表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/8

【第四話】その笑顔が一番怖い

私は新たな任務を拝命していた。


「これからは、業務中も水分補給を欠かすな」


と、リュシアン王子がきっぱり言ったのだ。


「えっ……えっ……?」


私は混乱した。

というか、メイドの業務内容に「水分補給義務」なんて聞いたことがない。


「は、はい……水筒でも持ち歩けばいいでしょうか?」


「それでもいいが、こちらで用意したものを優先しろ」


そう言って、リュシアン王子は控え室のテーブルを指差した。


そこには——

高級ホテル並みに整ったティーセット、

魔法で温度管理されたフルーツウォーター、

そして、煌めく氷まで完備された銀製の水差し。


(……え、なにこれ?)


私は思わず絶句した。


「すぐに飲めるよう、執事らに手配させた」


王子は当然のように言う。

いや、当然じゃない。

全然、当然じゃない。


私の仕事を奪わないでほしい。


(……使用人の水分補給に王宮のリソースを使っていいの?)


私は喉を鳴らしながら、脳内でまたもや恐れていた。

あとでいくら請求されるのか。


恐怖で震える指先を見られたのか、リュシアン王子はひと言だけつけ加えた。


「費用はすべて、俺の個人負担だ」


「——えっ!?」


私は変な声を出してしまった。


「いいから飲め。命令だ」


王子はあくまで静かに、だが逆らえない圧で命じた。


(め、命令って言われたら、もう従うしかない……)


こうして私は、

「水分補給義務」というよくわからない新業務を追加されることとなった。


一方、リュシアン王子は——

なぜか少し、嬉しそうだった。


(なに?もしかして、私を動物か何かだと思ってる……?)


そんな疑念がよぎったが、言えるはずもない。


こうして今日も、

私フィオナ・ウィンスレットは、

恐怖に怯えながら高級フルーツウォーターを飲み干すのであった。


──続く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ