表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

不思議な●●の話

よく会う人物

作者: 猫田蛍雪

 私の知り合いではないが、仕事をしている際によく会う人物がいる。

 その人物の名前は知らない。


「くまさんは、彼をご存じですか? 」

 私は大熊に質問した。

「かつて、この島をまとめていた者として恥ずかしいのだが、知らないな」

 大熊は、島民の一覧表を見ながら言った。

「旅行者でなさそうですね」

「まあ、この世界においては説明がつかないことも多いからな」

 大熊は、怖いことを言う。

 その人物は決まって必ず私が仕事をしている際に会うのだ。


 そして、今日もその人物と会った。

「また、会いましたね」

 その人物は、にこやかに笑った。

「あなたは、何の仕事をされているのですか? 」

 私は疑問を解決するためにその人物に質問する。

「無職だ。ただ、この島をさまよっているだけだ」

 その人物は、そのように答える。

「ところで、あなたは、何の仕事をしているのかな」

「私ですか?私は、市役所で仕事をしています」

「市役所か・・・・・・。具体的にはどんな仕事をしている?」

「主にイベント事や公共事業の部門を担当しています」

 私はその人物にできるだけ分かるように短く答えた。

「そうか・・・・・・ 」

 その人物はそう言い、歩いて行った。

 その人物が何者であるか、分からない。

 しかし、悪い人ではない気がした。


 仕事が終わり、市役所に戻る。

 それから、その人物にあったことを大熊に報告する。

 その報告を聞くと大熊は、顔を曇らせた。

「話したということは、幽霊ではなさそうだな」

「そうですね。でも、実態があったかも定かではありません」

「実態がないものなら、話すことができないだろう」


 それから一週間後、仕事で私は、またその人物に会った。

「また、会いましたね」

 その人物は、いつも同じセリフを言う。

「元気ですか」

 私は顔なじみであったので、何のためらいもなくあいさつをした。

 そして、その人物は言った。

「もう、あなたに会うことはできません」

「なぜですか? 」

「それは、昔の君ではないからだ」

 その人物は、そのように不思議な言葉を言った。

「昔の私ですか? 」

 私は聞き返したが、その人物はいなくなっていた。


 それから、その人物とは会わなくなった。

 その人物が、何者であったか分からないままだ。

 ただ、その人物が言った「昔の君」という言葉が、心に残っていた。

 昔の自分、すなわち過去の自分ということかもしれない。

 過去の自分・・・・・・。

 私が、その人物ならば、未来の自分に何を伝えるだろうか。

 私は、考えながら仕事をする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすく、わかりやすい文章で、オーバーすぎない不思議な感じがよく出ていると思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ