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はじめに~大学院を休学した話~

 私は地方高専専攻科で学士号を取得し、地方国立大学の院へと進学した。しかし、院進に強い動機があったわけではなく ―― 一応、専攻科までの専門であった化学工学を極め、ケミカルエンジニアリングとして大成したいという思いはあったのだが ―― 、そして入った研究室はこれまた私の性格とは一致しない、いわゆる体育会系研究室であり、無事精神を病むことになった。自分の精神の異常を自覚してから、精神科へと行き、休学が妥当であると診断書をもらい、その結果休学することになった。休学するまでに一悶着あったが、一部始終を書くと少々互いに都合が悪い部分があるので今回は書かない。これで、入学金と住んでいる安アパートの家賃はすべて無駄になったわけだ。


 大学院の研究室ではコアタイムが平日は8時50分から17時、土曜日は8時50分から12時までであったが、私の知っていたコアタイムの概念とは少々異なっていた。私はフレックスタイム制の場合で全員が顔を合わせる時間のことをコアタイムだと認識していたが、どうやら違うらしい。8時50分から17時までというのはフルタイムというのでは無いだろうか。もちろん大学院生になったからには、日が暮れるまで研究するという覚悟はあったからあまりそこの部分は気にしていなかったと思う。実験系の大学院生は最低でも夜9時まで残るべきというのが日本の大学の常識である。そもそも大学院に進学するということはよっぽど研究が好きであり、研究活動に愉しみを見いだせる人が行くところであり、私はこの部分では欠けていた。どちらかというと、すでに体系化された技術を学ぶことが好きだったのだ。もしくは、まだ勉強不足で研究するに当たる最低限の知識がなかったのかもしれない。自分語りとなってしまって話がそれてしまったので、研究室の話に戻そう。所属していた研究室ではコアタイムに遅刻した場合罰金が発生する。この話を他の大学へと進学した友人たちに話すととても面白がってくれたので、おそらく異常なのであろう。10時までに来なかった場合は50円、それ以降は100円となる。そして、コアタイムが存在しない日曜日と祝日にも罰金が発生することだ。罰金を払いたくなければ日曜日にも研究室に来る必要がある。なんとも横暴であるが、どうやらこの某地方国立大学では遅刻で罰金の研究室がまだ他にもあるらしい。しかし、プリンターのインク代や事務小物、挙句の果てには実験で欠かすことのできないニトリル手袋なども学生が自腹を切る研究室であったのはうちだけであろう。今年のGWに実家に帰省して家族全員で居酒屋に行ったときに、研究室のことを話したら、姉から「そんな研究室はヤバイから一回大学院やめたほうがいい。」と言われた。これも休学する一つの後押しになったのかもしれない。


 研究室の同期には恵まれていたと思う。一人は高専本科5年生の頃に同じ研究室であり、趣味を共有していた友人であり、もうひとりもいつも笑顔を欠かさない気前のいい人であった。今回の休学で二人の良い友人を失ってしまったと個人的に思っている。研究室関連の人とは、申し訳無さと自分自身への虚しさから動悸がするため、連絡を殆ど取っていないが、すぐに脱落してしまった私の分まで努力をしてケミカルエンジニアリングとして大成することを願っている。


 休学した私はすぐに物件を引き払って実家に帰る……ということはなかった。父親から「俺といるといつも説教食らうことになって嫌だろう。」と言われて、しばらくの間この安アパートの部屋で一人暮らしを続けることになったのだ。更に、父親から「一年間猶予をやるから全力で遊び続けろ」とも言われた。どうやら、アルバイト等金を稼ぐこともせずに疲れても遊び続けることで将来につながるらしいが、私にはとても眉唾ものに感じた。しかし、せっかく貰った猶予期間なのだから、全力で遊んでみることにした。このエッセイ集は大学院を休学したクソニートが綴る体験記や浅はかな思考を晒す、かっこよく言えば私小説に近いもの、元も子もない言い方をすれば自慰行為と同じである。好き者だけお付き合いいただきたい。

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