第七話 若い奴らは旺盛で
槍ちゃんと回復ちゃんがやって来たので先ずは飯を食わせる。
思った通り一心不乱に食べ始めたので、その間にレイネに二人との馴れ初め的なあれそれを話す。
「向こうの剣君も酷いけど、レイジも相変わらずだね〜。しかも面倒見る積もり無かったくせに私の為に鍛えて服も買って宿代も出すなんて……私の事好き過ぎない?」
「お前は俺にとって特別だ。じゃなきゃ身請けなんぞしねえよ。お前は俺と生きろ」
「……死ぬまで一緒に生きたげる」
レイネの頭を撫でて抱き寄せる。
大人しく抱かれているレイネは本当に俺に惚れきってるらしく幸せそうな顔をしている。
しおらしいこいつも悪くない。が、ずっと幸せではいられないだろうな。
とりあえず明日の訓練の後から逃げ出さないか見張っておくか。
槍ちゃんと回復ちゃんはご飯を食べる事に忙しそうでこちらの事は意識の外だろう。
こちらも幸せそうに頬張っている。リスみたいで可愛らしい。
「二人とも、飯は逃げないんだから落ち着いて食え。碌に噛まずに食うと消化に悪い上に満腹感も得にくい。結果……太るぞ?」
「「ッッ!?!?」」
俺の言葉に衝撃を受けた二人はゆっくり噛んで食べる様になった。
そのおかげでようやく落ち着いたのか、槍ちゃんがフォークを置いて話しかけてくる。
「あの、そちらの女性は……その……レイジさんのお嫁さんですか?」
やたらモジモジしているから性欲旺盛なのか尿意なのかと思っていたが、そう言う話はやっぱり気になるらしい。
回復ちゃんもこっちに意識を向けまくっているな。
「こいつは……そうだな、嫁未満彼女以上と言った所だな。今は」
「お母さんとお父さんになっても良いよ?」
「未亡人にする気はねえっつったろ」
「そのために明日から鍛えるんだもんね……あーあ……」
幸せそうな顔は何処へやら、今度は生気の抜けた顔を披露するレイネ。
コイツの顔芸はレベルが高い。可愛い顔を台無しにする様な顔を平気でする辺り、取り繕っていなくて好きだ。
槍ちゃんと回復ちゃんはホッとしているが、二人を嫁にどうこうは考えていないんだが?
そもそも真面目ちゃんくさいしな。俺に合うのかどうかも分からん。
まあそこら辺は長い付き合いになったら分かるだろう。
そもそも俺と長い付き合いになる事があるかどうかだけどな。
「ちなみにコイツが俺が言ってたお前達に組んで欲しい冒険者だ。性格は良いし、見た目も良い。二人と同性な上、まだ魔法が使えないから前衛になるしパーティの組み合わせとしても良い。」
「私は構わないけど……」
「私も構いません、負けていられないので!」
槍ちゃんはともかく、回復ちゃんは人を見て決めるんじゃなかったんかい。
負けられないってなんだ。何に勝ちたいんだ?
レイネは俺に抱かれながら二人に対してドヤ顔決めてるし、二人はぐぬぬってしてるし……面倒くさくなってきた。
「んじゃ、まあ、取り敢えず女三人でパーティ結成って事で、明日は朝から冒険者ギルドの訓練場で鍛えていくぞ」
「レイジさんはパーティに入らないんですか?」
槍ちゃんの疑問は最もだが、ある程度冒険者やってたらその疑問を抱くやつはカモにしか見えない。
騙されて搾取されて最後にゃ捨てられんぜ。
「俺は超強いの。そんな俺がお前達とパーティ組んでみろ。俺の腰巾着扱い、酷けりゃストレスの発散相手を引き連れてるとしか見られねえよ」
「それは……なるほど」
「私は発散相手でもなんでも構いません!」
「自分の身体は大事にしろよ回復ちゃん。君らはまだ若い。もっと良い男に出会うかもしれねえし」
俺が諭していると、レイネがキョトンとした顔で俺を突いてくる。
「レイジ好みに育てて貰っちゃえば?」
「お前えぐいな……」
「だって二人とも女の顔してるし」
「お前との時間が減るからやめとく」
また顔から煙を出し始めたレイネを支えつつ二人に向き直る。
「仮にお前達を抱いたとしても、そこに愛は無いぞ。もっと成長して良い女になって良い男見つけな?」
「…………はい」
「良い女になっても、レイジさんより良い人が居なかったら貰って下さい」
お? 槍ちゃんは折れかけたが、回復ちゃんはやたら押しが強い。
意外ではあるが、目標があると成長速度が目に見えて違うからな〜希望を持たせておくのも一つか。
「槍ちゃんはどうする」
「……私も、貰って欲しい……です」
「んじゃあ先ずは強くなろう。強くなって金を稼いで、稼いだ金で装備や服を買ってオシャレして、身体も心も磨いて行け。そんで俺が欲しいと思う様な女になりな」
「「はいっ」」
良い具合にテンションは上がったみたいだし結果オーライにしておこう。
飯も言われた通りゆっくりとがっついてるし、強さに対する意欲も変わった、こいつらは良いところまで行くかもしれないな。
「そんじゃあ飯を食ったら明日に備えて早く寝ろよ〜」
「えー折角だしここで寝ちゃえば?」
「「レイネさんありがとうございます!」」
は!? いや別に構わねえけど……何考えてんだレイネ……。
つーか二人も反応早過ぎだろ。
俺の思考が一瞬遅れた所為でもあるが口を挟めなかった。
なんなんだこいつら…………。
食事の後は水で濡らしたタオルで身体を拭き、明日に備えてさっさと寝ようと思ったのだが…………レイネがやりやがった。
二人部屋はベッドが二つあるので、狭いが二人で一つベッドを使えば良い。
そもそもレイネを今日は一人で寝かせる積もりも無かったのだからそれは良いのだが。
ほど近いベッドに槍ちゃんと回復ちゃんが居る状態で誘って来やがった。
今日はルフェル相手にそこそこ命の危険を感じていたからか、生存本能が強めに出ていた。
…………抑えられず出来るだけ静かにレイネを抱いた。
だが隠し果せる訳もなく、二人にも火がついてしまう訳で…………。
◆ ◆ ◆
朝起きた時にはベッドが二つ繋がって、四人裸で寝ていた。
若い二人は身体の凹凸もはっきりしてないと思ったが、思った以上に身体は成長していたらしくしっかり抱けてしまった。
冒険者なんかやってりゃあ、良くある事っちゃ良くある事ではある。
命懸けの戦闘をこなして昂った勢いのまま〜とかな。それでくっつく奴らもいれば、滅茶苦茶にぶち壊れる奴らもいる。
要は肉体関係は大体の問題の火種になる。
今回の場合は、全員の矢印が俺に向いていたから問題は無いが……パーティに男はもう誘えねえな。
しかもまさか俺がガキに手を出す羽目になるとは思わなかった。
「はあ〜……まあ、なる様になるか」
とりあえず、今日の訓練は昨日よりもキツくしてやろうと思う。
泣いてもやめてやんねえ。