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Next World Order――アサシンが行くVRMMOライフ――  作者: 野央棺
イベント1【変異せし森の捕食者ヤ=テ=ベオ】
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1 暗殺者は逃げる

VRMMOのお話です。

そこまでオンラインゲームやったことないので、設定的にはガバガバなところがあるかもしれませんが、スルーして下さい。


……はい、またもや暗殺者が主人公です。

好きなんですよ。剣士とか戦士とかよりも。

あと、VRMMOのジャンルで暗殺者が主人公って余り無いなと思ったので。


 フルダイブ型VRMMORPG”Next World Order”。

 圧倒的な臨場感と、触感や味覚すら再現されたリアルさ、AIによって日々進化、拡大していく広大な世界、選択自由な職業や人種、善行も悪行も、PKや建国でさえ、誰もがそれを可能という自由さ。

 魔法あり、剣あり、銃ありとあらゆるゲームの形を集めた”史上最高のゲーム”。

 取ったスキルやプレイヤーの行動によって、能力やスキル、職業すらも自分独自のモノへと変化してしまうという、今までのゲームではなかった独自性と発展性。

 それは人々に『世界の新たなる形、人間の新世界への到達』とまで言われる程の技術で再現された、人類にとっての文字通り”第二の世界(ネクストワールド)”だった。このゲームは急速に、しかも世界中の国々で爆発的に売れ、その売れ行きから最初は言語圏ごとに分けられていたサーバーが細分化され、国・または地域ごとに分けられる程だった。

 日本においても、フルダイブ型のVR機器が一般普及されたのに伴って国民の殆どが自分の”第二の人生”を生きる為に”Next World Order”を始め、それから三年が経過した。











《――プレイヤーネーム”ヘキレキ”さんお帰りなさい。第二の世界へ》






 そんな機械的な女性の声が聞こえて、俺は眼を開ける。


「――全員必殺(キルゼムオール)!! 俺達に楯突くなんざ百年早いぜぇ!!」

「我等”レムナント”の名の下に!!」

「くそっ! タグがタンクに向いちまって上手く攻撃できねぇ!!」

「クソッたれ!!」


 その場は、惨劇の場と化していた。

 剣や魔法、そして銃の弾丸が行き交っており、死んだときに出るエフェクトが視界を悪くする程だ。

 それを成しているのは二つの軍団。

 片方は全員が統一した黒い軍服を着た一団。

 片方は統一はされていないが、黒を基調とした一団。

 その二つの軍団が、激突していた――いや、軍服を着た一団が、圧倒していた。


「……これは……どういうこっちゃ」


 そんな中、俺はそう呟いた。

 少しやる事があったので珍しくゲームをログアウトし、再びログインしたら、既にこの状態であった。

 だが、現状を見ると、どうやら俺達の拠点が”軍事国家レムナント”に攻められているらしい。


 ”軍事国家レムナント”。

 日本サーバーにおいて巨大勢力を誇るプレイヤー達が作り上げた国家の一つだ。

 一人の総裁と、その下の二十二の大アルカナを冠する組織をトップとして成り立っている国家である。

 その所属人数は一般市民として暮らしている者やNPCを含めれば十数万と言ったところで、これは国家としては多い部類に入る。まぁ大半がNPCだけど。


 ”国”というのは、このゲームのシステムの一つで、拠点を持っているギルドの内、規模の大きくなったものが、運営に『国家樹立申請』を行い、それが運営に許可された場合になれるギルドの上位版みたいなものだ。

 ギルドとは違い、AIのサポートがあるが、国家運営シミュレーションゲームの様な要素があり、ギルドの持つお金を消費して、NPCの一部を兵士として簡易的にだが操る事が出来る。

 更に、善政・悪政パラメーターなるモノが追加され、これが悪政に傾くと、ギルドが持つお金が『横領された』という名目で勝手に減っていったり、敵対側へのボーナスが高くなるというデメリットもある。




 対して、俺が所属する黒服の一団は、暗殺者や盗賊という職業で構成された暗殺集団、通称”A”である。

 大して集団意識も無く、徒党を組んでいるだけで、基本的には個人プレーな組織だ。

 因みに、俺の職業は暗殺者。読んで字の如く、暗殺や隠密を得意とする職業だ。


「――レキ!! お前も主戦力の一人なんだから戦え!!」


 近くで軍服の攻撃を防御した黒服の一人が、ボーっと突っ立ってる俺の愛称を叫んだ次の瞬間には、別の軍服に殺され、粒子となって消える。

 俺は粒子となって死んでいった仲間を見てあらら、と呟いて手を合わせておく。南無。


 もうどちらが勝つかは明白で、しかも相手は”国家”だ。

 自分も請け負い、実際に幹部一人を殺害(キル)した実行犯であるが、デスペナルティは嫌だ。

 それに俺、レムナントの前衛連中に真っ向勝負出来る様なステータスじゃないし、集団戦は苦手だし。


「……やなこった」


透明化(インビジブル)】及び【気配遮断(ストーキング)】のスキルを使った俺は、非情だとは思うがその場から逃げる事にした。

 いや、だってデスペナルティは嫌だし。







 ”レムナント”と俺達が抗戦状態になったのには理由がある。

 俺達暗殺集団に、匿名でとある依頼が入った。

 それが『レムナント総裁及びアルカナを冠する組織の長である幹部の暗殺』だ。


 この”Next World Order”におけるデスペナルティは四つ。

 内三つは個人に関してで、


 一つ、『一定時間行動不能』


 一つ、『所持金の内一定額の消失。消失した金はPKであるならばPKしたプレイヤーに譲渡される』


 一つ、『経験値の消失。次のレベルに到達する為の経験値の半分が失われる。それによるレベル低下あり』


 というモノ。

 そしてもう一つ、これは国に所属している者が関わってくるモノで、


『国家の長、及び各組織の長の内八割が一定時間内にキルされた場合、その国家は解散とし、その戦いにおける敗戦側の戦死者は、復活(リスボーン)後勝利国の捕虜となる』


 というとんでもないモノ。

 因みに、捕虜といってもそこら辺はゲームなので、ゲーム内で勝利国にお金さえ払えば出てこれるし、ちゃんと食事も出されるし、ログアウトも出来るので、重く考えないで欲しい。

 更に、死んだプレイヤーは一定時間――凡そ一時間程度だが復活するまでの間、死亡したプレイヤー達が転送される『死亡者専用ルーム』に隔離される。

 中央に大きな画面が四方向についた塔が建っているこの中では、ゲーム内同様に食事をしたり、ネットを見たり、チャット等で駄弁ったり、死んだプレイヤー同士で会話も出来、一時間という拘束時間は大して苦にならず、過ごせる様に工夫されている。





 で、実際依頼を受け、実行した俺達はレムナントにとって国家転覆を謀った者で、実際に幹部が数人(キル)された訳で、まぁ普通は舐められたと思って報復するよな。

 俺でもそうするし。

 情報屋というモノがプレイヤーやNPCとして存在するし、レムナント程の大きい国なら情報部とかもあるので、数日もあればこっちの拠点の位置なんかはバレバレだとはいえ、何故このタイミング……。

 暗殺集団の拠点らしく、この拠点には隠し通路が幾つもあるので、混乱に乗じて脱出する。

 俺が出たのは、レムナントの都市が遠くに見える森林に隠れる様にしてある洞窟だった。


「ふぅ……何とか脱出出来たな。……メニューオープン」


 俺は一安心し、ぱっぱと砂埃のついた衣服を叩いてから出口の近くでメニューを開く。

 一言言えばメニューが開くんだから、便利な世界である。


「……おーおー……死んでる死んでる。まぁ余り高レベルがいなかったしなぁ……うち」


 半透明な青白い色のメニュー画面には、持ち物やステータス、フレンド等が表示されるが、国家や組織に所属している人間はそれに加えチームログが表示され、仲間の状況を見る事が出来るのだが、さっきからそこに死亡表示がズラリと並んでいた。

 ……あ、幹部連中も軒並み死んでる。

 こりゃ、レムナントも本気だな。

 多分NPC兵士だけじゃなくて、幹部を筆頭としたトッププレイヤー連中も出張って来た様だ。

 うちのチーム”A”は、長、幾人かの幹部連中が現在最高のレベル200にそれなりに近い130位で、それ以外は一桁や二桁の連中も多い『来る者拒まず、ガンガン行こうぜ』なタイプのチームなので、最高レベルが多いレムナントの幹部連中が出張っている場合、簡単にやられるだろうとは思っていたが、的中した様だ。

 因みに、俺のレベルは176だ。組織の中で一番高い。ま、一応何処にも行かないでそれ相応の時間プレイしているからな。これ位は上げないと。

 このゲームはメインとサブの二つの職業を常時装備出来る――他の職業にもなる事は出来る――のだが、メインの職業のレベルが自分のレベルとなり、職業がユニーク職業に変わってもそのレベルは引き継がれる。





 さて、俺が確認していると、メニュー表の上に被る様にして、


《長及び幹部八割の死亡を確認しました。ペナルティにより暗殺集団”A"は解散しました》


 という表示が出た。

 解散かー……いや、まぁ何人か意気投合した奴もいたけど、別にリアルじゃないから本当に死んでる訳ではないからいつでも会えるしなー……。

 それに、レムナントの幹部はレベル170~200の廃人達だって聞くし、不意打ちでもしない限り勝てる自信がない。

 因みに、このゲームは頭か心臓が消失すると即死亡扱いとなる。そこら辺は実にリアルだ。


「……李の所にいくか」


 馴染みの情報屋の所に行こうと決めて歩き出す。


「あ、一応その前にスキルをパッシブにしとくか」


 そう思って今まで切っていた【魔力感知】等の索敵系スキルを常時発動(パッシブ)にした瞬間、スキル【魔力感知】に幾つかの魔力反応が引っ掛かった。

 それも近い。これは……馬か?

 不味いな。このタイミングでここに外部から近付いてくるってこりゃ多分――


「――止まりなさい」


 良く通る凛とした先頭で近付いてくる女性の声。

 そして太陽に照らされて輝く赤い髪に、黒い軍服姿は間違いなくレムナントの一人だ。

 その年齢は、思ったよりも若い。多分十代後半位だろう。

 彼女は、馬上から俺を見下ろしてこう言った。


「貴方、”A”の一員だよね。大人しく捕まってくれると嬉しいな」


 あら、結構優しいのね。

 ……でも断る。




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