表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/59

第十話 説子との再会

「説子さんが待ちわびていますよ」

 六が柔らかな声で言う。


「……会いたい」

 おもとは小声で独白した。



 ⸻⸻⸻



 おもとを伴い、ようやく山を下りた伽耶と六の三人は説子の宿へと戻ってきた。

 下山する前に、おもとは大切に仕舞っていたワンピースにそでを通していた。二十年前、説子からもらったものだという。今まで着なかったのは「大事にしていたから」――それだけで、おもとの胸の内が伝わってくるようだった。


 戸口をくぐった瞬間、説子は目を見開いた。

「……おもとちゃん!」

 駆け寄るや否や、子を抱きしめる母のようにおもとをぎゅっと抱きしめる。


 おもとは恥ずかしそうに眉をひそめたが、その瞬間だけ、ほんのわずかに目尻が緩んだ。抗わずにそのまま抱擁ほうようを受け入れる。


「ずっと会いたかったんだよ……」

 説子は涙を流す。そしておもとを抱きしめたまま伽耶たちを見た。

「二人が連れてきてくれたんだね!ありがとう!ありがとう!」


 しばらくして二人は落ち着き、懐かしげに言葉を交わす。説子は途切れなく思い出を語り、おもとは小さく相槌を打つだけ。それでも、二人の間には確かな絆があった。


 やがて二階の部屋に戻った伽耶は、ずっと気になっていたことを口にした。

「ねえ六さん。なんで用心棒になってって言わなかったの?」


 六は穏やかに笑みを浮かべた。

「突然“力を貸せ”と言って、はいそうですかと付いてはきませんよ。まずは説子さんに会わせること。それでおもとさんの心を和らげる必要があったのです」


「……え、六さんって策士キャラだったの?」

 伽耶は思わず内心でつぶやく。冷静なだけじゃなく、人の心まで読んで動くなんて――やっぱり底が知れない。


 下で談笑を続けていたおもとだったが、ふいに階段を上がってきた。

 部屋に入るなり、じっと二人を見据える。


「おい。お前ら……何か企んでおるな?」


「え、ちょ、何のこと!?」伽耶は慌てて返す。

「説子と会えたのは嬉しい。だが説子はずっと喋っておるし、聞くのが疲れた! それにお前らだけでこそこそ話している! 怪しすぎる!」


 ぷんぷんに怒っているのに、どこか可愛らしい。

「やばい……怒ってるけど可愛い……」伽耶が小声でつぶやく。


「静かに」六は真顔で伽耶を制した。

「戦いになれば一瞬で我々は消し炭です。弓の用意を」

「え、えぇぇ!? そういう流れ!?」


 六はまっすぐにおもとを見つめ、静かに告げた。

「おもとさん。どうか、私どもの仲間になってください。伽耶さんを現世へ帰すための旅路――あなたの助力が必要なのです」


 おもとは無表情のまま、黙り込んだ。十秒、二十秒……。

 「……お団子とか……おにぎりとか……美味しい物がたくさん食べられるよ……」

 沈黙に耐えきれなくなった伽耶が、意味不明な言葉を口走る。


 重苦しい沈黙の中、突如――ぐぅぅぅ、とおもとのお腹が鳴った。


「……団子ぉ……?」


 小声で呟いた瞬間、おもとは伽耶に凄まじい勢いで迫る。

「……団子……食えるのか?」


「え、ああ、まぁ……でも仲間になってもらわ……」

「いいよ」

 伽耶が言い終わる前におもとが即答した。


「……へ?」


「では、団子を買いに行きましょうか」

 六がクスッと笑い、さらりと言う。


「ちょ、そんな軽いノリで仲間増えるの!? 契約とかないの!?」

 伽耶は全力でツッコんだが、六の余裕ある笑みを見て、確信せざるを得なかった。


 ――こうして、おもとは仲間に加わることになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ