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Next World Order――アサシンが行くVRMMOライフ――  作者: 野央棺
イベント1【変異せし森の捕食者ヤ=テ=ベオ】
14/25

14 イベントボス2

 この場にいる全員の準備が整い、後はタイミングを待つだけだ。

 というか、どうせ仕切りたがりが指示を出すだ――


「ぶっ放せー!!」


 ドゴーン!!


 ……。

 …………攻撃おっ始めたぞコイツ。

 一斉攻撃するって言ってたろうに、聞いてなかったのか?


「おい、女王さーん。……さっきアイツ等は一斉に攻撃するって」


 俺は一応窘める。

 が、”女王”は笑って、


「いやいや、こんなにでかいならどうせ一斉に攻撃してもバラバラに攻撃しても一緒でしょ。ほらほら、次行くよー! 【カノン砲(ラッチュ・バム)】」


 そう言うが早いか大砲を出現させ、


「もういっちょ行っくよー!! ――ファイアー!!」


 ドゴーン!!


 もう一度大砲をぶっ放した。

 ……なんかもう滅茶苦茶だな。

 常識的だ奴だなと思ってたけど、そうとは限らんらしい。

 そりゃもうこれ以上ない程の笑顔である。


「あ、”無法の女王”が抜け駆けしたぞ!」

「負けてられるか! 俺達も攻撃だ!」


 そんな姿を見て、”女王”の攻撃に負けじと、周囲のプレイヤー達も攻撃を開始する。

 プレイヤー達が生み出した幾つもの火玉や、炎がイベントボスに向けられる。


「――――――――!!」


 表現出来ない耳障りな声――と表現しても良いのかどうかは分からないが――を上げながらも、でかいウツボカズラは何百、何千といった触手を全方位に向けてくる。

 狙いは無く、ただ数が多いだけだが、レベルからしてみても例え高レベルのプレイヤーでも一撃を食らうのは怖いだろう。

 さてさて、じゃあ仕事を始めますかね。

 伸びてくる触手から”女王”を守る為に、俺と李、月餅の三人で立ちふさがる。


「――よっと!!」


 相棒である短刀”ティンダロスの猟犬”を振るって触手を切り落とす。

 どうやらVIT自体は低いらしく一撃で切り落とせたが、


「……触手を斬ってもダメージは無し、か」

「やれやれ、本当にただ後衛連中を護衛するだけになりそうネ」

「……むぅ、余り活躍出来んではないか!」


 触手を幾ら斬ってもHPゲージが一切減らない。

 とはいえ本体でもない触手一本処理した位じゃHPゲージの減りなんてコンマ程度だろうが、流石にこの場にいる護衛役のプレイヤー達が倒した数を考えれば、それなりに減る筈だ。

 だが、その減りが無いという事は、そういう事なのだろう。

 ヒッキーも遠いし忙しくて何の術を使っているのかわからないがバフ系の術を唱えており、”女王”の周囲が光る。

 近距離でない限りスキルの威力はMP準拠になるので、恐らくMP上昇とか属性攻撃力上昇とかの効果がある術だろう。


「――まだまだ連続で【カノン砲】! ファイアファイア!!」


 ドドドドドド!!


 ”女王”はカノン砲を幾つも出現させ、遠慮なく砲撃を行う。

 その砲から放たれた砲弾が、触手を焼き、本体へと到達して火を上げる。

 ……MP消費どうなってんだあれ?

 あんなにド派手なのに、なんであんなに連射出来るんだろうか?

 ステータスをMPに振って、遠距離系プレイヤー御用達パッシブスキルの【MP消費軽減】も覚えてるだろうけど、とはいえ彼女が使っているのは中位~高位のスキルの筈だ。

 ……装備とかだろうか?


「――っと!!」


 そんな事を考えていたので、何時の間にやら接近してきた触手に直前で気付き、慌てて対処する。


「――ボーっとしてないネ! ほら、女王を護るヨ!」


「わぁーってるっての!!」


 ”ティンダロスの猟犬”のリーチは短い。

 なるべく近寄るか、ギリギリで回避してからの反撃をしなければならないのが厄介だ。

 それに”暗殺者”として対人用ステータスにしてる俺にとっては、植物系モンスターは厄介だ。

 人型とか獣型モンスターなら頭部とか心臓とかが急所なので、そこを狙えば良いのだが、植物系はそれがないし、植物系の弱点である炎属性を覚えてないので、相性としては最悪なのだ。

 まぁこの職業(ジョブ)と武器を選んだのは俺だから因果応報というか、誰にも文句は言えない。

 それでも、俺達は討ち漏らしを倒しているだけだ。


「――ハハハ!! HPが削れないのは悔しいが、これ程の多くの敵と戦うのは楽しいな!」


 一番前に陣取っている月餅は、偃月刀を振り回しながらも笑っている。

 ……生まれる時代と世界を間違えてるんじゃないか?

 いや、まぁこのゲーム自体”第二の世界”と言っても良いんだろうけど。

 楽しそうに暴れる月餅を見て、羨ましいと思いながらも、触手を斬る。


「月餅は楽しそうで良いな。俺は触手をどうにかするので手一杯だ」


 少し離れた場所でボスの触手がプレイヤーを叩き潰し、絡め取っては口に放り込んでキルしていく。

 それを一瞥しながら、伸びてきた触手の一本を素手で吹き飛ばした李も俺の言葉に同意する。


「全くだネ。格闘家とか暗殺者には辛い相手ヨ。……でも触手が邪魔で本体まで攻撃があんまり届いてないネ。プレイヤーも少しずつだけど減ってるしネ。なら……月餅!!」


「応よ!!」

「――今の話は聞いてたネ? 触手、大技で吹っ飛ばすヨ!!」


 李の指示に、月餅が我が意を得たりとニヤリと笑う。


「漸っと出番だな! では、思い切りいかせて貰おう! では――【羅刹】!」


 月餅は徐に偃月刀を構え、精神を集中させ始める。

 月餅のユニーク職業(ジョブ)”赤髪鬼”のユニークスキル【羅刹】。

 一定時間の身体能力の大幅な上昇と、仰け反りや攻撃時の反動無効が付与される【狂化(バーサク)】、そしてデメリットとして一部スキルの封印を効果とするこのスキルこそが、月餅の職業にして異名の由来だ。

 月餅の赤い肌は徐々に黒くなり、髪は血の様な紅色へと変わっていく。

 その姿はまるで…………まるで……うん、何て表現すれば良いのか思い浮かばん。


「――では、行くぞ」


 月餅は一歩、前に踏み出す。

 そして、手に持った偃月刀を振り上げ――


「――【羅刹王の一撃】」


思いっきり、地面に叩きつけた。






 このゲームでは、各個人の技量を競い最強のプレイヤーを決める闘技大会が存在する。

 闘技大会・個人戦は年に二回行われる。

 その中で、二年目の一回目――つまり前々回の闘技大会・個人戦において、月餅は【羅刹】と【羅刹王の一撃】、この二つのスキルを以て準優勝となり、”赤髪鬼”の名を広める事となった。

 その時の優勝者は確かレムナントの”閣下”だった筈だ。

 その優勝決定戦の際、”閣下”に限界まで追い詰められた月餅が起死回生にして最後の手段として使用したのがスキル【羅刹王の一撃】だ。


【羅刹王の一撃】は威力、範囲共に高い非常に強力なスキルだが、変わりにデメリットとして『HPを1にし、使用武器を残り耐久値関係無く破壊する』という効果がある。

 デメリットがヤバ過ぎるが、それでも余りある威力のスキルなのだ。

 月餅のゲーム内でもトップクラスに高いSTRと組み合わせると、手が付けられない程だ。



 スキル名を叫ぶと共に、月餅が叩きつけた偃月刀から衝撃波が発生し、それが地を割って触手を巻き込みながらボス本体に一直線に進んで行く。

 ……すげー!! かっけー!!

 何か一人だけやってるゲームが無双ゲーなんだよ!


「――さぁて、ここからは私の出番だね」


 後ろから、”女王”の嬉しそうな声がする。


「そうネ。本体への道が開けたから、直接叩くなら今ヨ」

「鬼さんがこれだけやったなら、私も負けてられないもんね! ――【列車砲(ドーラ)】!!」


 ”女王”が呼び出したのは、車輪がついたでかい大砲だった。ナニコレ?

 ……うん、やっぱりコイツ等やってるゲームが違うよな。





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