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0.最後の記憶

こんにちは、春風と申します。


一歩ずれた日常話を書きたくて、この話を考えました。

「お兄ちゃん、お兄ちゃぁん!私、お兄ちゃんと離れ離れなんて嫌だよぉ!」



 カプセルの中に寝転がる俺の横。


 可愛い可愛い俺の妹が、イヤイヤと首を振りながら大泣きしている。



「玲香、本当にすまないな………兄ちゃん、もう限界らしいんだわ………」



 そんな妹に対し、俺は何もしてあげる事が出来なかった。



「嫌!嫌だよ!そんな事言わないでよ!」



 現実を受け入れられない様で、妹は只々泣くばかりだ。



 あぁ、俺は本当に周りに迷惑をかけただけの、情けない男だったと思う。





 俺―――『立花恭介』は、小学生の頃に負った首の怪我が原因で、自力で体を動かす事が出来なくなった。



 そんな俺の面倒を文句を零す事無くずっと見てくれた優しい妹。



 泣き言言わず、お世話してくれた両親。



 そんな家族にいつか恩返しをと考えていた俺は、高校3年の今。





 そのチャンスすら失ってしまった。





 現代科学では治療が不可能な不治の病にかかってしまった。



 診断時に、余命は後2週間と言われた。



 今日はその2週間目。





 俺は、峠とやらを迎えている。





 あぁ、頭が熱い。痛い。割れそうだ。


 感覚が残る喉が裂けそうなほど痛い。呼吸をするのもしんどい。


 喉の奥から血も逆流してきて、口から垂れる。


 普段は微動だにしないくせに、こういう時ばかり体が締め付けられるように軋んでいる。



 動く動かない関係なく、体中が悲鳴を上げているのが分かる。


 

 否応でも分かる。



 俺は今日が限界だろう。





 幼くして家族に迷惑をかけ、若くして逝く。



 家族に迷惑だけをかけた。



 でも、皆優しかった。



 優しかったからこそ、俺が死ぬ事で悲しみを残す。





 俺が生まれてきた理由はあったのだろうか。





 俺はこのどうしようもなく申し訳ないだけの価値の無い人生に、理由を欲しがった。


 生まれてきた意味を求めた。


 家族の努力を無駄にしたくなかった。





 だから、最新科学でようやく作られたコールドスリープ装置の最初の実験台に志願した。





 コールドスリープ。



 不治の病にかかった人を冷凍化で眠らせ、その病気を治せるほどの技術に達した時、再度解答し眠りから起こして病気を治す。



 治らぬ人を救う希望を繋ぐ技術。





 人で試された事は無い。


 もう一度起きれるかもわからない。


 そのまま永遠に眠ってしまうだけかもしれない。


 歴史に残るであろう技術の負の礎になるだけかもしれない。


 最先端の犠牲者になるかもしれない。





 それでも自分の生まれた意味が欲しかった。





 それに、本当に少ない可能性、確率ではあったが、こんな俺にも未来が出来るのなら。



 家族が生きている内に、もう一度目覚める事が出来るのなら。





 俺は家族の為に生きたかった。





 だから、俺は今日、この日。



 コールドスリープによって眠る。





「母さん………父さん………れ、玲香を頼むよ………」



「えぇ、えぇ、分かっています………。玲香だけでなく、恭介の居場所だってずっと守ってあげます………。だから、だから………」



「お前はもう休め。喋るのも、呼吸をするのだってしんどいんだろう?だから………」



 あぁ、父さん母さん。

 泣かせてゴメン。苦労かけてゴメン。



 そして俺は、家族の横で立ち尽くす、()()()()()()()に話しかける。



「瑠璃………俺が、も、もう一度、起きるまで………俺の代わりを………」



「任せろ。俺がお前の代わりに全部やってやるよ」



 瑠璃は、俺の右手を握る。



「そして、お前が()()()()()()()()()でも、お前と一緒に生きてやる。何年、何十年、何百年経とうとも、一緒の時代を生きてやるよ」



 そう言って、悲しみが多分に混ざる笑顔を浮かべる。



「だから、起きたらすぐに俺を呼べよな………」



 そう言って、瑠璃は()()()()()()()()()()を撫でる。



 俺らの下に、白衣を着た男性が近寄ってくる。



「皆様、申し訳ないのですがそろそろお時間になります。最後の挨拶を………」



 あぁ、もう俺が眠る時間なのか。



「母さん………いつも、お、俺の身の回りの………御世話してくれて、ありがとう………」



「恭介ッ!母さんは、恭介が起きるのをいつまでも待ってるわ!」



 涙を溢れさせながら、俺の頭を撫でる母さん。



「父さん………金や、く、苦労が、人一倍かかる俺の為に………い、色んな手回ししてくれて、ありがとう………」



「恭介………」



 言葉数は少ないが、その表情、その目元に悲しみを見せる父さん。



「玲香………こんな兄ちゃんで、ほ、本当に、迷惑かけたな………本当に、ありがとうな………」



「お兄ちゃんッ!嫌ぁ!」



 俺の手握って、離そうともせず、只々悲しみに溢れる玲香。





 時間が来たようで強制的にカプセルが閉じる。




 無理やり俺の腕から引っ張り剥がされた玲香が、カプセルにへばり付く。


 あぁ、ガラスが涙でぐちゃぐちゃだ………。





 少しずつ、カプセルの中が冷えてきたようで、カプセルの外が曇って見えなくなる。




 段々と家族の顔や姿が見えなくなる。



 そして、俺自身も眠気に襲われる。



 これが冬眠する熊の感覚なんだろうか………。





 遠ざかる意識の中、最後に俺は呟く。





「瑠璃………よろしく………たの………む………」





『あぁ、任せろ。なんせ俺は―――』





 ()()()()()()()()()()()()()





『お前のモノなんだから』













――――――――――――――――――――













「そっちはどうだ?」



「こっちもダメです!明らかに装置が故障してから時間が経っている様で、完全にミイラになってます」



「こっちはもっとひどいな………故障してからまだ数週間しか経っていない様だ。腐敗が進んでいる………!」



「くそっ、また全滅なのか………!」



「た、隊長!隊長ッ!」



「一体何だ!?」



「あ、あちらの装置がまだ動いているようです!」



「な、何だってッ!?中身はどうだ、無事か!?」



「恐らくではありますが、見た感じ無事の様です!」



「よし!もう時間が無い、急いで引き上げろ!」



「四人がかりで行くぞ!」



「「「ハイッ!」」」



「た、隊長!」



「次は何だ?」



「実は、あのカプセルの横のアレ。死んだ人間かと思っていたんですが、よく考えたらおかしくないですか?」



「どういう事だ?」



「カプセルにも入っていないしあそこまで埃が積もっているという事は、災害以前からここにいる事になります。なのに体が朽ちていないなんておかしくないですか?」



「そういえば………。もしかしたら、地上終焉時代に研究されていたとされる機械で作られた人間『アンドロイド』かもしれんな」



「それなら、大発見じゃありませんか!?」



「そうだな、やはり貴重な素材だ。持ち帰ろう。残りの隊員を連れてこい、全員で運ぶぞ」



「ハイッ!」



「ふぅ………。さて、この生き残りが良き味方になってくれればいいが………」





「なんせ、()()()()()()()()()()()()()()()()()

平和な話を書きたかったのに、プロローグが全くもって平和じゃない件。


別作品の息抜きに投稿するので、更新頻度はかなり少ないです。

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