ヒロインか目の前の美女か
難しい選択なのか?いや、答えはひとつなのだ。
突き進むしかない!さぁ。突け!いや突き進め!
岩男の頭に浮かんでいたのは、もちろん朝比奈楓の事である。
「彼女はどうなるんだ!」
女を抱きしめながら、岩男はそう叫んだ。ずいぶんと失礼な話ではあるが、彼女の事がどうしても気になって仕方無い。それがある限り、完全に楽しめそうもないのだ。ほんの一欠片だが、岩男の理性が残っていた。しかし、女の方はそれどころではないようで、一行に返事をしてこない。唸り声をあげてくるだけだ。岩男はもう一度声を上げた。
「彼女は向こうで何されるんだ!」
すると、女は呼吸するのも大変なほど悶えながらも、息をもらしながらそれに答えた。
「分からない!分からない!」
女はそう言って、また悶え始めた。快楽におぼれて、それどころではない様子だ。声にならない声を発している。
岩男はさらに女に叫んだ。
「どうすれば彼女に会える?!」
すると、女は体を震えさせながら、
「堪忍してぇ」
と言ったので、岩男は首を振った。
「もっと、もっと!」
女はそう言ってきた。
「やめるぞ。言わないと止めるぞ」
岩男は動きを止めた。すると、女は首だけ振り返り、岩男に懇願するように、声を出した。
「私達を壊して。全て壊して!」
「い、意味が分からん!」
「とにかく壊して!そうすれば会えるかもしれない」
そう言うと、女は自分から体を動かし始めたので、岩男はそれを見下ろしながら、彼女の両手首を掴んだ。
とにかく壊れる事がお望みらしい。
岩男は体中の力を振り絞って、これ以上無いほど体を動かした。激しい動きに、女は断末魔の声を上げ出し、やがて岩男の掴んでいた両腕にひびが入り始めた。細い亀裂が岩男の持っている所から無数に走り出して、その指が彼女の体にめり込んだ。岩男はそんなこと気にもしないで動き続けていたが、力を込め続けると、その拍子で両手が大きく取れてしまった。岩男は体を後ろにそらせてひっくり返りそうになって、慌てて彼女の残っている両腕を掴んだ。
びっくりして、声を出しそうになったが、それ以上に快楽が岩男を取り巻いた。さらに腕を掴んで、体を動かすと、今度はその腕もまるで陶器の様に粉々に砕け散っていった。
女は両腕が無い状態である。しかし、それでも尚彼女は下半身を岩男に突き上げてきたので、岩男はこれでもくらえ!と腰の部分を持ち、さらに激しく体を動かした。
「きて、きて!」
「おりゃ、いくぞ!」
岩男はそう言って、ギアを六速に入れた。すると、女は言葉にもならないような金切り声を上げ、それと同じくして、顔や体のいたるところに亀裂が入りだした。岩男はまた驚きながらも、自身の快楽におぼれてしまい、動かす事を止められない。むしろ激しさを増し、どんどん力を込めて言った。
「壊れる(トゥタナー)!」
女がそう叫ぶと、女の体は粉々に砕け散り、後にはかがんだ状態の岩男だけが取り残された。心臓の音だけがバクバクと波打っていたが、岩男はまだ途中なのであって、本当の意味で取り残されてしまった。本当に砕けちまったのか。周りには彼女の破片が散らばっており、やがてそれは砂となって大地に吸収されてしまった。
岩男がそれを見届け、情けないような顔で周りを囲んでいた女達を見た。すると、一人の女が辛抱出来ない様子で岩男に駆け寄ってきて、岩男を赤い草の上に押し倒した。その衝撃で、岩男とその女はすっかりピンクの粘着質まみれになってしまった。
女は岩男に馬乗りになると、いきり立ったままの岩男自身を手にもった。彼女の手は、砕け散った女より少し熱い。粘着質がまた蒸発して、岩男も女も体をくねらせた。
「私も壊して!」
女はそう言うなり、勝手に体を動かし始めた。岩男は寝ころんだまま、まったく楽なものである。自分の上で体を動かす女をじっくりと眺めると、草の効果もあってかとても心地が良かった。興奮がとめどなく体を突き上げ、いても経ってもいられなくなる。
それに、女はまったくの完璧であり、理想の形だ。これで、体の感触が柔らかくて、表情があったならもう文句のつけようがない。
しかし、彼女はどう考えても、陶器の人形その物なのだ。
それに・・・。
「壊れる(トゥタナー)ぅーぅ!」
女はそう言って、岩男の上で砕け散ってしまった。岩男の顔にその破片が当たり、すぐに砂になってしまった。
そう、こうやって砕けてしまうのだ。
自分と寝た女が砕けてしまうなんて、これほど後味の悪いものは無い。しかも、もっとも残念な事に・・・いや、それが分かるのはもう少し先の事だ。
そんな岩男の心境など察してもくれないで、女達は次々に岩男に飛び乗ってきた。さまざまな体形の、さまざまな表情の陶器の女達は、赤い花を岩男の口に詰め込んでまで、その行為を繰り返しては、次々に絶頂を迎えて砕け散っていった。
そして、残念な事に、岩男はまだ一回も果ててはいないのだ。当然のことながら、こんな事岩男は初めての経験である。以前なら、塩の一つまみほども考えられなかった事だ。むしろ望んでいた位だ。しかし、いざそうなって見たら、これは、快楽を伴った地獄と言ってもいいものに感じた。しかし、悲しいかな、いつまでも股間はいきり立ったままだし、衝動も収まる事はない。
ただ、そうして女達を砕け散らしていく度に、岩男の中で一つの決意が揺ぎ無いものになっていた。
朝比奈楓を救わねば!
岩男の中でその思いは積もっていき、三十人ほど砕け散ったところで岩男は立ち上がると、自分から女達に襲いかかっていった。
こうなれば一刻でも早く、朝比奈の所に向かわなくては!
あの女は言っていた。全ての女を壊せば、向こうの世界に行く事が出来ると。なら、ここにいる全ての女を壊してやる。
岩男は眼を血走らせると、手当たり次第に陶器の女達を抱いて行っては、上へ下へと砕け散らした。もう数など数えてられなくて、ただ、ひたすらに砕け散るまで体を動かし続けては、次々と果てさせて、彼女達を昇天させて行った。
そこら辺にある紅い草が皆潰れて、その地がカラカラになると、今度は場所を移して女達をもて遊んだ。
ここまで来ると、まったく楽しくなくて、まさに仕事になってしまう。ただ、壊すという行為だ。
しかし、本当に悲しい事に、そこまでいっても岩男自身はいきり立ったままだし、常に強制的とも思えるほどの衝動を伴っていた。赤い草もどれほど食べさせられたか分からない。それに、女達もそれをいい事に、勝手に求めてくるから岩男にもどうしようもなかった。されるがままだ。
しかし、そんな中でも朝比奈の事だけは頭の中にしっかりとあった。朝比奈に会うために、彼女達を全員昇天させなければ。
だから、岩男は頑張った。これまでにないほど頑張った。
そして、ついに、残り最後の女を目の前にしていた。