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20/25

20 番人

 ”神代王家の遺跡群”のモデルはエジプトのピラミッドである。

 そこに出現するのは勿論、エジプト神話であったり、エジプトに住む動物がモデルの魔物達である。

 エジプトといえば砂漠……とは短絡的とは思うだろうが、そんな舞台設定の為、日差しは強く、足場は砂地で悪く、最新解放エリアの為敵は比較的高レベルで強い。

 つまり、


「――危、ねぇ!!」


 そう言いながら回避した瞬間、俺が先程までいた場所に高速で針が突き刺さる……なんて事になる訳である。

 あんなのに突き刺されるとか、VRといえども御免被りたい。痛覚はほぼないに等しいこのゲームであるが、だからといって全く痛くない訳じゃないからな。

 俺が先程避けた針を持つのは、人一人程の大きさもあるサソリ――ジャイアントスコーピオン。

 俺達が対峙していたのは五体のジャイアントスコーピオンの群れだった。


「――撃鉄を起こしなさい! 【火炎放射フランメン・ベルファー】!!」


 ”女王”さんがそう言うと、”女王”さんの目の前に火炎放射器が現れ、サソリ達を焼き払う。

解析(アナライズ)】した結果、コイツらの弱点は火だったからだ。

 とはいえ、HPが半分程削れたのと、火傷の状態異常で継続ダメージが入るだけで倒しきれない。


「ちょっと固すぎないかなぁ!?」


 なんて”女王”さんが悪態を吐くのも解る。”女王”さんよりレベルの低い俺達じゃあ、更に与えられるダメージが低い。

 というか、サソリの弱点って何処だよ。

 俺暗殺者なんで、クリティカル入るの前提なんですけど。仕方が無い。


「――【解析(アナライズ)弱点特定(ウィークポイント)】」


 ”盗賊(シーフ)”や”暗殺者(アサシン)”等のジョブで習得可能な、更に弱点を詳しく見れるスキルで弱点を見る。

 えっと……目と関節と腹ね。

 背と鋏と尻尾は外殻が固くて全然入らないっぽいな。

 外殻ダメージカット率50%じゃあそりゃ弱点ついても倒せない訳だ。

 一方で腹や眼はダメージ倍率+50%なので、随分と柔らかい。


「李! サソリ共をひっくり返すぞ! 腹ならダメージが入るらしい」

「えー……火傷で近付くのは俺にもダメージ入るから嫌ヨー。……でもそうは言ってられないネ! ゾンビクイーンは残りの相手の動きを止めて、女王はサソリ共を倒してヨ!!」

「了解!」

「……うん」

「じゃ、行くぞ! ――せーのっ!!」


 俺と李で協力して一体ずつ腹に潜り込んで思いっきり突き上げて仰向けにさせる。

 これがまた重労働である。

 相手の攻撃を避けつつ、仰向けにしていかなければならない。

 他のタゲをゾン子が取ってくれるとはいえ、面倒だ。


「――今ネ!」

「――撃鉄を起こしなさい! 【カノン砲(ラッチュ・バム)】!!」


 俺と李で協力して仰向けにしたジャイアントスコーピオンの腹目掛けて、”女王”さんの砲撃が当たる。

 火属性弱点に加えて弱点である腹に当たった事で、半分程だったジャイアントスコーピオンはドロップアイテムを残し消滅した。

 それを後四度繰り返す。


「……ふぅ」


 五体全て討伐する頃には、俺はHP的には火傷の影響で少し削れる程度だったが、肉体労働的な意味合いで疲れてしまっていた。

 汗を掻いていないし、あくまでもゲームの為靴や服の中等に砂が入ってこないとはいえ、自分の恰好を恨めしく思う。もっと薄着を着ていれば精神的にマシだっただろうか。


「……なんかもう疲れた」

「まだまだこれからヨ。ほれ、先行くネ」


 李はそれ程疲れてないらしく、明るい声音で先を歩き出し、その後ろを”女王”さんやゾン子が続く。


「お前は元気だな」


 俺がそう言うと、李は口の端をニヤリと上げ、


「当たり前ヨ。ゲーマーとしても、情報屋としても、新しいエリアは心躍るネ」

「そりゃ、良かったな」


 チラリと同行する女性陣を見ると、片や”女王”さんは李と同じく楽しそうな笑みを浮かべており、ゾン子は……わからん。基本無表情だしなぁ。

 俺としても楽しいは楽しいのだが、此処まで大変だと素直に楽しめないんだよなぁ……。





 その後も、ミイラの集団だったり、鰐の群れだったり、巨大な蛇だったりを倒し、ドロップアイテムを集めながら、途中でリアルでの水分補給や食事休憩を挿みながら、二時間程かけて一番大きなピラミッドを目指す。

 そんな俺達の前に立ち塞がったのは――


「オオオオオオォォォォォォ!!」


 先程見ていた巨大スフィンクスだった。

 大型ボスとはいかないまでも、それなりに巨大な、スフィンクスの巨像である。

 基本的に全パーティーが相手にしなければならないのだろう、数時間前戦っていただろうに傷は見えず、少し風化した程度で、二体いる内の一体が動き出した。

 どうやら一パーティーに付き一体が動くという事らしい。先程二体同時に動いていたのは複数パーティーいたからの様だ。


「基本的に俺とヘキレキはこういうのは苦手ネ。ゾンビクイーンと”女王”にメイン攻撃は任せるヨ」

「――了解!」

「……うん」


 李の指示に”女王”さんとゾン子が頷く。


「――じゃ、相手の攻撃を避けてから始めるヨ。3……2……1、今!!」

「オオオオオオオォォォォォッ!!」


 スフィンクスが足を振り下ろす。

 それを避けてから、其々が動き出した。


「――【影縛(かげしばり)】!!」

「【突飛(とっぴ)】!」


 俺は相手を拘束する効果を持った影を纏ったナイフを投擲し、李も相手をスタンさせる効果を持つスキルで殴る。

 ここまでの大きさだと余り効果はないだろうが、ないよりはマシだろう。

 事実、俺と李の攻撃で一瞬だがスフィンクスの動きが止まる。

 その隙を二人が見逃す筈もなく、


「――撃鉄を起こしなさい。【42臼砲(ガンマ)】」


 ”女王”さんが巨大な砲台を出現させ、撃てば、


「……【召喚・爆弾ゾンビ(ゾンビボマー)】」


 ゾン子がゾンビを召喚、突撃させた。

 ゾンビはスフィンクスの足元に突撃すると、スフィンクスに体当たり。轟音を鳴らしながら爆ぜた。

 ゾン子のクラス”ゾンビクイーン”の能力は様々なゾンビの召喚。

 今回使用したのは対象に接触すると爆発するゾンビの召喚である。




 二人の攻撃によってスフィンクスが仰け反り、HPゲージがぐんと減る。

 あくまでも一パーティー単位を相手取る事を設定されている敵である為か、イベントのレイドボス等とは比べられない程にHPは低く設定されているようだ。

 仰け反ったスフィンクスが、突如顔を俺達の方に向けてくる。

 これはもしや――


 ドン!!


 スフィンクスの眼から光線が放たれた。

 あっぶねぇ!

 後もう一歩避けるのが遅れてたら直撃していたぞ!?

 というか、なんで俺を狙ってくるんだ?

 もしかして番人だからとかで盗賊とか暗殺者とかの”悪人(ローグ)系”に対する優先とかでも設定されてるんじゃないだろうな?




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