コレはもう滅びてるだろ
ステラは絶望した。
失意の余り目じりに涙を浮かべ、両手を強く握りしめ地団駄を踏んだ。
なぜってそりゃ、淡輝は正直少し、否かなり異世界というモノに期待していたのだ。見たことのない世界、空はどんな色をしていて、どんな草花が咲いていて、どんな動物が生きているのか、異世界の人間はどんな形をしているのだろうか、どんな文明が発達しているのだろうか。
そんな、己がいた世界とはどれだけ違いがあるのだろうかっていうのに期待していたのだ。
別に、この世界にはさぞ素晴らしい光景が広がっているのだろうとかそんな事は考えてない、異世界と言えども平和で美しく輝かしい理想郷が待ってるとか全く思ってたわけじゃない。
ただ異なる世界というモノへのささやかな希望を胸に抱いていただけだ。
だというのに、降り立った世界は暗く荒廃し、空に浮かぶ月は赤く踏みしめた地には草も花もなかった。
圧倒的に生命を感じない。
異世界は随分とまぁ荒廃していた。滅びるまでのカウント始まってそう。終末の日は近い。正直どんなに手を尽くそうがもうダメって感じの光景が広がっている。もう帰ってもいい気がしてきた。
次いで、ようやく気を持ち直したステラは顔を上げると、目の前には巨大な樹が聳え立っていた。デカい。遠くからだというのにちょっと見あげなければ頂上が見えないくらいデカい。
薄紅色の花びらが風に舞い、幹はどこか赤黒く脈打って気がする。
紅い月に照らされるその樹は息を忘れる程美しく、ステラは思わず見惚れてその場でボーッと立ち尽くした。
因みに、その後ろでは真っ黒い泥の様な人型のナニカが集まり出し、その頭を握りつぶし血肉を吸い尽くし養分にしてやろうと腕の様な部分を振り上げステラに近寄り、そのまま躓いた。足にあたる部分はないように思われるが躓いたような挙動で転び、当然のように腕は空ぶった。
ソレに続き体を叩き潰そうとその斜め後ろ辺りから踏み出した個体は反対側から同じように近寄ってくる別個体に気付かずぶつかりベチャッと音を立てて潰れ、又違う個体は遠くから腕をしならせその体を上半身と下半身で分断しようして、前に進もうとしたステラが躓いてすっころんだことでしっかり空振りそのまま勢いよく横に吹っ飛んでいった。
スッ転んだステラは起き上がり埃を落とすと、後ろで起こった愉快なヤツらの事など気にせずそのまま立ち上がり樹の傍に行こうと歩き出した。
因みにステラは学校帰りだったので制服を着ていたし、ステラの高校の制服は普通にスカートタイプだったので足は露出していたが派手に好んだワリには掠り傷一つなかった。
そんな無傷なステラはルンルンと歩く。
途中で地面が割れていて前に進めずしょうがなく回り道をしようと右を向いたら変わらず樹が真っ直ぐ前に在り、驚いて横を向くとそこにも樹が立っていて、というか上と下を覗いたすべての方向に樹が見え、異世界という事実に戦き目を輝かせた。
異世界といのはこうでなきゃ、不思議で訳の分からないモノがあるべきなのだ。
期待通りの異世界の光景に嬉しくなったステラはキャッキャと楽しそうに小走りで前に向かって歩いた。