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聖女と魔王の戦いは互いの持てる全技を繰り出し、熾烈を極めた・・・なんてことはなく。

聖女が一方的に魔王に愛を押し付けているだけだった。

「だから、魔王なんでしょ!配下もジャレンの力を恐れて心をゆるせる相手がいないの!ジャレンは孤独なのよ!その孤独を埋めることができるのは、聖女であるあたしだけなの!」

「オレは孤独じゃない。だれもオレを恐れてなどない。オレにお前は必要ない」

「そう思ってるのはジャレンだけなの!周りの魔族はみーんなジャレンの強さを恐れて従ってるだけなのよ!なんでわかんないのよー!」

「わからないのは、お前の方だ。なぜそこまでオレが孤独だと決めつけるのか、理解できない」

「だーかーら、ジャレンの力が強すぎてジャレンに従わないと殺されちゃうんだもん。周囲はジャレンのご機嫌を損ねると自分たちが殺されると解ってるから従ってるだけなのよ?味方がいないジャレンは誰にも本心を打ち明けることができない孤独なの!」

「オレの本心?」

「そう!ジャレンの本心!本当は魔王になんてなりたくなかったし、強すぎる力のせいで大事な人を傷つけたことがトラウマで、これ以上周囲を傷つけないために暴君のふるまいで周囲を遠ざけて・・かわいそうなジャレン」

「・・・・」

「でも!もう大丈夫よ。聖女のあたしがいるわ!」

「・・・・」

「あたしがジャレンを癒してあげる。あたしだけが魔王の傷を癒せるのよ!」

「・・・・」

「だから、ねえジャレン。あたしの手を取って?あたしと楽園で暮らしましょう」

「・・・もう、お前、黙れ」

ジャレンの右手から黒い霧が発生し、マリアの周囲を黒い霧が覆う。

「な・・なによこれ、こんなの聖女の力で・・・え、なんで、消えないの?なんで?」

マリアは発生した周囲の霧を祓おうと聖女の浄化の力を使った。一瞬、マリアの身体が黄金に輝いたが、光はすぐに消えた。

そして、黒い霧は益々マリアに纏わりつく。

「聖女の力など、今のお前にはほとんど使えないだろ。真面目に勉強も訓練もしてこなかったお前にはな」

「え・・やだ、なんで、なんで?ゲームではそんな勉強も訓練もしなくても使えたのに!」

黒い霧がどんどん濃くなり、マリアは息を切らしながら膝をつく。

「本来の聖なる力を全て魅了を育てる事に注ぎ込んでいたからな。魔を祓う力など育ってない」

「そん・・な、あたし、ヒロ・・インな・・のに・・ヒ・・ロイン・・はっ、無て・・き・・なの・・に・・・」

とうとう黒い霧に包まれてマリアの姿は見えなくなってしまった。


黒い塊をその場に残し、ジャレンが僕たちの座るソファーまでやって来た。

乱暴にソファーに座ると手早く侍女がお茶と御茶菓子をジャレンの前に置く。さすがは王族就きの侍女。魔王の前でも変わりなく仕事をしている。

置かれたお茶を一気に飲み干すジャレン。あれだけ言い争ってたもんね、喉乾くよねえ。飲み干された茶器を下げ、別の茶器がジャレンの前に置かれる。今度はゆっくりと口を付け、一口飲むだけにとどめたようだ。

「さて、これからどうする?」

ジャレンの問いかけに王子が黒い塊となってしまった聖女を眺めながら答えた。

「どうしようかねえ・・」

婚約破棄騒動に、魔王の乱入。聖女と魔王の(言い)争いに、聖女が破れたという結果。

「第2王子たちの処分は王に判断をゆだねるしかない、が、アレをどう扱うべきかが問題だ」

黒い塊を眺めながら王子は続ける。

「本来なら聖女は国を挙げて保護をし崇め奉る存在で、他国が奪うために攻め入る切っ掛けになるんだけどねえ・・・他国に渡しちゃうってのもアリだけど、争いの火種をよそに移すだけで解決策ではないねえ」

侍女の用意してくれたお茶やお菓子を口にし、しばらく沈黙が続く。

僕?僕は何も口にしていない。カイン(王子)やジャレン(魔王)は身分が下の僕(商家の長男)がこの場で何かを口にしても不敬だとは言わないが。

とりあえず、意見を訊いてみよう。

「ジャレン、引き取ってくれない?」

「嫌だ」

速攻で断られた。当たり前か。自分に執着する者を自国に招き入れるなど、自虐趣味でもない限り無理だ。

「カイン殿、王宮で保護するのは」

「却下」

こちらも断られた。他国から攻め入られる火種を抱えるわけにもいかない。

「では。確認しますが『他国に渡すのは無し』『魔王領に置くのは無し』『王宮で保護は無し』で同意していただけますね」

一応、確認を取る。

この国を統べるものを代表として第一王子カイン。

「同意する」

魔王領を治めるものの頂点となる魔王ジャレン。

「同意する」

他国の意見は・・まあ、この場に居ない者に伺っても仕方ないし、略でいいか。

気持ちを切り替えるためにひと拍手を打つ。

「では、手筈通りに決着をつけましょう」

あとはグダグダです。

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