客人を歓迎しよう
開いた扉の先には見目麗しい女性が立っていた。
女性との経験が無いからと言って審美眼が劣っているわけではない。
むしろ厳しいと自負している。
その私の目の前に見目麗しい女性が五人も立っている。
この中の誰かが嫁候補か・・・。
そう考えるとワクワクする。
若返り装置は年齢だけでなく精神も若返らせる様だ。
だがちょっと待て。
彼女らの装備は所謂冒険者のそれだ。
大方、国王から探索を頼まれたのだろう。
プロメテの奴め、油断も隙もない奴だ。
この扉の緊急時の開閉方法は”五人の女性だけがいる状態で扉を開閉する”のだが
いつの間にか知られていたのか・・・。
だがよく見ると彼女らの装備は粗末なもので冒険者としては駆け出しなのかもしれない。
駆け出しの時は中古品で我慢することはよくあることだ。
よし、ここは紳士的な態度で対応しようじゃないか。
「やぁ、よくこの部屋にたどり着いたね。
ここはヘルメスの隠れ家、君たちを歓迎するよ。」
そう言って腕輪を操作する。
この隠れ家の設備は私が手に嵌めている腕輪で操作できるようになっている。
当然、私の作品だ。
ガコン
少し大きな音がして私の後ろの壁に扉が出現し開け放たれた。
その扉の向こうには彼女たちがやって来た通路が延びている。
私は扉当てた音の大きさに少し驚いていた。
(開閉音が少し大きくなっている。動きも悪い。
知らない間に何処か錆びたのか?
まあいい、今は彼女たちを案内しなくては・・・)
「ここでは何だし、食堂に案内しよう。
付いてきたまえ」
と言って通路を進んで行く。
後ろを見ると彼女たちは恐る恐る進んでいる様だ。
隠れ家とは言えうら若い女性を接待するのは初めてのことだ。
少し緊張するな。
私は食堂のある部屋に彼女たちを案内する。
「どうぞこちらへ。軽い食事でも出そう。
おっと、テーブルを出していなかったな。」
腕輪を操作すると、部屋の真ん中にこげ茶色のテーブルと椅子が出現する。
その操作を見て彼女たちは驚いた表情をしている。
空間収納が珍しいのだろうか?
駆け出しの冒険者にとって空間収納付き魔道具は高いと言う事を思い出す。
「装備は邪魔になるなら後ろのラックに置いておきたまえ。」
私はそう言って、彼女たちの座席の後ろにラックを設置する。
武具を置くための専用の台である。
彼女たちはさらに驚いた顔をしたが武具を台の上に置いてくれた。
よしよし、台を出したのが無駄にならずに済む。
「では、食事にしよう。」
腕輪を操作し収納している各種パン、ミノタウロスのスープ、メインディッシュのドラゴンステーキ、デザートそれと白磁の取り皿と銀のナイフやフォークを取り出す。
王都では少し高級な店のメニューだ。
デザートは超一流の店の物で味も良い。
何を隠そう私は甘党なのだ。
後は飲み物として紅茶が良いだろう。
私は茶葉にはこだわりがあるのだ。
銀のティーポットと白磁のティーカップを取り出す。
彼女たちはディナーには満足してくれたようだが、まだ表情は固い。
よしここは、私の失敗談を話す事で場を和ませよう。
凄そうに見えても失敗をする人だという事で親近感を持ってくれるかもしれない。
私は彼女らに自らの失敗談、傑作十選を話すことにした。
・・・とこんなわけで力加減を間違えてサンプルを吹き飛ばしてしまったのだ。」
時間がたつのは早い物で見目麗しい女性との会話は時間がたつのを忘れてしまう。
おっと、もうこんな時間だ。
紳士としては送っていくべきなのだろうが、部屋の手入れをしなくてはならない・・・
ぬ?顔色の悪い者もいるな。
体調不良のまま返すと途中事故があるかもしれない
そうだ、泊まってもらおう。
夜遅くで歩いて何か問題があってはいけない。
ん?他の人も止まって良いかと?
問題ない。
むしろ泊まってください。
部屋は一人一人ずつが良いか・・・え?
皆で一つの部屋?
うむ、女性同士で話す事もあるのだろう、部屋が五人では小さすぎるな。
なに問題はない。
腕輪を動かせば部屋同士の壁が無くなりあっという間に大部屋に。
これで問題ないだろう。
これこれ、武器を持って寝るのはよしなさい。
寝ている時に怪我をするのは危ないじゃないか。
そんな思い鎧も外して・・・。
よしよし、この武具はこちらで預かっておこう。
大丈夫、大丈夫。
朝になったら返すから。
やれやれ、冒険者は武具をつけて寝る努力をしないといけないのか。
いつ何時、魔物に襲われるか判らないからだろう。
大変な生活だ。
だがこの家ではその必要はない。
そうだ、この際この武具をメンテナンスしておいてあげよう。
彼女たちも喜ぶぞ。
そうと決まれば早速取り掛かるとするか
うむ、思った通り魔力回路が詰まっているな。
魔石もだいぶすり減っている。
この際、新しいものに取り換えておこう。
我ながら良い考えだ。
彼女たちの喜ぶ顔が目に浮かぶ。
とは言った物の、盾の魔石だけは良いのが無いな。
大きさ的には・・・おおそうだ。
コア部品の魔石がピッタリのはず。
よしよし、思った通り多少出力は大きくなるが誤差の範囲だろう。
彼女らの武具を補修していたらすっかり夜が明けてしまった。
まあいい。
彼女ら起こして朝食にしよう。