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お前マジその顔じゃなきゃ許してねぇからな、親に感謝しろよ!?

 真っ白い通路を進んだ先には、やっぱりというべきか面白みがないというべきか真っ白い扉があった。

 昔人間は白一色の空間で生活していると精神がイカレるって聞いたことがあるが、ここを作った奴は生活してたら何日でイカレるか実験でもしようとしてるのかもしれない、それか設計時のテーマが精神崩壊ルームか、そんな事を勝手に想像した淡輝は勝手にドン引いた。

 さていつまでもこんなところに立っていても何にもならないので真っ白い扉の真っ白いノブに手を掛け開く。


 その部屋の中に入った淡輝はちょっと驚いた、勝手にどうせまた真っ白い部屋なんだろうなとか思っていたが別にそんな事はなかったので。

 この部屋のテーマは、そうだな、喫茶店とかか? コーヒーの匂いはしないから別に飲食店とかじゃぁ全然ないんだろうがそれでもどこか心が落ち着くような気がする。淡輝はあまり物を知らないのでリラックス空間っていわれて喫茶店しか思いつかないのだ。


 マ兎に角落ち着いた気分になる室内だ、なんせこの部屋、色がある。

 全体的に暖色系。暖かみ。あったけぇ。

 扉を開けてまず最初に目に入ってくるのはでかい窓、その前にはドラマなんかで可愛いおばあちゃんとか可愛い猫ちゃんとかが座ってる、ゆらゆら揺れるタイプの椅子が置いてある。

 右側の壁には木製の本棚や棚。

 右側の壁の端っこら辺に名札っぽいのが提げられている板がかかっている。名札は三枚、一枚につき一人分書いてるっぽい、つまり三人分の名前がある。

 左側の壁は槍やら剣やら絵画やら壺やら花やらが色々飾られている、展示スペースかな、でも使った武器類は形跡ありそう。


 茶色い枠と透明なガラスの窓の外は宇宙みたいな風景が広がっていて現実味がないが、少なくともさっきの空間に比べればもうぜんっぜん人が生活する空間って感じがしてる、色って大事なんだな。淡輝は色の大切さを知った。

 てっきり全部白一色で統一されてないといけないのかと思ったが違うらしい、ならなぜさっきまでは白以外の色が無かったのだろう。マどうでもいいか。


 さてそんなさっきとはまるっきり違う部屋の真ん中には机が一つ、男が二人座っている。

 そのうち一人、金色の髪を低い位置で一つに結び胸の前に垂らしていて、目の色は童話の王子様の説明の時にイメージ画像として使われそうな青、全体的に優しそうで思わず心を許してしまいそうな美男子が淡輝を見て笑顔を浮かべている、優しそうな笑顔だ、実は部屋に入った時からその優しげな笑顔で軽く手を振ってきているので会釈を返しておいた。


「いらっしゃい」

「どうも〜」


 優しげな金髪のお兄さんはやっぱり優しい声をしていて、手でお兄さんの隣の椅子を示してくれていたので淡輝は特に警戒とかそういった心を抱かずにトコトコ近付いて椅子に座った。フカフカだぁ。


「ねぇお兄さん、ここどこなの?」

「みんな待機部屋って呼んでるね」

「それは聞いた」

「そっか〜」


 通路で鳥に詳しいことはこの部屋の奴に聞けって言われた事を思い出した淡輝は率直に疑問をぶつけると、さっき聞いたのと同じ事が帰ってきた。


 さてお兄さん、質問を求めてきた淡輝が何やら多少は情報があるっぽいと察した。偶にいるのだ。

 けれどもその者らの持ち合わせる情報は疎らで明確にみんな何を知っていて何を知らないのかっていうのが決まっていない、なのでどこからどう説明したものかとちょっと困った。全くの無知の方がまだ楽なのに。面倒だな。


「どうしてここに来たのかは知ってる?」

「罪を犯したからだと言われた、でも正直全く覚えがない‼︎」

「マァ稀にいるね」

「罪の自覚がない奴、てこと?」


 お兄さんはいつのまにか机の上に置かれていたのかわからないティーカップを持ち上げ口を付ける。それがもう、驚くほど絵になるもんだから淡輝はホホゥと顎に手を当てて眺めながらさっきの言葉について考える。

 稀にいる、罪に覚えがない奴のことだろう。

 じゃあ何だ、冤罪か、ソレとも罪に無自覚なのか。

 淡輝は自分に関しては全くの冤罪だと思ってるが他の人たちはきっと無自覚なんだろうなって思って聞いた。


「否? 本人は本当に何にもやってない子」

「冤罪じゃん」

「ソレが違うんだよね〜」


 頬杖をついたお兄さんはこれまたどこから出てきたのかわからないティーカップを淡輝に差し出す。

 紅茶なんて滅多に飲まないがマァ出されたものだしと手に取り一口飲んでみる。結構美味しい。


「そもそも罪っていう言葉がやったことを分かりやすくする形容するための単語何だよね」

「つまり?」

「例えば君の場合だけど、君は自分が運がいいって思ってるよね」

「マそうだね、めっちゃ幸運」


 事実なので淡輝は素直に肯定した。

 運がとてもいい人生だった、だからマァ最後の死に様はちょっと納得していない。

 あんな所で死ぬ予定などなかったのに。


「そういう認識してるけど、実際はちょっと違くてね、君は幸運なんじゃなくって、世界そのものに干渉して君の望む事が起こるようにしてるんだよ」


 無意識のうちに。

 お兄さんはニコニコと穏やかに笑ったままそう説明する。

 なるほど、自分はかなり凄い人だったのかもしれない、そう思った淡輝は目をキラッキラさせてお兄さんをみる。


「でも世界に干渉できる存在って許して置けないんだよね、だから君は死んだしここにきている」

「……別に制御できてるわけじゃないし、無意識のうちにやってる事なんだから私悪くなくない?」

「うん、そうだね、でもやったことは許されないからここにいるし、暫くは転生も出来ない」

「理不尽」

「世の中そんなもんだよ」


 是非も無し。

 ガチで全くやった覚えのない罪で死後の自由を奪われた。理不尽。

 そして優しそうなお兄さんはもしかしたら優しくないのかもしれないと淡輝はちょっと思った。


「ていうか何で死後を拘束されないといけないの? 死んだらそこで終わりでいいじゃん」

「ホントはね、僕らみたいなのって死んだらそのまま消滅させられるはずなんだよねぇ」

「え……?」


 淡輝的には至極当たり前の疑問をぶつけたら、とんでもない答えが帰ってきて間の抜けたような声が漏れた。


「でも利用価値を感じたから死後に存分に利用して、代わりにちょっと色々弄って転生させてもいいように調節して転生させるんだよ」

「……誰が?」

「"龍"って名乗ることにしてるらしいよ」

「曖昧だなぁ」

「名前は無から生えてこないからね〜」

「ほぉん」


 じゃその"龍"とやらは無から生まれてきたのだろうか。

 どうでもいい事を考えながら茶を啜る。うめぇ。

 淡輝は完全に理解する事を放棄した、話の規模がデカ過ぎる、多分なんか凄い存在が関わってるくらいの理解度でいいな。


「デ、これから何をすりゃいいの?」

「"龍"はまだ稼働している世界に干渉できない、でも別に認識していないわけじゃない、明らかコレから滅びるっていうのも原因も分かっているのに何もできない、だから何かできる可能性があるモノをその世界に飛ばして解決しようってことにしたみたいだよ、転生はおまけっていうか、優しさ、慈悲、気まぐれ、みたいな?」

「一言で言うと?」

「つまり、救済ポイントを貯めて転生を目指そう‼︎ てコト」

「……なるほど?」


 救済ポイントってなんだ、今までの話に一言も出てきてないぞそんなポイント。

 全く分からない淡輝はしかし金髪のお兄さんはもう全く説明する気がないなって思ったのでしょうがなく理解したフリをする。


「因みに、君が死んだのも上からの指示だし殺ったのは彼」


 彼、と指し示されたのはこの部屋にいたもう一人の男。

 長く癖のない真っ赤な髪が生えるしっろい肌、赤い睫毛に縁取られた鋭い金色の目。上半身の布面積少なめな、古代を題材にした漫画で似たようなの着てる人いたなって感じの服から覗く体は綺麗な筋肉が綺麗についてる。おぉ、腹筋なんて六つに割れてるぞ、凄いな。淡輝は筋肉に詳しいわけじゃないが腹筋が六つに割れるのは凄いことだと知っていた。

 で、こちらの素晴らしい美丈夫が淡輝を殺した下手人らしい。


 いきなり指名された赤髪のお兄さんはちょっと首を傾げて、一応は話を聞いていたので何か言うべきかとちょっと悩んでから口を開く。


「アレは大変だった、肉体的にはそこらの人間と変わらんというから普通に雷でも落とそうかと思ったんだがコレが全然当たらない、何発も何発も落として漸く成功したんだ、二時間はかかったな」


 赤髪のお兄さんはいやぁ大変だった、でも達成感はあったと言って長い長い足を組み、背もたれに深く体重を預けて脱力して座っている。


 その様子に淡輝は当たり前にキレたが何も言わないことにした、だって赤髪のお兄さんの顔が大変に良かったのでムムゥと唸って黙った、文句言ってその麗しい顔が曇りでもしたらこっちまで悲しくなってしまうので。

 だからしょうがなく、そのとっても麗しい顔に免じて何も言わずに許すことにした。


 余談だが、淡輝は美しいものが大好きだし男女関係なしの重度の面食いだ。

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