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乙女ゲームのストーリーが始まる学園入学式。僕は18歳となり今年が卒業する歳となった。
ゲームのストーリー通り、庶民で聖女と認定されたマリアが特別枠で入学してきた。
マリアとは学園で何度か攻略シーンかと思える接触はあったが、第2王子との噂が絶えなかったため僕は攻略対象から外されたと思っていた。
おそらくマリアも転生者だ。マリアは僕が転生者だとは気が付いてはいないみたいだが、僕の近くに転生者がいると思っているだろう。僕がゲームの通りの受け答えをしても、僕のマリアへの好感度が全く上がっていない事にいら立っていたからだ。
今日は学園の卒業式だった。式のあとに行われている卒業生慰労会。いわゆるダンスパーティー。
僕も婚約者のミザリーをエスコートし会場に入った。
ヒロインのマリアはこの国の第2王子にエスコートされて入場してきた。
会場ではマリアの隣には第2王子、そしてマリアの取り巻き(一応、攻略対象)がべったりとくっついていた。ファーストダンスも終わり、第2王子が自身の婚約者を断罪するシーンが始まる・・いや、始まった。
「エリザベス=サー=ガーラウンド、君との婚約を解消する!」
僕は断罪式に巻き込まれまいと、それとなくミザリーを連れ会場の端のソファー移動していた。
騒動の中心に人垣ができているため、僕たちの居るところからは声しか聞こえない。
そっとミザリーの肩を抱く。ミザリーも僕の肩にもたれかかったきた。少し震えているのは第2王子の罵声が聞こえてくるからか。
「エリザベス様・・どうして、どうしてこんなことに」
ミザリーとエリザベスに直接の面識はなかったが、エリザベスはこの国の第2王子の婚約者だった。学園でも注目されている存在であり、ミザリーも彼女のような高潔で気高い存在にあこがれていたのだ。
ゲームの内容を知っている僕はこの後のエリザベスの処遇には眉を顰める思いだが、僕には何もできない。
第2王子ルートで僕は第2王子とも仲が良くヒロインと王子の仲を見守り、断罪の場でエリザベスを糾弾するセリフを吐く役割なのだ。僕のルートだと、エリザベスをないがしろにする王子を諫め、ヒロインに王子と離れるように進言しヒロインにまとわりつきからの横恋慕となる。
だが、今の僕は第2王子とはただのクラスメイトなだけだ。言葉を交わしたこともない、ただのクラスメイト。
第2王子とエリザベスの婚約破棄騒動。これが始まったとき、僕は攻略対象から外れたんだと安堵した。僕の隣で震えるミザリーにもう帰ろうと声をかけようとした、そのとき。
「ミザリー、君との婚約を解消する」
僕の口から僕の言葉ではない言葉が、出た。