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魔法使いとは?

「突然⋯⋯魔法の力に目覚めた?」


ハトの言葉に引っ掛かりを覚えた。

どういうこと? 魔法って、生まれつき備わっているものじゃないの?


「ハト——じゃなくて王太子殿下。クラウスさんが突然魔法の力に目覚めたってどういうことなの?」

「この世界の魔法使いはな、突然変異みたいなものなんだ。クラウスも少し前までは普通の人間だった。ある日突然、魔法の力が覚醒して、周囲から怖がられるようになっちまったんだ」


クラウスさんを見ると、小さく頷いた。


「殿下の言う通りだ。未だに発症原因は分かっていないから、どうしようもなくてね」

「そうだったんですか」

「でも、殿下はそんな私を変わらず慕ってくれた。他の魔法使いたちも、才能を活かせるようにって、王宮に新たな部署である魔法部署(王太子専用)という新たな職場まで作ってくれたんだ」


何そのめちゃくちゃいい話。

ハト呼ばわりしてごめんなさい。すごく立派な王太子様だわ。

(王太子専用)というのが、ちょっと気になるけど。


「どんなお仕事をする所なんですか?」

「殿下が勉強に疲れた時、または宿題を後回しにして遊びに来た時、殿下の望む、魔法を活用した催しやイベントを実現するための部署だよ」


私の感動を返せ。

さっき言っていた『勉強サボって遊んでた時に怒られないようにするため』に力を使ったってこれかい!


「俺は子供の頃からさ⋯⋯空を飛んで手から気功波を出したり、巨大化して怪獣と戦ったり、華麗な飛び蹴りで怪人を倒すヒーローに憧れていたんだ。でも運動が大嫌いだった。魔法を使えば、そんな俺でも夢を叶えられるんじゃないかと思ってさ」


やはりこの王太子はアホの子か。


「もっと世の中のために活かしなさいよ」

「活かせるはずだ! 俺のように、ヒーローには憧れるけど、敵と戦うのは怖いから嫌だという人は、世の中にきっとたくさんいる! だから、ヒーローになった気分だけが味わえる魔法テーマパークを作って、魔法使いと俺みたいな多くの人が楽しく生きられる拠り所を作りたかったんだ」


でも、それは叶わなかった⋯⋯とハトは悲しげに目を伏せる。

その目には無念の涙が滲んでいた。


「俺はエリックに殺されかけ、身を隠して三ヶ月もの時を生きてきた。せっかく作った魔法部署(王太子専用)もエリックに奪われちまった」


そんな⋯⋯じゃあ、他の魔法使いさんたちは⋯⋯。

クラウスさんのように、エリック王子に利用されているってこと!?

ハトが瞳からぽろぽろ涙をこぼしながら、クラウスさんを見た。


「俺が頼れる人間は、もうクラウスだけなんだ。もしクラウスに何かあったら⋯⋯」

「殿下⋯⋯」


クラウスさんが膝をつき、ハトの頭を撫でている。

何だかんだ、この二人は信頼し合っているみたいだ。

私には推し量れない絆が、この二人の間にはあるのかもしれない。


「クラウスさんのことを、頼りにしているんですね」

「当たり前だろう!」


あの軽薄なハトが、ここまで感情を露わにするなんて。

クラウスさんを慕っているというのは本当なのね。


「——他の魔法使いたちはみんな寿退社しちまって、もう魔法部署(王太子専用)の職員はクラウスしか残ってねーんだ。俺にはもう、クラウス以外に頼れる戦力がいないんだよ」

「⋯⋯は?」


寿退社? もうクラウスさんしか残っていない?


「じゃあ、他の魔法使いさんたちは?」


涙を拭い、ハトがコテッと首を傾げる。


「え? みんな元気にやっているぞ。たまに手紙のやり取りするけど、実家の農家を継いだり、夫婦でお店を開いたりして、ご家族と幸せに暮らしているってさ」

「⋯⋯」


ものすごくモヤモヤした気持ちになったじゃない!

このハトの話は、真面目に聞いたらだめだ。


「はい、じゃあ今夜の十時から舞踏会へレッツゴー。エリックの気を頑張って引け。俺はガラスの靴のパスコードをこの辺り一帯に広め、シンデレラローラー作戦の日に大混乱を引き起こす」


急に切り替えるな。

あと、ずっと疑問に思っていたことがある。


「エリック王子って、私の家の場所を知っているわよね。なのに何でわざわざローラー作戦なんてやるの?」

「あー、やっぱそこ気になるよね」


ハトは羽で後頭部を掻く仕草をした。

なぜか言うのを躊躇っているようだ。


「これはヘレンのハーレムエンドで起こるイベントなんだけどな。舞踏会の翌日。多くの妃の一人になるのが耐えられないヘレンは、行方をくらますんだ。すると、ある怪奇現象が起こる」

「怪奇現象?」

「ヘレンが確定で起こしてくるイベントなんだけどさ。すげーバカみ——詳しくは舞踏会の最終日に話すよ。俺の予想だと、多分これがおまえの転生ボーナスじゃないかと思う。ある意味ヘレンを象徴する能力だから」


よく分からないが、何か考えがあるらしい。

嫌な予感しかしないけど。

私は言われた通り、夜の十時に再び白菜の馬車で舞踏会へ行ったのだった。

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