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どんな力も使い方次第

「あーそうそう。かぼちゃのパイで思い出した。シンデレの馬車の件なんだけど(やべー羽にめっちゃパイ生地付いたわ)」


まだ食べていたのか。

そして今度は何が飛び出すのよ。


「俺をびっくり箱みたいに言うな。おまえが乗った白菜の馬車な、町中で密かな話題になっているぞ」

「は?」

「深夜に町中を巨大な白菜が走って行って、住人の皆様は困惑していたらしい。でも、その白菜の馬車には美しい女性が乗っていて、王子様に見初められたという話が密かに広がっているんだ」


なんですって⋯⋯。

たったの一晩でそんなことになる?


「殿下、それはまさか⋯⋯」


クラウスさんがはっとした顔でハトを見る。


「ああ、おまえに今朝出版してもらった『白菜の馬車に乗るシンデレラの童話』が、女性を中心に売れまくっているそうだ。副次効果により、生鮮野菜を取り扱う店では、白菜が縁起物として飛ぶように売れているらしい」

「まさか、このことを見越して」

「いや、白菜の目撃騒動に便乗しただけ。そしたら怖いくらい事が上手く運んで、体がめっちゃ震えてる」

「ちょ、ちょっと待って! 一体何の話!?」


慌てて話に割って入る。

『白菜の馬車に乗るシンデレラの童話』って聞こえたんだけど。


「昨晩のうちに、クラウスに頼んでシンデレラの童話を書いてもらったんだ。かぼちゃの馬車を白菜の馬車に、ラストを「8931」のおまじないを唱えてガラスの靴を履くシーンに書き換えてな。それを明け方に出版社へ持って行ってもらった」

「殿下の命令で、『自費出版するので店頭に並べてください』とお願いもしたんだ」


だから何させてんのこのハトは!

しかも今、明け方って言わなかった。


「クラウスさん、まさか昨日から寝てないんじゃ⋯⋯」

「ああ、いや、大丈夫。最近は朝早くに目が覚めるようになったから」

「それ分かる。俺の(前世の)とーちゃんも、年取ってから朝早くに目が覚めるようになったって言ってた」

「⋯⋯」


やめれ。クラウスさんがちょっと凹んでるじゃない。


「だからクラウスと一緒に貫徹してさ——ぐえぇっ!」

「つまり寝てないってことでしょうがー!」


何してんの、このハトは。

怒ってハトを両手で掴み上げると、羽をバタつかせて暴れ出した。


「睡眠はちゃんと取りなさいよ、クラウスさんもハトも! 不規則な生活の代償は、歳を重ねた後に一気に来るわよ」

「おまえ中身はいくつだぁぁ! お願いクラウスゥゥ助けてぇぇ!」

「ヘレン、放してあげて」


クラウスさんに言われ、しぶしぶ手を放す。

ハトは急いでクラウスさんの背後に隠れた。

なんとも情けない王太子だ。


「クラウスさん、やけにそのハトに甘いですね」

「悪いお方ではないんだよ。自由奔放ではあるけど、世間では聡明な人格者として知られているからね」


なんだそれ。

聡明さや人格者な要素なんて、欠片も見つからないんだけど。


「俺もびっくりしたよ。テキトーな思いつきでやったことさえ、周りからは〝聡明で人格者な王太子〟の振る舞いとして映るんだから」


ハトがクラウスさんの背後からそっと顔を覗かせる。


「エリックに立場を奪われて弱体化しているが、俺には転生ボーナス『聡明かつ人格者な王太子』に映る主人公補正があるみたいなんだ。俺のやること成すこと全て、この世界の人間には〝何か考えがあるんだ〟〝さすがは王太子殿下だ〟という風に思われてしまう」

 

⋯⋯地味にやっばい能力だと思うんだけど、それ。

要は周囲の認識を書き換える力ってことよね。

私やエリック王子のような同じ転生者には効かないようだけど。


ハト曰く、エリック王子の転生ボーナスは『女性が憧れる理想の王子様』に認識を書き換える力らしい。ちなみに男性には効果がないとのこと。

そして私にも、何かしらの転生ボーナスがあるかもしれない、とのことだ。


「どっちの王子様の力もやばいわね」

「別に力は関係ないだろ! エリックを見ろ。『女性が憧れる理想の王子様』に見える力を悪用して、女を口説きまくってる。俺が意図して使ったのは、勉強サボって遊んでた時に怒られないようにするためだけだ。結局は力を使う奴の問題じゃないか」


ベクトルが違うだけでどっちも駄目だろ。

でも、ハトの言葉でふと思い出した。


『〝力〟を恐れるっていうのは、私にはよく分からないですね。悪いことに使えば悪い力になるし、善いことに使えば善い力になるでしょう。結局は使う人の問題じゃないですか?』


『あはは、ある人からもそう言われたなぁ。君は面白い子だね』


——初めて会った夜、クラウスさんが言っていたことを思い出す。

ちらっとクラウスさんを見ると、笑って頷かれた。

そうか、このハト⋯⋯王太子がクラウスさんの言っていた〝ある人〟だったのね。


「クラウスには感謝しているんだ。初めて会った時から、俺の我儘にいっぱい付き合ってくれたからな。本当にいい奴だよ。⋯⋯突然魔法の力に目覚めた時だって、こいつは一度だって悪いことに使わなかった」


急に真面目になったハトに戸惑いつつ、つい感じ入ってしまう。

でも、ハトの最後の言葉が引っ掛かった。


「突然⋯⋯魔法の力に目覚めた?」

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