第十一話 ひとつ屋根の下で
翌朝。布団から起き上がろうとした瞬間――。
「いでででででっ!! う、動けない……!」
伽耶は畳の上でロボットのようにぎくしゃくと動きながら、顔を歪めた。
「昨日の山道で無理をしましたからね」
六は淡々と茶を淹れながら言う。
「……情けない」
おもとは座布団に座ったまま一言。
「今それ言う!?マジで心に刺さるんだけど!」
六は薬草を包んだ袋を差し出した。
「煎じれば痛みも和らぎますよ」
「六さんって万能すぎ……」
伽耶は涙目で受け取り、玄関に並べてある草鞋を思い出しては恨めしそうにため息をついた。
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その日の昼。
「ほら、おもとちゃん、もっと食べなきゃ」
説子はおかずをよそい、おもとの隣にちょこんと座った。
「……別に、腹は減っておらん」
おもとはそっけなく答えたが、箸はちゃんと動いていた。
食後、説子は櫛を手に取り、おもとの背後へ回る。
「少しじっとしてなさい。髪がこんがらがってるよ」
「や、やめよ……」
頬を赤らめて顔を背けるおもと。けれど抗わずに座ったまま。
癖っ毛に櫛の歯がひっかかるたび、おもとは痛そうに眉を寄せる。
説子はそっと微笑んで言った。
「本当に……二十年前と変わらないねぇ」
その声に、おもとの瞳がかすかに揺れ、次第に肩の力が抜けていく。
その横顔は、不思議と安心しきった子どものようだった。
「完全に親子じゃん……」
伽耶は箸を置き、ぽつりと呟いた。
説子は微笑みながら櫛を置き、おもとの肩をそっと叩いた。
「仲間になってくれた誠の理由は、団子ではないようですね……」
六が微笑む
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夜。
布団の上でごろごろしていた伽耶が、おもとを睨む。
「……ねえ、おもとちゃんってホントに妖なんだよね」
「説子もワシに“ちゃん”を付ける!“ちゃん”ってなんじゃ?」
「え?知らないの?可愛い子には“ちゃん”って付けるんだよー」
「は?!ちゃんって言うな!」
六は読んでいた書物を閉じ、静かに微笑んだ。
「にぎやかですね」
「私は筋肉痛で笑う余裕ないんですけど!」
「……情けない」
「だからそれやめろって!」
部屋には笑い声と、どこか温かい空気が流れていた。




