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第7話 残酷BBQ

 今回は残酷(残虐?)描写があります。


 あの世で手続きをする時に名前を記入するのだけど、名前に使用する漢字に関して一つ決まりがある。

 生前の名前ならどんな漢字を使おうと問題はない。注意すべきは生前とは異なる名前にする時だ。

 色を示す漢字は閻魔大王候補にしか使えない決まりになっており、その他一般人は使用不可なのだ。

 閻魔大王候補の基準は一定の魔力と人柄で、それらは神様が判定しているらしい。アヒルの時にそう説明を受けた。


「そういえば、色が付いた名前って決まりは、やはり神様が作ったのですか?」

「あー、当時ワシと葱ちゃんにどっちも “白” が付いてたから、神様が思いつきで決めちゃったの」


 身も蓋もない裏事情ですね。初代様が言う “葱ちゃん” って二代目のことのようです。二代目は初代様を “菜っちゃん” と呼ぶそうな。


「そんでもって魔力の基準も、当時判定をしてみたら葱ちゃんがどうにか扱えそうだってラインでね、神様がそれを判断の最低ラインに設定したの」


 これまた身も蓋もない裏事情ですわ。


「で、初代様と二代目がそれぞれ “白菜” と “白葱” って名前の理由は何ですか? この組み合わせって、お鍋を思い浮かべてしまうのですが」

「生まれて初めて食べたと思うよー。死んでたけど。葱ちゃんが作ってくれた鍋が美味しくてね、忘れない為に “白菜” って名乗ることにしたの。そしたら葱ちゃんもノリで “白葱” って名乗ってくれたの」


 ……私も父の元に身を寄せるまで鍋料理食べた事なかったわ。いやいやまたもや色んな意味で身も蓋もない裏事情だ。


「あー、そうだったのですか。で、ちょっと話がずれたので戻します。色付きの名前が却下されたら、代わりに付けられた名前を名乗らなきゃならないのですか?」

「一応考え直すって選択肢があるよ。何も登録する名前は漢字でなきゃダメってわけじゃないから。例えば “金城” って名乗りたかったけど却下された人は、読みをそのまま片仮名もしくは平仮名で登録しちゃえばいいの。同じ “金” を表す単語でも “ゴールド” だとセーフだし、わりと抜け道あるんだけどねー」


 何故この話題かというと、我々の目の前に転がる見苦しい女二人が、名前絡みの逆恨みから情報を流していたからだ。

 一人は「金の城って素敵」な理由で提出した “金城” が却下されて “禁錠” になり、もう一人は “桃香” と名乗ろうとして却下されて “百々花” にされちゃったそうな。後者はわりと良心的な変更だと思うのだが、そうは受け止めなかったようだ。


「くっ……早朝に出発ではなかったの……」

「騙したのね……」


 当たり前じゃん。スパイがいるとわかれば炙り出すよ。そして捕らえた後は尋問が待っているのさ。ほれ、鍋本部(通称名がこれ)が見えてきたぞ。


 ◇◇◇◇◇◇


 あの世時間で一夜開けてみたら、紅月さん編集の魔法うさぎミニ写真集があの世スタッフの間に広がっていた。 

 おかげでモテモテ。鍋本部に戻ってきたらあの世スタッフが寄ってくる寄ってくる。

 ずっとうさぎでいて欲しいと言われてしまったけど、人間の姿は本当に要らんのかね? 昨晩確認したら絶世の美女になっていたんだが、美女よりモフモフがいいの? 未来の上司がうさぎで良いの? グラビア写真なら「キャーかわいい」で済むけど現実に起きたら人として微妙じゃない?

 まあそれは置いておこう。縛った裏切り者を転がして尋問室へGO! だ。

 あの世スタッフたちが見守る中、【オテテ】操作でゴロゴロ転がして行く。

 初代様の防壁は解除された為、痛いとか言ってるけど無視だ。見た目にしても性器の部分にはモザイクかけたから問題は無い……いやあるな。

 ハッハッハッ、どうやらどの様な処置を施してもわいせつ物がわいせつ物である事に変わりはないのだね! しかし周囲への配慮は必要なので、この処置はきっと無駄ではない。

 それにしても何でこいつら開き直って変身しちゃったのかな。

 言い訳、言い逃れ、誤魔化す、その場で謝る等、平和的解決手段はあったのよ? そういった行動に出ていればただしょっぴかれるだけで、こんな晒し者な扱いにはならなかっただろうに……。


「えー、何あのお尻の動き」

「あの揺れあり得ない……」


 うんうん。君らもそう思うか。歩いていないのにプルンプルン揺れるなんてあり得ないよね。


「プリンとかゼリーが乗ったお皿を横に揺らしたら、あんな動きをしていたわね……」

「それ!」


 それだっ! 名も知らぬ人よありがとう。

 そうだよ、板にプリンやゼリーみたいな何かをくっつけたような感じなんだよ。

 お尻だけでなくおっぱいもそう。横から見ると胴体薄いし。貧弱ガリガリ体型に巨大おっぱいと巨大なお尻をくっつけた……?

 うむ、答えはきっとそれだ!


 ◇◇◇◇◇◇


 尋問室に到着。係の人が扉を開いて迎え入れてくれた。170㎝台半ばくらいの長身の美女さんで、胸は小さめ。


影月えいげつと申します。こちらがこれまでのまとめになります」


 彼女はこちらに自己紹介をしつつ、報告書を初代様に渡した。


「じゃあ始めて」

「かしこまりました」


 ここは拷問室ですか?

 そう言いたくなる光景が広がっていた。新たなる獲物である二名が短く悲鳴を洩らす。

 四人程の女たちが棒で全身を貫かれ、火で炙られていたのだ。

 アレだ。川魚を河原で焼くような、焚き火の回りに串を刺した魚を並べるやつ。

 それが人間で再現されていた。うん、見た目のインパクトが凄いね!


「穴はお尻の穴ですか? それとももう一つの穴ですか?」


 うむ、大丈夫だ。論理的思考に意識を向ければこの程度のグロ光景は平気である。


「お尻の穴です。ですが、この頃新しい焼き方を開発すべきだと思うのですよ」


 なるほど、そのようなお悩みですか。アウトドア系なら……これでしょ。


「トウモロコシくらいに小さく縮めてバーベキュー用の道具で焼くのはどうです? 仲良しさん同士を並べて差し上げるという慈悲の心も持つべきです」

「いいですね! 残りの者たちはそのようにしましょう」


 ここはあの世である。あの世とは天国であり地獄なのである。生前のモラルなんぞ持つだけ苦しむのである。悩むな! 受け入れろ!


「鬼だわ!」

「ひどいっ」

「鬼? 地獄には鬼がいるのですよ。子供の頃に聞かされませんでしたか?」


 親切に解説してやったらさらに喚き出した。


「思いやりがないわっ」

「拷問じゃない!」


 君ら「うさぎなんて骨折っちゃえば楽に殺せる」なんて言ってたくせに「思いやり」なんて言葉を出すのかい?


「思いやり? 思いやりの心はありますよ。ただし思いやりの心にすがって本当の意味で反省せず、改めて宣言したにもかかわらず、似た過ちを繰り返す甘ったれのクズが世の中多すぎます。なのでクズと判断したらとことんお仕置きをするのです。拷問? HPをある程度回復させれば外見は元通りなのですよ。生前とは違うのです。あの世は魂が削られるか成長するかのどちらかなのです。成長できなければ削られる一方なのです。ここで働いていて何を見て来ましたか? 自分が罰せられない立場だと思い込んで気が緩んでいるようですね」


 一気に言ってやった。

 抗うなら強くなれ! 弱い奴は他者に喧嘩を売るな! ここでは穏やかに暮らすだけなら誰も何もして来ないんだよ。


「うさぎごときに言われても何とも思わないわ!」

「うさぎと話しても無駄だわ。さっさと解放しなさいよ! そこのクソジジイ!」


 アホだこいつら。そんな喧嘩腰の命令口調で相手が思い通りに動く訳ないっしょ。反発を買うだけだよ。

 資料を読んでいた初代様が顔を上げた。


「ん? えー、クソジジイってワシの事? ……影月、準備が整うまで頭だけ水で覆ってあげて」


 ほらね。分かりにくいみたいだけど、初代様怒る時は怒るし、その時は容赦ないんだよ?


「了解しました」


 本当にアホ二人は頭部を水で覆われてしまった。もうすでに死んでるから息絶えるなんてことはない。苦しさが続くだけ。

 うん、救いがないな。

 それにしても何だろう。影月さんを見ていると懐かしい物を感じる。主に言葉を聞く度に懐かしさが……。言葉? もしや……。


「影月さんは出身どこっちゃ?」


 わざと方言丸出しにしてみる。私の意図を汲み取ってくれたのか影月さんは方言で返してきた。初代様も方言丸出しで介入し、一つの結論が出る。


「ほぼ同郷でしたか」


 住んでいた市町村は異なれど、同じ県のかなり近い地域だった。


「そのようですね」


 方言の微妙なイントネーションって残ってしまうからね。それを感じ取って懐かしいと思ったようだ。

 そんな雑談をしつつも、彼女は尋問と拷問の準備はバッチリ終えていた。


 ◇◇◇◇◇◇


 アホ二人は首から下を袋に詰めてからハンモックに乗せた。あの位置ならバーベキューの様子もバッチリ見えているはず。

 せっかく影月さんが特等席を作ってくれたんだ、遠慮なく恐怖におののいて知っている事を全て吐くがよい。

 私は彼女らの対面に立ち、人間の姿で焼き具合の管理だ。(色々と人間の方が作業しやすいと判断してこの姿)尋問そのものは初代様と影月さんがやるよ。


「いつ、そのような姿を手にしました?」


 串刺しの男女をトウモロコシを焼くように並べています。うむ中々の地獄の光景だ。


「……い……一年くらい? 地球基準の一年です……」


 一人ひっくり返してみよう。端っこのうつ伏せの女の子を……あ、おっぱい溶けてボトリと落ちた。そしてジュワッと溶けて消えた。これ何素材? 脂肪じゃないの? んー、成分は……何これよく分かんないや。


「ひぎゃあっ!」

「ぃいやぁぁああっ!」


 こちらの仰向けの子をひっくり返してみるか。あ、こっちはお尻溶けてら。やはりボトリと落ちた。成分はさっきの子と同じ結果。


「どなたから、どのように入手しました?」

「ユ、ユ、ユニ、コーン、様に、選ばれ、れ、れ……」


 おや壊れかけてきたね。次々ひっくり返すか。うお、女の子全員おっぱいやお尻が溶けてら。よく見ると小さいおっぱいと平たいお尻がちゃんとある。

 え……あれパッドだったって事? 中にシリコン埋めたとかでなく、上から被せてたの? そんなカラクリっすか。そーっすか。


「あ、あの世を消滅させ、させさせ、ら、ら、らくえ……ん、りそ……う……」

「し、しゃの、無い、せ、か、い、を、せい、じょうな……る……」


 しかし……ぬう、女の子だけ焦げ目がつかないな。おっぱいや尻肉は落ちて何故皮膚が焼けぬ。男共はしっかり焦げているのに。どうしてくれよう。


「平たく言えばクーデターだね。で、何処でどうやってその姿を受け取ったの?」

「初代様、少し切り口を変えましょう。その姿は誰の好みです?」

「ほそく、かよわく、清い乙女がユニコーン様に抱かれる条件……」

「もう一度、抱かれ、たい……」


 むう、醤油を塗ってみるか。……刷毛でぬりぬりっと。ひっくり返してぬりぬり。おお、香ばしい匂いが……。


「い、嫌……焼かれるより、あの方の素敵なアレに貫かれたい……」

「こ、この任務が成功していれば……今頃……」


 駄目だ。焦げ目がつかない。そういえばここに入って最初に見た串刺し女たちも焦げ目なかったな。どうしてだ? 分析するか。


「ふむ……ユニコーンは処女がお好きですか?」


 影月さん、処女好きでないユニコーンはユニコーンじゃないですよ? いやまぁ確認は必要ですな。


「処女じゃなければ抱いてもらえないわっ!」

「当たり前じゃないの、バカじゃない!?」


 あ、そうか。処女好きと性交は別だわ。愛でるだけで体は求めないってのはあり得ない事じゃない。

 

「壊れたり戻ったりしてるね。原因何?」


 分析に少々かかるな。会話に混じろう。


「んー、脅しが効いてるんでない? で、ユニコーン様とやらが絡むと元に戻る」

「真緑様、ご質問はありませんか?」


 えー、そうだなー、これかな?


「処女って初回限定じゃん? 二度目あるの? 騙されたんじゃない?」


 あれ? 大型地雷どころか核ミサイルの発射ボタンだったみたい。


「な、な、何を!?」

「わ、わた、わた、たちがっ、が、騙さ、れ、れ」


 あ、分析の結果出た。

 おお、一応魔術でコーティングされてたのか。パッと見た感じでは分かりにくかったわ。中々やるな。よし、解除しちゃおう。


「ようやくこんがり焼き上がりそう。しかし何でおっぱいとお尻が落ちたのかな? コーティングしてあるなら、あれらの部分も含んでるものじゃないの?」


 謎だ。それともただ単に適当だった? 有りそう。


「捨て駒に与えられる物が最低品質なのは当然かと。良い物でも試作品が精々でしょう。大物ぶっているなら惜しくないとか言い切りそうですよ」


 影月さん辛口やね。そろそろひっくり返すか。お、ちゃんと皮膚が焦げてる。よし成功。しかし魚と違って美味しそうには見えん。元々食べる気ないけれど。


「ひぃぎゃあああっ」

「ぃぃやぁだあぁぁっ」

「素直に答えて頂ければ焼きませんよ?」


 影月さん、素晴らしい飴と鞭です。

 その後、二人は洗いざらい喋ってくれました。


 ◇◇◇◇◇◇


「ねぇ、初代様……尋問と拷問って何が違うのでしょうか」


 尋問室を出た私は、うさぎに戻りながら初代様に聞いた。

 あの二人は焼かれはしなかったけど、代わりに梅の実と一緒に漬けられた。何故に梅? と思っていたら、影月さんは二人に向かってこう言った。


「さぁお二人共、立派な梅干しババアになるのですよ。大丈夫です、お肉が少なくても皮膚はしっかりたるみますから。なけなしの胸もしっかり垂れて張りを失い立派なシワシワおっぱいになれます。皺は人生の年輪。さぁ全身に皺を刻んで老いを味わいましょう」


 怖いよ。色んな意味で怖いよ。若さにしがみつく女にあの仕打ち。しかも自身の姿をバッチリ見れるように細工をしおった。なんという拷問! なんて地獄に相応しい拷問! 中々に有望じゃないか影月さんは。

 いやいや私が言いたいのは余りにも尋問と拷問がセットになってて言葉の違いが分かんなくなったとゆー……。


「えー、尋問も拷問もここじゃ表裏一体だから。喋れる程度に留めるのが尋問で、ひたすら痛めつけて魂削るのが拷問かな。あくまであの世基準だけどね」


 あー、大分抜けたと思っていたけどまだ人間だった頃の考え方やら感覚やらが結構残っていたようだわ。これ修正しないと。


「あの世基準……」

「そう。地球とは違う、あの世基準」


 うん、言葉の意味って時の流れだけでなく、世界観によっても変化するものなんだね。よし、修正完了。


「それじゃ、お昼食べたら出発ね」


 おお、遂に出発か。紅月さんと群青さん、お使い終えたかな。


「歩くのですか? それとも何かに乗るのですか?」

「君のアトリエにあったやつを使うよ」


 何があったっけ? 乗り物……乗り物……えー、思い当たらない。

 頭をひねっていたら初代様が答えをくれた。


「超便利リヤカーだよ。あれを群青に引かせる予定」


 あったね、作ったね、アヒル専用リヤカー。


「いやそれ乗り物違いますけど、乗ろうと思えば乗れますけど、荷台は四次元ボックス設置しているから荷物に関しては問題無いですけど、水上も走れちゃいますし壁登りできるしジャンプできるし……あー、確かに便利」


 抗議している内に納得しちゃった。いやいや大きさの問題があるよ。そのリヤカー、アヒル基準で作ったものだから!


「君はうさぎで紅月は猫。ワシは文鳥になるから荷台スペースは問題無し」


 今、群青さんだけ外しましたよね? 彼は人間の姿のままって事ですか?


「……それなら乗れそうですが、群青さんが可哀想じゃないですか?」

「一気に走り抜けるから群青が適任なの。まあその時になれば分かるよ」


 あのリヤカー引くの、精々幼児サイズが限界だと思うんだけど。横幅とか高さとか、大柄な群青さんには小さ過ぎてきついよ。一体どう解決するつもりなんだろう。


 次回は遂に出発しますよー。

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