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Next World Order――アサシンが行くVRMMOライフ――  作者: 野央棺
イベント1【変異せし森の捕食者ヤ=テ=ベオ】
17/25

17 イベントボス討伐

取り敢えずヤ=テ=べオ編は終了。

次回から新しい話が開始します。

「どうやら植物系が使う【(アシッド)】系のスキルみたいだネ。HPがラスト一本になったと同時だったから、ラストゲージ到達時の特殊行動だと思うヨ」


 粒子を見送りながら、李が考察する。

 植物系モンスター及び一部のモンスター特有のスキルである【酸】は、一般的な【毒】を主とした状態異常系統のスキルとは違う。毒と同様にHPが徐々に削られていくのだが、同時に当たった防具の耐久値も減っていくのだ。

 あれ程のレイドボスの酸だ。間違いなく盾で受けた奴は盾が消失する位にはダメージを受けただろうし、死んだ連中は確実に防具武具を失っただろう。

 ……南無。

 流石というべきか、ベテラン達は上手く防いだみたいだな。


「月餅! 女王! 問題ないネ!? ならとっととツッコむヨ!!」

「応よ!!」

「オッケー!!」


 李の命令に、即座に脳筋二人が応えて駆け出す。

 周囲で生き残った連中の中でも脳筋連中が我先にとヤ=テ=べオへと突撃していく。

 そこからはもう一方的な狩りだった。






 ゲームでのレイドボスってのは大抵攻撃された時ののけぞりがないモンスターが多いと思うが、このゲームにおいてはリアルに作られている。

 どんな巨大モンスターであっても、痛みが相応なら痛がって動けなくなるし、部位損傷等もある。

 植物系モンスターはその『痛みによるのけぞり』になる確率が低く設定されてはいるものの、ない訳じゃない。

 数十人のベテラン――月餅や女王等アホみたいな高いガチステータスの連中――が一斉に攻撃すれば、嫌でものけぞる。

 特に、植物系モンスターは、基本的に冒険者や魔物としてプレイするプレイヤーがどの様な育て方をしても最低一つは覚えられる基本属性である火が弱点であり、レイドボスであるヤ=テ=べオも例外ではない。


「――――――――――――!!」


 声無く数少なくなった触手を振り回し、ヤ=テ=べオが倒れ、


 《レイドボス:ヤ=テ=べオが討伐されました。イベントクリアとなります》


 という音声とメッセージが表示され、


「「「「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」」」」


 大歓声が上がった。

 そして、俺達プレイヤーにとっての御褒美兼運試しが始まる。

 さてお楽しみのアイテムドロップだ。

 その場にいた全員が、メニューを開く。

 イベントドロップ専用武器や錬金術とかで使うんだろう植物の種子等がある中、


「…………”災厄の残滓”?」


 変な名前のアイテムがあった。

 俺はそれをタップして出現させてみる。


「……何だこりゃ?」


 灰色? 黒色? なんか微妙な色をしたダークマター的な何かが、手の平にふわりと出現した。

 アイテム概要も


『空より降り注いだ災厄の残滓。未だその詳細は解明不可能の物質である』


 としか書かれていなかった。

 何に使用するとか、どういう効果があるのか、とか全然説明がなかった。

 何か釈然としねぇ……。

 錬金術師とか道具屋とかに調査を頼んでみるか?

 ――ま、とりあえず、


「終わったな」

「お疲れ様ー」

「うむ、お疲れ様だ」

「いやー中々に大変だったネ」


 パーティーメンバーと労い合い、


「では、この後打ち上げと行くか!!」


 月餅が言うのに、皆で賛成する。

 イベント――一大イベントが終わったら打ち上げ。学生だろうが社会人だろうが、関係無い。

 ……勿論、ゲーム内でだぞ?

 まぁ”女王”さん以外の『リアルの詳細』は知ってるんだが。

 どいつもこいつも社会人だし、夜遅くまでやろうが、徹夜しようが構わないだろう。

 わいわいがやがやと移動しながら騒ぐ中、”女王”さんが徐に手を上げ、


「あー……私明日学校あるから、余り遅くならないで欲しいなー……なんて」


 ……って、そうだった。

 余りの忙しさにすっかり忘れてた。

 ”女王”学生じゃん。


「む、そうだったな。……では仕方がない」


「じゃ、最初はアイグローグの酒場でやって、遅くなるなら一度解散して”女王”以外でウチで続きをすれば良いネ」


 このゲーム、なんとアルコール摂取による『酔い』も再現されている。

 寝落ちして起きてしまえば、あくまでもゲーム内での再現である『酔い』は醒めちまうしな。

 どんな技術を使っているのかは知らないが、身体に害はないので、安心安全に酔っぱらえる。

 あ、勿論飲酒出来ない年齢の連中にはそういった商品が出されない様になっている。

 このゲームのシステム上、プレイするのに本人確認が必須だし、情報管理においては下手すれば国家機関以上の念入りっぷりなので、外見は弄れても、そういったところは偽れないのだ。


「そうだな。……じゃ、行きますか」


 さーて、飲むぞ飲むぞ。今日はもう阿呆みたいに金使ってやろう。

 使ってもまた稼げば良いし。

 俺の意識は、これからの”打ち上げ”に向いていた。






 この時の俺達……いや、全プレイヤーはまだ知らなかった。

 この別に何でもないようなイベントが、これから起こる全ての”終わりの始まり”だった事に。



 あ、因みにイベントの貢献度はちゃっかりウチのパーティーが頂いた。

 いやー、”女王”と月餅様様ですわ。







《イベントクリアにより、新エリア”神代王家の遺跡群”が解放されました。同時に新シナリオ及び随時イベントを開始します》




さて、今回のボスの元ネタは中央アメリカや南アメリカに生息したとされている食人植物”ヤ=テ=べオ”。

スペイン語で「私は既に貴方をみている」という意味なのだそうな。

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