの方が話しやすいだろうし。
けれど、その疑問も彼女らの会話によって解かれた。たぶん、最初に彼女らに話しかけに行ったのだろう。しかしカナっちさんに対しての態度が気に障ったちーちゃんさんが、彼女らに突っかかり、関係が拗れた。たしかに、ちーちゃんさんならやりそう。出会ってまだ数分だから、彼女の何を知るでもないけれど、なんとなくそう思う。
それで仕方なく俺たちのところに声をかけにきた、といったところだろう。
こういうギスギスした状況が、知らないうちに自分の部内で起こっていたのかと思うと、ちょっぴり胃が痛くなってきた。
けれど、親友が悪く言われたのなら、例え自分が敵に回されたとしても、それをも厭わず親友を庇うちーちゃんさんの度胸、あっぱれである。伊達に人前で大親友宣言していない。ちーちゃんさんとカナっちさん。二人の間には、俺が今までずっと求め続けていたものを、持っているのかもしれない。
傍らには今もなお、部長たちがマイクを通してエンジョイしている。
二人を尊敬と妬ましさが混じった眼差しで見つめていた俺には、そのはっちゃけた声が二人を讃えているものなのではないかと錯覚した。
*
「おーし。というわけで、今日はここらで解散だ! みんな今日はありがとね」
そんなこんなで時間は過ぎていき、一通りカラオケを楽しんだ午後八時ごろ。俺たち美術部は部屋を出て、外に出た。
そして、カラオケがあるビルの前で潮田部長が締めの挨拶をし、そのまま現地解散となった。
「ほんじゃあね! 二人とも今日はありがとう、楽しかったよ。今後ともよろしく!」
「ま、また部活で会いましょう」
ちーちゃんさんとカナっちさんが手を振ったので、俺たちも手を振ってさよならを告げる。
「こちらこそ話せて良かったよ。またね」
「また部活でな」
二人と別れた後、俺と田崎も帰路についた。彼が電車通学なのに対して、俺はバス通学だけれど、バス停は田崎が向かう駅の途中にあるため、それまでは一緒に帰ることになる。
先程までの賑わいと比較して、夜道はしーんとしていた。
先刻の賑わいの余韻と、夜の静けさとの間になんともいえない寂しさを感じた。エモい、とは少し違うかもしれないけれど、それに似たものを感じさせられる。
歩きながら干渉に浸っていると、横から肘で小突かれた。
「何浸っちゃってんだよ」
「うるさいよ」
図星を疲れて、内心少し驚いた。田崎エスパー説。というか俺、そんな浸ったような顔してたのかな。
「初カラオケ、どうだったんだ?」
本当は初ではないので、そう言われると罪悪感を覚える。
「うん、楽しかったよ。結構盛り上がったし、桜田さんと岩井さんとも仲良くなれたしね」
「そりゃあなによりだな。つーか美術部、意外とみんな歌上手かったよなー」
「意外と、は失礼だろ……」
「でも美術部って、ひたすら絵を描いてるイメージしかなくね? 俺はてっきり、絵以外のことには興味ないって人の集まりだと思ってたぜ」
偏見もいいところだ。自分も美術部でしょうに。
「まあでも、分からなくもないね」
「だろ? だから今日は、みんなの意外な一面が見れてよかったよ」
「それはなにより」
まあ、人は偏見や勝手な決めつけで、判断はできないということだ。
「というか、さっき絵以外のことには興味ない人の集まりって言っていたけれど、じゃあ田崎は、絵以外のことには興味ないの?」
「別にそういうわけじゃねーよ。……まあけど、正直、絵以外にそれほど熱中できるものはないな。最悪絵が描けなくなったら、もう死んでいいって思うくらいには」
さすがは画家志望。熱意がすごい。
……でも、本当だろうか。田崎を軽く見ているわけではないが、さすがに大げさに聞こえてくる。
少なくとも、俺はそう感じる。なんというか、死という概念を、なめているように聞こえてならない。冗談で言っているのかもしれないが、俺からすればちょっと気が悪い。
「あ、もしかして、冗談だと思ってるだろ?」
「……ばれた?」
田崎エスパー説が、さらに濃厚になってきた。
「……でもそいうのはさ、あんまり軽はずみに言うもんじゃないよ」
俺がそう言いうと、田崎は少し黙るように、間を置いた。たぶん、彼なりに反省しているのかもしれない。
「……まあそうだな。悪かった、不謙信だったよ」
まだ出会って一ヶ月程しか経っていないが、田崎のこういう素直なところ、俺は大好きだ。
たぶん、こんな素直な田崎は……、
「……きっとたくさんの人に愛されるんだろうなぁ……」
……俺とは違って。
「ん? なんだって?」
「……いや、なんでもないよ。それより夜は冷えるねー」
「だなー」
俺は、星一つ見えない真っ暗な夜空を見上げた。
俺はこれから先、本当の意味で、誰かに愛される日が来るのだろうか。
……いや、きっと大丈夫だ。だって少なくとも、俺は一人じゃない。俺には、仲間がいる。
……そう。俺には孤山さんがいる。……大丈夫。きっとうまくやれる。
これからきっと、俺にも真の友達ができる。そのために、これからも頑張るのだ。
……一人じゃ、ないから。




