第十三話 天音の証言:後編
天音の言葉が途切れた茶屋には、重たい沈黙が落ちた。
団子の甘い香りさえ、どこか遠くに感じられる。
「……マジ?」
伽耶は串を握ったまま固まり、心の中で呟く。信じたい気持ちはある。けれど、証拠も根拠もなく、ただの傍観者にしかなれなかった。
六は静かに頷き、ゆったりとした声で答える。
「天音さん。話してくださったこと、しっかり受け止めました」
その目は優しかった。だが次の言葉は現実的で冷たい。
「……ですが、伽耶さんを現世へ帰すという目的と関わりのないことで、仲間を危険に冒す理由はありません」
天音の表情がぐっと曇る。
「人間が鬼に使われるなど、珍しくもない」
おもとは団子をもぐもぐと食べながら、さらりと言い放った。
「弱い者は強い者に使われる。それが世の理じゃ。それより、この団子、なかなか美味いのう。良い所に案内してくれた」
「ちょっ……一言多くない!?」
伽耶が思わず声を張り上げる。けれど、おもとはまるで気にしていない。
天音は唇を強く噛み、拳を膝の上で握りしめる。
「……やっぱり、誰も……助けてくれないよね……」
その小さな声は、茶屋のざわめきに溶けるように消えていった。
六は言葉を探すように天音を見つめ、伽耶は居心地の悪さに視線を泳がせる。
おもとは空になった串を机に置き、相変わらず平然としている。
重たい空気だけが、その場に残った――。
伽耶はただ俯いて串を握りしめたままだった




