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偽愛  作者: 黒和叶恵
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出会い①

唐突だが僕には彼女がいる。

高校の卒業式からからだから、もう付き合ってかれこれ3年は経つだろう。

彼女とは進学先が別々だったこともあり、付き合って早々遠距離に。

会えるのは年に数回だけ。

でも、僕は彼女のことを愛していたし、彼女も僕の事を愛してくれていた。

大学卒業後は結婚をして、2人で子供たちを育てていけたらなんてことも考えていた。

そのはずなのに......


今、僕の隣には見知らぬ女性が眠っている。

飲み込まれてしまいそうなほど真っ黒な髪の長い女性が。

僕が今まで出会った女性の中で間違いなく一番美しい。


「あのっ、、、」

声をけようとして、やめた。

この人が起きてしまえば僕は何か大事なものを失ってしまうような気がしたからだ。


(というか、この部屋、俺の部屋じゃないな)

(ホテルみたいな綺麗な部屋だけど、生活感はあるんだよな)

(もしかして、この人の部屋?!)

(だとしたら、もしかして僕は......)

そこまでで考えることをやめた。


それから数分が経ち、

「......ふわぁ」

「あっ、起きてたんだね。おはよ」

「おっ、おはようございます!!」

急に声をかけられたものだから、ものすごくダサい感じになってしまった。


「そんなにかしこまらなくていいのに。昨日は気さくに話しかけてくれたでしょ?」

彼女はそう言って僕に笑いかけてくれた。

(ん?待てよ。昨日とは...?)

(全然思い出せないぞ)

そう僕が思っているのを勘付いたのか、

「あれ、もしかして昨日のこと覚えてないの?あんなにお話ししたのに...」

彼女はとても悲しそうな顔をしていた。

「はい、本当にすみません。全然覚えていなくて...」

ここでしらばっくれるのも違うなと思い正直に話した。

「そっかぁ。昨日の君、結構酔ってたししょうがないか」

やはり、ちょっと残念そうな口ぶりで彼女は話す。

(というか、僕が酔っていた?)

僕がそう思ったのは、今までにお酒で酔った経験が殆ど無いからだ。

20歳になってから、ある程度お酒の席はあったが、大抵その場にいる誰よりも飲む。

そして、毎回介抱する側になるのだ。

要するに、それだけお酒が強いということだ。

そんな僕が、酔って、しかも記憶を飛ばすなんて考えにくい。


(もしもそれが本当なら、昨日は何があったんだ...?!)


「本当にごめんなさい。もしよければ、昨日の事を教えてもらえないでしょうか?」

本心だった。

残念そうにする彼女に対して本気で申し訳なさを感じていたし、同時に昨日の事を知りたいという気持ちにもなっていた。

「そうね、記憶がないと困るよね。うん、いいよ」

そういって彼女は昨日の事を話し始めた。


彼女の話を要約するとこうだ。

僕は昨日、彼女が友人たちと飲んでいたBarに一人でやってきて、カウンターでひたすら強いお酒を飲んでいたらしい。

彼女らは帰るタイミングだったらしいが、彼女はそんな僕を見て何だか放っておけないと感じ、友人らが帰った後も一人残り僕の隣に座った。

それから、ほどなくして彼女から声をかけられる形で僕らは他愛もない話で盛り上がった。

閉店の時間になり、もちろん終電などとっくに終わったいた。

帰るあてのなかった僕を彼女が、家が近くだからと誘われて、彼女の家にお邪魔した。

彼女も僕もかなり酔っていたのだが、来る途中のコンビニで買ったお酒とおつまみを飲み食いしながら更に話し込んだという。


ここまで聞いて思った。最悪のシナリオを。

(記憶がない以上、絶対ないと言えない)

このまま知らないふりもできないと考え、思い切って来てみた。


「その話し込んだ後って、どうなりましたか...?」

「やっぱり、それも覚えてないんだ。あんなに激しかったのに...」


「ということは、やっぱり...」

あぁ、やってしまったと本気で覚悟した。

「ウソよウソ。あの後君は、ウトウトしていた私をベッドまで運んでくれたの。その時、誘ったんだけど、君は、『彼女がいるので』って言って断ったんだよ。でも、断ったと同時に君も眠かったんだろうね。急に落ちちゃったの。漫画みたいだったいよ」

クスクスと笑いながら彼女はそう言った。


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