表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/36

『エリックの語る真相』を語るハト

「エリック——三ヶ月前の俺の暗殺未遂について、真実をちゃんと話せ」


ハトの問いかけに、エリック王子は固まっている。


「真実って、おまえは俺を疑っているんだろう。言ったって信じるわけが⋯⋯」

「疑ってはいた。でも、一つだけ引っかかってたんだ。おまえが俺を狙ったなら、俺が食えない熱々のポタージュに毒なんて入れるかなって」


——熱々のポタージュ。

クロード暗殺に使われた、毒入りの枝豆ポタージュのことだ。

確か、ハトは猫舌だから食べられなかったと言っていたわね。


その代わりに、可愛がっていたペットのハト——ハトリーヌがポタージュに浮いた豆を食べて毒に倒れたのだと。


「エリック王子は、王太子が猫舌だって知っていたんですよね?」


私の問いに、クラウスさんが頷く。


「仲は良くなかったけど、兄弟だからね。お互いの好みや苦手なものは知っていたよ」


それなら、確かに不自然ね。

再び視線をハトとエリック王子に戻す。


「で、でも、作り話だってバカにされるかもだし⋯⋯」


なおも言い渋るエリック王子に、ハトがため息をついた。


「エリック、それでも話して欲しいんだ。この中で真実を知っているのはおまえだけだ。それに——」


ハトがミランダとセシリアを見て言う。


「おまえはきっとやり直せる。あそこに美人の花嫁が二人もいるじゃないか。それに、たとえ転生ボーナスを失っても——おまえはイケメンじゃないか」


その言葉に、エリック王子がハッと目を見開く。


「そうか⋯⋯そうだな! 俺には美人姉妹の花嫁と、唯一最大の武器であるイケメンが残っている。クロード、俺は目が覚めたぜ!」

「その意気だエリック。さあ、話してくれ」

「ああ、もちろんだ」


なんで今ので立ち直ったし。

まさかあの王子様、美人とイケメンという褒め言葉に弱いの?


目に光が戻ったエリック王子を、皆が呆れて見守る中。

エリック王子から真相が語られた。


「三ヶ月前——。

俺は、舞踏会の準備に張り切るクロードを歯噛みして見ていた。

なんであいつが主人公で、舞踏会の主催者なんだ。

攻略対象の女の子を選び放題で羨ましいなって思いながら⋯⋯」


——そんなエリック王子の愚痴から始まり。


「話が長いからカットした。つまりこういうことらしい」


ハトがまとめて解説し直した。


——事件があった日。

エリックはこっそり俺の部屋へ行った。

家庭教師に出された自由研究の宿題をやっていなくて、俺の宿題を丸パクリしようと思ったらしい。


俺の部屋へ行ったエリックは、いつものようにノックもせずにドアを開けた。

すると、ちょうど部屋から出ようとする人物と鉢合わせたらしい。


「え⋯⋯?」


部屋から出てきたのは、メイド服を着た——だった。


「な、なんであんたがここに⋯⋯」


予想外の人物に、エリックは呆気に取られた。


「それに、なんだその格好! あんたに、フリフリメイド服はさすがに無理がある——」

「おだまり!」

「ぐぼはぁっ⋯⋯」


うっかり本音を漏らしたエリックに相手はブチギレた。

そして、エリックは鳩尾に拳を叩き込まれて気絶し⋯⋯。

気付くと、俺の部屋の中に倒れていたそうだ。


あのメイドの姿はどこにもなく、辺りを見回すと。

床に倒れたままぴくりとも動かない俺が目に入った。


「ク、クロード? おい、寝ているのかー?」


声をかけたが、俺が目覚める様子はない。

その時、テーブルの上に置かれたある料理がエリックの目に留まった。


例の毒入り枝豆ポタージュ⋯⋯の横に置かれた手つかずのオムライス。

そこには、ケチャップで可愛くこう書かれていた。


——『犯人はエリック♡』と。


ま、まさかこれって、ダイイングメッセージ⋯⋯!


「てなるかぁ! どう見ても犯人が書いたやつじゃねーか!」


などと言いつつも、エリックは急いでオムライスを完食。

証拠を隠滅してダッシュで逃げたらしい。


その後、俺が暗殺されたという知らせで城は大騒ぎになり。

でも舞踏会はなんやかんやで、エリック主催のもとに行われることが決まった。


『俺が主催者⋯⋯! つまり、嫁を選び放題な上、ハーレムも作れるってことだよな!』


目先の欲に弱いエリックは、すぐに調子に乗った。

舞踏会の内装から催し、料理のメニューまで自分好みに変更させ、臣下たちはてんやわんや。

もう舞踏家開催まで残り一ヶ月を切っていたのに。

無事に準備が間に合ったのは、裏でゲームの強制力たちが必死に働いたおかげだろう。


そのせいでゲームの強制力たちは疲労困憊になり、後の物語に大きな影響を及ぼすことになるのだが。



「——というわけだ。真相も分かったし、場所を移すぞ」


ハトの指示で、私たちは玉座の間を後にした。


「ちょ待てよ! 俺の扱いが雑すぎないか!」


ギャーギャー騒ぐエリック王子を無視して移動する。

なぜか、ハトの提案でエリック王子とミランダとセシリアも連れて行くことになった。


ハトに道案内され、私たちが向かっているのは——物語のエンディングの舞台である結婚式場。

ここに黒幕を誘き出すという作戦らしいのだが。

なぜ結婚式場なのだろう。

それに⋯⋯。


「あなた、エリック王子が真犯人じゃないっていつ気付いたの?」

「もしや、クロード様は最初から分かっていたのですか?」


私とクラウスさんの疑問に、ハトは首を振った。


「途中まではエリックが犯人だと思っていたよ。でも、あいつが罪を認めた時にさ⋯⋯気付いちまったんだ」


——そうだよ、俺がやった。もう好きに処分してくれよ。


「そう言った時のエリックがさ⋯⋯真っ青な顔して目が泳いでいたんだ。身内の俺ととーちゃんは気付いた。これ、追い詰められて嘘をついちまった時のエリックだって」

「「は⋯⋯?」」


ぽかんとする私とクラウスさんに、ハトは遠い目をして続ける。


「とーちゃんが『本来なら死罪』って忠告した時も、ビクッてなってたし。事情は分からねーけど、何か隠しているのだけは分かった。だから、仕方なく助け舟を出すことにしたんだ」


じゃあ、ハトがエリック王子の処罰を任されたのって。

エリック王子に真実を話すきっかけを作るためだったの?


「まあ、あの内容じゃ話せなかったのも分かるけどな」


ハトの言葉に、私とクラウスさんは顔を見合わせる。

確かに⋯⋯。最初に聞いた時は冗談を言っているのかと思った。

エリック王子も、そう思われることが分かっていたのだろう。


「でも、きっとあいつは嘘を言っていない。作り話であんなバカバカしい話を思い付くか?」


ハトの言葉に、私とクラウスさんはつい遠い目になった。


「まあ⋯⋯仮に思い付いても、あんな話で偽証しようとは思わないわね」

「だからこそ、逆に信憑性があると思ってしまった」


そんなことを話しているうちに、結婚式場へ到着した。

早いって。

玉座の間から歩いて三分くらいしか経っていない。


「シンデレラ・ガーデンってスマホアプリのゲームだから。移動がサクサク出来るように、建物や町はシンプル構造になっているんだ」


当然のように言うハト。


なんでゲームの設定が、現実世界にまで反映されているのよ。

そう思いつつも。

もはや驚かない私は、この世界の常識に慣れてきつつあるのだろう。


「それで、私たちはここで何をすればいいの?」


私の質問に、ハトが不思議そうに目を瞬かせた。


「何って結婚式だよ。だってここは結婚式場だぞ?」


一瞬耳を疑う。


「待って。ここへ来たのは、黒幕を誘き出すためじゃないの?」


思わず確認すると、ハトは真剣な顔で頷いた。


「そうだよ。黒幕の狙いは恐らく、俺の花嫁だ。だから、結婚式を挙げようとすれば、必ず邪魔しようと現れるはずだ」

「でも、命を狙われたのはあなただったのでしょう」

「いや、恐らく俺を狙ったんじゃない。俺の花嫁を狙ったんだろう。そして、黒幕の思惑通りになった。でも花嫁は⋯⋯ハトリーヌは俺の姿に変身していたから、犯人は俺を暗殺したと勘違いしたんだろう」

「⋯⋯ハトリーヌって確か」


クロードのペットのハトの名前よね。

でも、今ハトリーヌのことを花嫁って言ったわ。


「言うのが遅くなったけど、ハトリーヌは生きている」

「え?」

「あの子の正体はゲームの隠しキャラなんだ。諸事情があって、ハトに化けて身を隠していた」

「そ、そうだったの⋯⋯」


待って。この流れは知っている。


「そうなんだ。でさ、ハトリーヌも実は転生者で、この国に来た経緯っていうのが——」

「ちょっと待ちなさい! 立て続けに情報を流すんじゃない!」


なんでこのハトは、重要なことを世間話みたいな感覚で話すのよ!

理解が追いつかないわ。


「クロード様、もう少しペース配分を考えないと。ヘレンが混乱しています」


そう言うクラウスさんは、よくハトのペースについていけるわね。

私はついていくだけで息切れしそうなのに。


「悪かったよ。説明すると長くなりそうでさ。タイミングを考えていたら終盤になっちまった」

「だからって終盤に一気に流し込もうとするんじゃない」


えーと、つまり⋯⋯話を整理すると。

クロードのペットのハト——と思われていたハトリーヌの正体は、彼の花嫁だった。

諸事情があって、正体を隠すためにハトの姿になっていたと。


クロードの話では、事件があった日。

急に空を飛んでみたくなったクロードは、クラウスさんの魔法でハトに変身していた。

代わりに、ハトリーヌはクロードに変身していたため⋯⋯。

その時、部屋にいた『クロード』は、彼に変身したハトリーヌだった。


そして。


クロードに変身したハトリーヌは、枝豆ポタージュを口にして毒に倒れ⋯⋯。

彼女に黒幕探しを託されたクロードは、部屋の窓から脱出。

部屋を訪れた犯人は、クロードの姿で倒れたハトリーヌを見て、


「ハトリーヌじゃないわ! どうしよう、間違えて王太子を暗殺してしまった」


と勘違いし、慌てて部屋を出る時に、エリック王子と鉢合せたのだろうと。

そこからエリック王子の話に繋がるわけね。


「複雑すぎるわ! 言語化するより図解で説明した方がいいわよ」

「俺もそう思う。でも童話の製作と出張販売の準備で疲れていてさ。もうそんな元気は残っていなかったんだ。だから頑張って言葉で理解してくれ」


切実な声で言わないでよ。何も言えなくなるじゃない。


それで、そのハトリーヌさんは生きているということだけど。

どうやって暗殺を逃れたのか、なぜ命を狙われているのかは後ほど聞くとして。


「肝心のハトリーヌさんはどこにいるの?」


ハトに尋ねると、クラウスさんの方を羽で指し示された。


「そこだ」

「え?」


クラウスさんがローブをめくる。


「ハトリーヌ、もう出てきていいぞ」


ハトが呼びかけると⋯⋯ローブの内ポケットから、白いハトがもぞもぞと出てきた。

床に下りると、ハト(クロード)の隣へ歩いて行く。


まさか、このハトが?

ハト(クロード)と全く同じ姿の白ハトだ。

並ぶと見分けがつかない。


ていうか、ずっとクラウスさんのローブの中に隠れていたの! 全然気付かなかった。


「あなたが⋯⋯ハトリーヌさん?」


私の問いに、白ハトは頷いた。


「お初にお目にかかります。ハトリーヌと申します。隣国の王女で、祖国では白雪姫と呼ばれていました」

「白雪姫? それって、まさかあの『白雪姫』のこと?」


おとぎ話の白雪姫。

継母に命を狙われ、七人の小人に助けられ、最後は王子様によって救われるという。


ハト(クロード)が頷いた。


「シンデレラと同じ、おとぎ話のヒロインだな。ユーザーからは隠しヒロインとも呼ばれていた」


それ別のおとぎ話のヒロインじゃないかー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ