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第九話 モテ期到来。つまみ食いたい。

前話の後書きを修正しました。

レイジとレイネの名前の由来をメモ帳から引っ張って来たので気になる方はご確認下さい。


 いつだったかフィアの森の奥地で魔物を狩ってた時にバキッ! って音がしたと思ったらガントレットにでっっけえヒビが入ってたんだよな。それも左右両方。


 使いもんにならねえ武器は邪魔なだけ、そん時はすぐに装備を外してマジックポーチに突っ込んで……それ以来出して無えや。


 おっさんがすんげえ顔で怒鳴っているがスルーだ。俺にはどうしようも無い。



 アダマス鉱石は硬度が高いばっかりに割れる時にはパッキリと割れちまう。

 おっさんはその弱点を独自の技術で以って破格の靱性を与えて消しているのだが、そもそもの耐久度が足りない。


 おっさんの言う通り規格外の魔物素材を使わねえと俺に合う武装は出来ないんだろうな。



 因みに、おっさんのアダマスで槍や剣、他にも色んな武器を作ってもらったが、そもそも武器が其処まで好きでは無いので死蔵されている。


 因みに因みに、おっさんにアダマスを卸しているのは俺だ。昔ダンジョンの深い所であるだけ掻っ払ったアダマスがポーチにまだそこそこある。それを少しづつ卸している訳だ。それ故の付き合いだったりする。



 俺がお説教を聞き流していると奥からおっさんの嫁さんが顔を出してきた。

 おっさんの嫁さんはおっさんに勿体無いくらいの別嬪ドワーフだ。


 身体は弛む事なく引き締まっており、背丈は高く無いが胸はある。快活に笑う笑顔が印象的な婦人だ。


「レイジさん! あの子ら十三って本当かい? わたしの見立てじゃあ十五だ。もし十三ならまだ良い素材で装備を作るのは勿体無いよ?」


「はっ!? 十三って本人は言ってたぞ!? どういう……孤児院か。物心つく前から居たんだとしたら年齢が一つ二つずれても仕方ねえ」


「成る程ね……だとしても装備作るなら安価なもんにしときなよ? まだ伸び代あるよあの子ら。背丈もお胸もお尻もね!」


「それなら、フィアの中層程度の素材が余ってた筈だからそれで頼む」


「……ふぅ〜ん。身を固めるには良い年頃さね。誰か一人を選ぶのか全員もらうのかちゃーんと決めておくんだよ!」


 余計なお世話、と言うには関係を持ち過ぎたか。


 愛は無くても情は湧く。冒険者としての伸び代も感じさせるあいつらを埋もれさせるのは惜しい。


 いつかあいつらが俺に侍りたいと言ってきたらその時は受け入れようかね……?



 何にせよ、やるべき事は終えた。

 採寸が終わってぐったりしながら戻ってきた三人を連れて、説教垂れるおっさんに補修用アダマスを置いてから宜しく行って工房を出る。


おっさんは(・・・・・)セクハラしねえって言ったからな?」


「聞いてないわよ……レイジ以外の人にいっぱい揉まれちゃった……」


「私もいっぱい触られた……年齢も違うかもって」


「私もですぅ……もう疲れました。年齢なんてどうでも良いです……」


 共感は出来ないが同情はする。

 だが、しっかりと採寸されるからこそ、作られる装備のフィット感は段違いだ。

 『ワシの工房』の装備を着ちまったら他の装備は違和感しか感じないかもしれないな。


「やるべき事は終わった。宿に戻って装備を着たらギルドの訓練場に行くからなー」


「「「はーい……」」」


 宿に戻ると、レイネが「上書きして〜」とふざけながら科をつくって来たので、三人の身体を触って揉んでまさぐってしっぽり上書きしておいた。


 訓練前から体力を消耗した三人が馬鹿を見るのはそう遠く無い未来だろう。



◆ ◆ ◆



 ミニアとケイアにはしっかりと装備を着込ませ、レイネには運動用の格好をさせてから、冒険者ギルドの扉をくぐる。


 俺に求婚してきた受付嬢はいつも通りに受付で仕事をこなしていた。


 だが、ギルドに来て最初にやる事は決まっている。


「お姉さん、柑橘——」


「——あいよ! 柑橘ジュース四杯!」


 なん……だと!? 一体いつから準備していた!? いつ絞った!!


「やるじゃねえか……さすがお姉さんだ」


「あんっ」


 賞賛を込めた銀貨をお姉さんの胸ポケットに入れると同時にお胸を指で堪能する。

 すまないなお姉さん。これが俺に出来るお礼だ。


「あんなにしたのに……へんたいレイジ」


「男はみんな変態だ。それにこれは何時ものあいさつだ」


「セクハラを良しとした覚えは無いわ。レイジさんだけの特別サービスよ?」


「気をつけろお姉さん。俺は食うだけ食って食い散らかすかもしれんぞ?」


「あっはは! それはそれで良いかもね!」


 なんて良い女なんだお姉さん……! 最後のウィンクに心を奪われそうだ。


 数日前にこうなっていたら良かったのだが、今は女が三人横から抓ってきているのでまた折を見てだな。


「とりあえず頂くか、お姉さんの搾りたてドリンク」


「召し上がれ?」


 最高だわお姉さん。宿で発散して無かったら危なかったな。


「ごくっごくっごくっごくっ……クハーッ! これなんだよな〜! 目が覚めるぜぇ!」


 今日はミニケイの二人はお淑やかに飲む様だ。


 だが俺の見込んだ女レイネはやはり同類。

 腰に手を当てての良い飲みっぷり。こっちも良い女だわ。


「これ美味しい! 毎朝飲みたいわね!」


「分かってんな、流石俺のレイネだ! 柑橘の甘味と酸味が寝起きに良いんだわ〜」


「わかるぅ〜! これ飲むためだけにここに来たいくらい!」


「「いぇ〜い」」


 今俺はレイネと通じ合っている。

 物理的に繋がるのとは全く違う精神的充足感。


 悪く無い。いや……良い気分だ。


 俺たちの姿を見て、ミニケイの二人も腰に手を当てて一気飲みし始めた。

 こう言う素直なところが可愛いらしい。


「「ぷは〜……」」


「良いじゃないの。そういう所、嫌いじゃないぞ」


 手を二人の顔ぐらいの高さに出してハイタッチする。


 ……パーティっつうのはこう言う連帯感を味わえるものだったのか。冒険者歴十年も経って初めて知ったぜ。


 俺たちが確かに絆を深めていると、俺の真横で柑橘ジュースを頼む声。

 それに応えて爆速でジュースを作るお姉さん。


 その声の主は、昨日の求婚受付嬢だった。


「よう。気分はどうだ?」


「最悪ですけど最高です。貴方を見つけたら一言言いたかったのに……なかなかこの熱は冷めてはくれない様でして」


「ほーん。なかなか厳しい人生になっちまうぞ?」


「それもまた悪くは無いかと。なんなら冒険者に復帰しても良いかなって」


「ふぅ……俺の周りには良い女しか居ないのか?」


「貴方だから良い女が寄ってくるんです。偽悪的な超人さん。私達が何度貴方に助けられているか、知らないなんて言わせませんよ?」


 特に助けた覚えは無いんだが、どいつもこいつも肝が据わってやがる。

 良い女を見ると、唾ぐらいはつけて置きたくなるな。


「覚悟があるなら好きにしろ。当分の間はここでコイツらひよっこの訓練だ。時間はまだある、悩んどけ」


 額を突き合わせ、目を見ながらそう言った後に額に口付けして頭を撫でてすぐに去る。


 流石に後ろの三人の抓りが痛くなってきた。


 プンスカ怒りながら訓練場へと向かう三人を追う途中、後ろから良い飲みっぷりが聞こえた。


「良い女ばっかりで困ったもんだ……」


「浮気しても良いけど、浮気ばっかりすんなー!!」


「そうだー! えっち!」


「そうです! へんたい!」


「へいへい……」


 俺、人生のモテ期来てるわこれ。来てるうちに味合わねえと勿体ねえ。


 冒険者なんて命が幾つあっても足りねえ仕事、欲に忠実に生きて然るべし。

 であるなら、コイツら三人の欲に向き合うのも今の俺の仕事ってな訳で……。



 とりあえず元気が出なくなるまで走って貰うか。

 その上で出る欲があるならとことん付き合ってやろう。


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