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この世に生まれて生きることが罪とか世の中可笑しいんじゃないの?

 覚醒。

 目覚め。

 もう二度と瞼を開くことはないだろうなって思ってた淡輝は、けれどその予想に反して瞼を開き、両の足を地に付け立っていた。


 右を向くと白い壁、左を向いても白い壁、下も白いし上も白い。

 死んだと思ったら真っ白い通路のど真ん中に立っていた。

 きょろきょろと周りを見渡して現在地を確認するが、全く分からず首を傾げる。

 さてコレはどういうことなのかと訳が分からず困惑しているとシャラシャラって感じの音が上からした。


 目を上に向けると、白いくて金色の鳥が羽を羽ばたかせずにただ広げているだけなのにどういう原理か知らないがゆっくりと優雅に舞い降りてきた。

 姿は猛禽類のようで、それでいて尾羽が長く、色は嘴まで白。けれど羽の先に行くにつれ淡く輝く黄金色にグラデーションが掛っている。黄金に輝く羽先は透けていて、その鳥が動くたびに光がこぼれるようにその場に一瞬残る。

 そんな、まるで夢のように美しい鳥が、淡輝の前にゆっくり降りてきた。


『まずは真っ直ぐ進め、疑問があれば突き当りの扉の向こうにいるモノらに聞け』


 うっかり見惚れて、その場に突っ立っていた淡輝に対してその鳥はそれだけ言ってまた羽を広げて飛び立とうとした。

 けれど直ぐにハッと正気に戻った淡輝はタックルのように勢いよく飛びつき抱きしめ全力で引き止める。


「待って⁈ どういうこと? ここどこ私何でこんなとこに来ちゃったの⁈」

『この先に行って聞け』

「私は今聞きたいんだけど? 今疑問に思ったから今聞きたいんだけど?」

『……ここに来るモノ曰く、待機部屋だそうだ。犯した罪により新たな生を許されないモノらが、世界に仇なすモノを排除し、転生するまでの間留まる場』


 答える気がない鳥に抱きしめる力を強めしつこく聞くと、鳥は暫し沈黙して、けれども答えてくれる。


 鳥曰くここは、罪を犯した者が留まる場所で、そして淡輝はココにいる。

 つまりこの鳥は淡輝を罪人だとほざいてるわけだ。

 え?

 この清廉潔白、とは言えないがそれでもマァそこらの人と同じような優しさと善良さと捻くれ具合と性悪さを持った普通の美少女淡輝ちゃんが罪人だというのか?

 一体何の罪を犯したというのだその綺麗な目ん玉は見た目通りガラス玉なのか?

 よく見ろやボケ鳥焼き鳥にして食うぞクソッタレ。


「私が一体何の罪を犯したってんだ? あ?」


 行き成り罪人扱いされ頭にキたので心の中で罵りながらも明らかに神聖そうだしなんか変な喋り方したらろくなことにならんかもしれない。

 そう思った神とかそういう存在を信じてるタイプの現代人淡輝はどうにか怒りを面に出さず自分は冷静であるという自己暗示をかけ続け、己の罪を聞いた。

 ちょっと自己暗示が足りなかったが、けれど罵倒の言葉は出なかったのでマァ及第点だろう。


『その存在として世界に生まれてきたこと、その世界でその後も生きた事』

「意味が分からない」

『さっさと進め、疑問はその先にいるモノらに聞け』


 神聖さがあふれ出した美しい鳥は優しいのか寛容なのか知らないが一応淡輝の疑問を答えた鳥は、翼を広げ、羽ばたかせその場を飛び去る。

 鳥が飛び立とうとしていた間も、淡輝は全く力を緩めず、むしろ力を入れて抱きしめていたのにまるでそこに何も存在していないかのように通り抜け飛び立った。

 よくよく考えるとここは通路であり、上には天井もあるのに鳥はその天井を通り抜けてその場を去った。


 空気を力強く抱きしめ見送った淡輝は、まるで夢でも見ていたかのような感覚で目をぱちくりと瞬かせ、暫く惚けていた。

 少しして、自分が何もない無を抱きしめていることに気付いた淡輝は手を解き、真っ直ぐ背を伸ばして鳥に言われた通りに真っ直ぐ進むことにした。

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