序文
「お前はまだ恋する姿勢ができてないんだよ。」
いわゆる合コンで知り合った女と、3回遊びに行った末に振られた際に晋也に言われた言葉だ。
「いやいや、マユリンのこと普通に好きだったんだけどなぁ。」
「好きだったら、今回のデートはこうやってああやって、ここまで仲良くなりたい。今度もまたデートしたいから、次のデートにつながるような話題を振る。そういった努力が自然と出てくるもんなんだって。薫はただデートの約束をして、デートを行っているだけだ。」
「いやでも・・・」
「目的意識がないんだよな、あえて言うならデート自体が目的になってる。薫は彼女が欲しいだけで、マユリンを彼女にしたいわけじゃないんだよ。」
晋也のやつ、振られた時ぐらい慰めてくれてもいいじゃないか、と思いながらも、聞いていると、ああなるほどと反省させられるところも多い。
晋也はすごく客観的な奴だ。
積極的に相手の気持ちを理解して、こんな言葉をかけてほしいんだろうななんていう推測は一切しない。感情的になることもなく、ただ聞いた事実から客観的に感じたことを結構的確に指摘してくる。そこが晋也の悪いところでもあり、いいところでもある。
実際、晋也のそんな性格に何度も助けられているのだ。
「まあ、もうすぐ同期の飲み会も近いし、その時に発散すればいいよ。」
「・・・そうだね。」
適当なことをいう奴だな、そう思いながらもとりあえず相槌を打つ。
入社3年目の同期会か、もう一人前になっていもいいはずなんだけどな、恋愛的にも人間的にもあまり一年目と変わっていないな。なんて悲観的なことを考えつつ、まぁいいや、とにかく適当に発散して忘れればいいかぐらいに思い始めた。