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作戦会議はサクッといこう

白菜の馬車とハトのおふざけ話で時間を食った後——ようやく作戦会議に入った。


そう言えば、ここにきてまだ具体策を聞いていない。

足認証システムとか、シンデレラローラー作戦とか、いつ出てくるのかしら。


「明日まとめて出てくるぞ。多分最後はサクッと終わる」


⋯⋯はい?

私とクラウスさんは目を丸くした。

あんなに色々裏や表で準備したのに、サクッと終わるだと?


「どんなイベントも、一番大変なのは事前準備だ。本番なんて、あっという間に終わるものだぞ」


いや、そうかもしれないけど。

自分たちの命運がかかっているんじゃないの?

このハトは、なんでクライマックスを前に、こんなのほほんとしているんだ。


不安に思いながらも、ハトの次の言葉を待つ。


「まず、今夜の舞踏会でヘレンがやることは一つ。帰りに片方のガラスの靴を落としてくること」

「それって、ガラスの靴で私のことを探させるために?」


ハトが頷く。

そこは童話のシンデレラと同じなのね。

国中の女性にガラスの靴を履かせて、私を探すなんて⋯⋯考えただけで、気の遠くなる捜索方法だ。


でも、私の家の場所をエリック王子は知っている。

それなのに、わざわざそんな手間のかかる方法を取るのはなんでだろう。


「昨日の『魔法使いとは?』の話でちょろっと言っただろう。ヘレンは多くの妃の一人になるのが耐えられずに、行方をくらますんだ。そこで確定イベント『ヘレンを探せ!』が起こる」


そのまんまのタイトルね。

でも、それなら普通に探せばいいんじゃないかしら。

わざわざガラスの靴を、女性一人一人に履かせるなんて⋯⋯。


「『ヘレンを探せ!』が起こると、国中の女性がみんなヘレンになるんだ。大勢のヘレンたちの中から、本物のヘレンを探す大捜索イベントが始まる」

「は?」


今、このハトはなんて言った?


「ここでヘレンの好感度が足りないと、違うヘレンがガラスの靴を履いちゃってゲームオーバー。好感度が足りていれば、本物のヘレンが靴を履いてハッピーエンドだ」


待て待て。話についていけない。


「万が一にも好感度が足りなかった時に備え、エリックは本物のヘレンしかガラスの靴を履けないように細工をした。俺がクラウスに指示して、足認証システムに書き換えたけどな」

「ちょっと待てい! まずは話を整理させなさいよ!」


情報量が多くてついていけないわ!

まず国中の女性がヘレンになるって何!?


「それも『魔法使いとは?』の話でちょろっと言ったじゃん。ヘレンのハーレムルートで怪奇現象が起こるって」

「なんでそんな現象が起こるのよ」

「それはな⋯⋯」


言いかけて、ハトがぶるっと体を震わせた。

いきなりどうしたのかしら。


「ゲームのヘレンはな、メインヒロインなだけあってかなり可愛いしスペックも高い。しかも王子に一途な女の子ってことで、初見は誰もが推しになる」

「へ、へえ⋯⋯」


なんだか、妙にこそばゆい気持ちになる。

ハトが言っているのは、あくまで〝ゲームのヘレン〟の話だけれど。


「だが、ハーレムルートのヘレンを見たプレイヤーたちはこう言う。攻略難易度が鬼畜レベルのヒロインだと」


攻略難易度が鬼畜レベル?

そういえば、ハトがそんなことを言っていたっけ。



——メインヒロインはヘレンっていう、攻略難易度が鬼畜レベルの女の子。



言葉からして、攻略がものすごく難しい女の子って意味かと思っていたけど。

ハトが片方の羽を左右にぶんぶん振って否定した。


「いや、『こんな鬼畜レベルなことしてくるヒロイン、怖くて攻略できねーよ!』っていう意味の言葉」

「どういう意味よ!」

「だって、怪奇現象の発動理由が意味分かんねーんだもん」


ハトが小さく体を震わせながら言った。


「ゲームのヘレンはな、王子を他の女性に取られたくなくて、こう思った——」


『この国の女性が私しかいなくなればいいのに⋯⋯』


ヘレンのそんな思いが具現化して、〝国中の女性がヘレンになる〟つまり〝この国の女性がヘレン(私)しかいなくなる〟という怪奇現象を起こすのだと。

発想の方向も展開もおかしいでしょうが!


「この世界の人間はどうなってんのよ!」


突然変異の魔法使いといい、怪奇現象を起こすヒロインといい。

あれか。私も突然変異で怪奇現象の能力者に目覚めるのか!


「俺に怒るな。あと、これは運営の遊び心で実装されたミニゲームだから」

「ミ、ミニゲーム?」

「運営的にはユーザーにウケると思ったんだろうな。クリアしないと先に進めないから、実際には大不評だったけど」


え⋯⋯。

まさか、勝負の決め手になるのって、運営の遊び心で生まれたミニゲームなの?


ハト曰く、このミニゲームがきっかけで、ヘレンは『ヤンデレラ(ヤンデレのシンデレラ)』として恐れられるようになったのだという。

トラウマになるプレイヤーがいる一方、自分に執着するヒロインが好きなプレイヤーからは根強い人気を獲得した。

エリック王子も、どうやらその一人らしい。


頭が痛くなってきた。

この白菜一色の国が、明日は私一色になるの?

私一色になるってなんだ!


「——その現象は収まるのですか?」


頭を抱えていると、クラウスさんがハトに質問した。

今の頭のおかしい話を聞いて、全く動揺していないことに驚く。

さすがはクラウスさんだ。


「制限時間がきたら元に戻ると思うぞ。一時間くらいで」


結構長いな! ミニゲームの制限時間だったら、もっと短いはずじゃないの!


「最初は十五分だったんだよ。でも、タイムオーバーでクリア出来ないプレイヤーが多くてさ。『ミニゲームのせいで先に進めねーよ』って要望が殺到して、アプデで制限時間が伸びた」


プレイヤーからは、『そっちじゃねーよ! ミニゲームをクリア必須にするのやめれって意味だよ!』と更なる不満が続出したとか。


なんで頑なにミニゲームを外さなかったし。


「運営の謎の拘りだ。無駄に頑張って作り込まれていたから、外したくなかったんだろう」


いや、頑張るのはそこじゃないでしょう。

なんでオマケ要素のミニゲームに力を注いでいるのよ。

それに、いくら制限時間付きでも怖いわよ。他人を自分に変えてしまう能力なんて。


「そ、そんな力が私から発現するなんて⋯⋯」


青くなっていると、クラウスさんにそっと抱き締められた。


「ヘレン、無理に協力しなくてもいいからね」

「クラウスさん⋯⋯。でも、それじゃあ⋯⋯」


今までやってきた作戦が全て水の泡になるではないか。

そんなことになったら、クラウスさんとハトは⋯⋯。

私の運命だって掛かっているのに。


「いざとなったら、君は殿下と逃げてくれ。エリック王子は僕が足止めするから」

「何を言っているんですか! そんなことになるなら、私も一緒にぎゃぁぁ!」


ハトが飛び上がり、左右の羽で私とクラウスさんの頭にチョップを叩き込んできた。


「おまえらぁぁ! この物語をシリアスな方向へ持っていこうとすな! あとな、俺だってそんなヤバすぎる能力だったら、さすがに使うのを躊躇うわ!」


怒り心頭でハトがツッコミを入れてきた。

ど、どういうこと?

私とクラウスさんは頭を抑えてハトを見つめる。ちなみに、羽でチョップされたので大して痛くなかった。


ハトはやれやれ、と地面に下りて溜息をつく。


「恐らくだけど、女性たちは本当にヘレンになるわけじゃないと思うぞ」

「「え?」」


ぽかんとする私とクラウスさんを見て⋯⋯。

ハトがなぜか、チベットスナギツネのような遠くを見る目をした。


「明日になれば真実が分かる。ヒントは『ゲームの強制力』な。——はい、じゃあ明日の作戦を総まとめで話すぞ」


某小学生探偵アニメの次回のヒントみたいに⋯⋯。

そして急に雑な感じでまとめに入られた。


「今夜の舞踏会で、ヘレンは片方のガラスの靴を落としてくること。そして明日は——」


・国中の女性がヘレンになる。ガラスの靴を履かせて本物のヘレンを探す『ヘレンを探せ!』イベントが起こる。


・足認証システムにより、あらゆるヘレンが「8931」のパスコードを入力してガラスの靴を履き、お城へ一気に招かれる。


・ヘレンの大群を、◯の谷のナ◯シカの◯蟲の大群の如く、エリックにぶつける。


・城の混乱に乗じて、国王にクロード(※ハトの真の姿)が面会する。


・自身の生存とエリックの暗殺未遂を国王に話し、王太子の地位を奪還する。


「——とまあ、作戦は以上だ」

「私の扱いがひどくない!?」


て言うか、ハトの姿ならこっそり城に潜入して国王に会えたよね?

疑問を口にすると、ハトが首を振った。


「とーちゃん⋯⋯国王はずっと城を空けてたんだ。明日の昼頃に帰ってくる」

「城を空けるって、あなたが暗殺されかけて三ヶ月も経っているのに、何をしていたの?」

「隣国の王との会談があって、国を出ていたんだ。会談中にぎっくり腰になって、全治三ヶ月の診断を受けて入院してた」

「⋯⋯」


ぎっくり腰で入院した時期と、ハトが暗殺されかけた時期がきれいに被ったらしい。

そんなことある?

そして、腰がようやく完治したから、明日の昼に帰ってくると。


後は、ハトがなんやかんやで上手くやるとのことだ。

色々ふわっとしていて不安しかないが、もうやるしかない。


気合を入れていると、ハトがポツリと言った。


「最後に、おまえに伝えておくべきことがある」

「何?」


もうこれ以上、何を言われても驚かない。


「昨日の夜、おまえに渡した磁気サポーターなんだけど」

「クラウスさんの〝魔法の磁石〟が入った磁気サポーターよね。よく効いたわ!」


ハトの言った通り、効果覿面だった。

一晩で足の痛みも疲労も引くなんて、すごいアイテムだ。

喜んでいると、クラウスさんとハトが、なぜか複雑そうに顔を見合わせ⋯⋯。


「ヘレン、あれなんだけどね」

「?」


クラウスさんが何か言いかけ、気まずそうに言葉を切る。

首を傾げていると、ハトが代わりに口を開いた。


「魔法の磁石っていうのはな、〝魔法で作った普通の磁石〟って意味だから」

「は?」

「だから、あれには市販の磁気サポーターと同じ効果しかねーんだ」


待て、確かハトはこう言っていた。


——これを足に付けて寝れば、一晩で疲労が回復するはずだ。


「ああ。冗談で言ったら、本当に一晩で回復していたからびっくりした。おまえのスペックやべーな」

「そこになおれぇぇ!」


激昂する私に、ハトが大慌てで飛び去っていった。

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