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Next World Order――アサシンが行くVRMMOライフ――  作者: 野央棺
イベント1【変異せし森の捕食者ヤ=テ=ベオ】
15/25

15 イベントボス3

難産だった……お待たせいたしました。

 ”女王”が召喚した”ドーラ”とかいう大砲が、宙を走りながらヤ=テ=べオに向けて大砲を放つ。

 そのエフェクトは、先程の月餅の【羅漢王の一撃】よりも更に派手だ。

 だが、その”女王”の一撃も、レイドボスのHPを少し削るだけで止まる。

 それもその筈、このゲームのレイドボスは数百・数千人体勢で戦うので、HPは通常の敵と比べても破格に設定されている。


「かーっ!! HPゲージ全っ然減らない!! 一応私の持ってるスキルの中でも威力は高い方なのにぃ~!!」


 ”女王”がそう叫びたくなるのも頷けるというものだ。

 そんな事言ったら、彼女よりもMPが少なくて魔術攻撃力が低い連中の攻撃なんて、それ以上に与えるダメージが少ないのだが……。

 まぁそんな事を言いながらも、案外いつもの事というか、レイドボス相手ならこういう状況はよくある事だ。

 なので、


「数だ! 兎に角数を撃て!!」

「――前衛はスキルで触手を一掃しろ!!」


 慣れたモノで、愚痴は言いながらもプレイヤー達は攻撃を続ける。

 幾ら一撃で削れるHPが少なかろうが、相当数のプレイヤー達が攻撃しているのだ。

 HPは最初の紫ゲージの半分は削れていた。

 触手の数もどんどん減っていっていくので、徐々に本体に攻撃が通る様になってきていた。

 その一方、


「最初はどうなるかと思ったけど、意外と楽だなー」


 どうやら倒した触手は復活しないらしく、現在俺は休憩中。

 いやー疲れた疲れた。

 それなりに働いたが、どうせレイドボスの場合は倒した経験値は皆同じだし、ドロップアイテムはランダムだしな。

 さっき【羅刹王の一撃】を放った月餅がHPはHPポーションで回復して、武器も新しいのを取り出して触手を再び攻撃し始めているし、俺がやらなくても十分”女王”を守れる。李もいるし。

 さぁ、俺に頑張って経験値を貢いでくれたまえアーッハッハッハ!!


「リーダー! サボり魔がいるよー!!」

「――ちょ、”女王”!!」


 そんな事を考えながら休んでいたら、”女王”に見つかり、指を差される。

 人に指を向けるなと親に教わらなかったのか……って、これ二度目じゃね?

 というか、お前は攻撃に集中しなさい。

 俺達パーティーの最大火力だし、このイベントでの鍵なんだから。


「レキ、何を休憩してるネ!! イイ年した大人なんだから、女王(未成年)の前でちんたらしてんなヨこのド阿呆!」


 わーい。いい年して怒鳴られた怒られたー。

 だがしかぁーし!


「――俺の様な駄目人間に今更そんな言葉が効くとでも?」


 俺は立派な駄目人間!

 さぁ、言い返せるもんなら言い返してみろ!

 俺がドヤ顔を向けると、李はサングラスの位置を直し、一つ溜息を吐いた後、


「月餅ー。レキをヤ=テ=べオ(あれ)に放り投げるヨ。一瞬でお陀仏ネ。それと、お前の次の依頼、料金倍にするヨ。それとリーダー権限で今回の報酬金とドロップアイテムの強制徴収ネ」

「すいませんでした」


 即土下座。

 うん、俺の負け。降参こうさーん。

 イベントでアイテムの徴収はやっちゃいけないと思うんだ。


 あとお金取られるのはキツイです。ただでさえ俺、これで食ってるんだから。

 あ、『これで食ってる』っていうのは、実はこのゲーム、ゲーム内での所持金を其の儘とはいかないが現実でも使えるのだ。これもまた”世界的ゲーム”とか言われ、黒い噂が頻繁に流れる所以である。

 とはいえ、実際にゲーム内の金が其の儘現金とかネットマネーとかになったら大金持ちがバカみたいに出るので、日本の場合は実際には百分の一で計算する。


 俺の場合働いてもいないので、ゲーム内の所持金=俺の生活金になるのだ。

 そりゃ、このレベルにもなれば金は持っているが、それでも貰えるなら貰えるだけ貰いたいというのは人として当然だろう。


「それが嫌なら仕事するヨ。月餅の横で戦いナ」

「――は?」


 え、なんで?

 俺、”暗殺者”なんですけど。最前線で戦う様なステじゃないんですけど?

 お前も一応”暗殺者”職をサブに取ってるんだからわかるよな?

 そんな事を思いながら李を見ると、


「金」

「わーい! 最前線は楽しいなー!!」


 「金」の一言で俺はすぐさま月餅の隣に飛び出し、伸びてきた触手の内一つを切り捨てる。

 ……さっきっから本当に作業ゲーになりつつあるな。


「――来たかヘキレキ! では、進むとしよう」


 ……え?

 思わず月餅を見るが、言った当人はさも当たり前だといった表情を浮かべている。


「おい月餅、俺達の役目は”女王”の護衛であって――」

「ハハハ! 李や蟇蛙もいる。護衛としては十分だろうて! なら、俺達はただ暴れるだけよ!」


 そう言うが早いか、月餅は偃月刀を振り回して触手を倒しながらも前に進み始めた。

 おいおいマジかよ。俺()って事は、俺も暴れる側に数えられてるって事かよ。

 はぁ……仕方ねぇな!!


「サポート程度しか出来ないぞ?」

「構わんとも! 俺が悉く倒してやろう!」


 仲良いが、コイツの『ガンガン行こうぜ』的な熱いノリには付いていけない時がある。

 あ、後朕項の殆どがそうだが脳筋プレイも付いていけない。

 俺の場合、どちらかと言えば力でのゴリ押しよりは弱点を付いたり、一撃離脱でのヒット&アウェイ戦法を使う事が多いので、戦い方としては力技の月餅と正反対だ。

 仲が良いとはいえ、そこら辺は相容れない……のだが、別にそれを嫌っている訳ではないし、それに『月餅の横で戦え』というパーティーリーダーからの命令だ。

 それには従わないとな。


「――で? 『暴れる』って具体的に何を?」


 伸びてくる触手を避けたり、斬ったりしながら隣で触手をどんどん減らしていく月餅に聞く――って危なっ!? 今後ろからの攻撃が掠ったぞ!?

 今の攻撃”女王”の砲撃だな!? このゲームF(フレンドリー)F(ファイア)あるって知ってんだろうに!

 俺が後ろを振り向いて非難の眼を”女王”に向けると、遠くで『ゴメン』と口を動かし、手を合わせている”女王”が見えた。

 ……今は許そう。だが、後で()()()()と話し合う必要があるな。


「うむ、あのでかい植物に一撃食らわせようと思ってな」

「さっき【羅漢王の一撃】ヒットしてただろ」


 阿呆みたいに派手なエフェクトの攻撃を。

 だが、月餅はそれでは足りないらしく、


「――あの程度では当てたとは言わん。触手も減って余裕も出てきたところだ。そろそろ前衛が出しゃばっても良かろう」


 ……活き活きしてんなぁ。


「【火尖槍】! ……では――行くぞ!!」


 月餅は武器に火属性を付与するスキルを使用し、駆け出す。

 ここら辺、ロールプレイの一環で属性的に【影魔術】に特化させている俺は属性が最初から付与されている武器を使う以外で属性的な弱点を付けないので羨ましい限りだ。

 本体に攻撃するのに、弱点をついた”女王”の一撃でちょっとしか削れないのなら、俺の通常攻撃で削れるHPなんてたかが知れているので、相棒である”ティンダロスの猟犬”を仕舞い、火属性が最初から付与されている武器”真・火燕短刀”を取り出す。

 ”真・火燕短刀”は文字通り、(ツバメ)の装飾がついた短刀だ。

 外見からそこまで強そうには見えないが、実際には属性攻撃力は高い上位武器なので、上級の敵でも戦える位の武器だ。


「準備は出来たか?」


 先に走り出した月餅に追いつくと、月餅が此方を向いてニヤリと笑う。


「おう。FFには気を付けろよ?」

「ハッハッハ!! そうなったらその時よ!」


 其の儘、月餅はヤ=テ=べオに接近し、偃月刀でその身体を切り裂いた。








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