14話
小学四年生になった。相変わらず俺は、上原たちと仲良くしていた。あと、影山とも時々、休み時間に話をしていた。昔と比べれば、影山とは絡む回数も減ってしまったけれど。
俺は当時、放課後の学校の図書館で、毎週水曜日に影山と二人で過ごすのが日課だった。影山はかなり人見知りで友達も少なかったから、こうしてたまに俺とつるんでいた。けれど、相変わらず上原たちとは、入学式に自己紹介しあったという接点があるものの、恥ずかしがって関わろうとはしなかった。
「ねぇねぇ颯太。これ見て!」
影山が興奮気味に、自分が読んでいた本を見せてきた。俺といる間は明るい感じなのに、他の人とは恥ずかしがって引っ込み気味になる。顔は可愛いし、俺といる時みたいな感じで話せばもっと友達ができそうなのに、もったいないなぁと思う。
「何これ?」
一つの長机の椅子に二人して座り、俺は影山に見せられた本のページを見て、そう訊いた。
「漫画の描き方だよ! コマ割りってこんなふうに描いてるんだって! すごいよね!」
影山は指でページを指しながら、目を輝かせていた。その本は、漫画の描き方を記された参考書で、影山はよく、この手の漫画関連の参考書を図書館で読んでは、漫画制作の勉強をしていた。
彼女はこの頃から、漫画家を目指していたのだ。
「へー、漫画のコマ割りってこんなに考えられて描かれてるんだ」
俺も漫画は好きだったので、影山と話をするのはなんというか、漫画の真髄を知れるみたいで楽しかった。
「やっぱり漫画家ってすごいよねー。私も頑張らなきゃ!」
影山は、目を輝かせながらいつも俺にそんな話をしてくれた。そんな楽しそうに話す彼女を見ていると、正直、ちょっと羨ましかった。俺には将来なりたいものとか、そういうのが何もなかったから。
「……なんかいいね。やりたいことがあって」
俺がそうぽつりとこぼすと、影山は、優しく微笑んだ。
「颯太だって、きっとこれからなりたいものが見つかるよ。颯太は意外と染まりやすいところがあるから」
「そうかな? 自信ないなー。それに俺、いいところなんて一つもないしさ」
なんだか、変にネガティブになってきた。影山に優しく励まされたおかげで、ついつい自虐的なことを言ってしまう。
「ゆっくりでいいんだよ。それに、颯太にはいいところたくさんあるよ。颯太の、そのぉ。……優しいところとか、私、好きだもん」
影山の顔がほんのり赤くなったような気がしたが、たぶん、気のせいだろう。
「……そうかな。でも、ありがとう。なんか自信出てきたよ!」
つい大きな声が出てしまった。入り口付近の貸し出し机に座っていた図書委員の人に、一瞬睨まれたので、気まずくなった俺は、「すんませーん」と、小声で謝罪。
バツの悪い感じとなった俺と影山は、なんだかちょっぴりおかしくなり、肩を縮こませて、二人でくすくすと笑い合った。




