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第39話 閻魔大王の仕事と再生の神の仕事


 ◆閻魔大王のお仕事◆


 いやぁ、癒されるわぁ。

 ズッコケてお尻を高く突き上げる形で倒れた(ついでにスカートがめくれてパンツ丸見えな状態の)乳袋様を見た私は、ものすごくホッとしていた。


「メリッサとは違うよね。格が違う。真の天然は広い心を持てれば許せるんだ」

「一体何を言っていますの!?」


 ガバッと起き上がり、元気に抗議をしてくる乳袋輝夜様。

 いやー、自分でも言ってる事の半分しか分かんないよ。でも一周回って気に入っちゃったのは確かだ。


「乳袋様が大好きって言ってんの」

「あなたに好かれても嬉しくないです、わー、あーっ!」


 お、足元のベルトコンベアが動き出したから必死で走り始めた。


 ガラスの壁の向こうには、色々な物がある。ベルトコンベアの先には真っ黒い穴があって、その穴に入るとランダムでその辺に転移させられる仕組みだ。

 グニャングニャン蠢いているドロドロした不定形生物(何か全身から分泌物が流れ出ている……)がいる大きなケージ。

 ぐっつぐっつ煮え立つ骨付き肉入りの、ギネスブックに載るような長身の人も余裕で入れそうな大きさの寸胴鍋。

 む、あそこにあるのは嫌な幻を映し出す大鏡だな。他にもたくさん嫌がらせイベントが満載だ。

 これが我が子・緑源と、私の中にいる神たちの案。次に何が来るのか予測がつかない、無限に続くお仕置き部屋だ。

 いやはや、えげつない。

 え? ベルトコンベアから降りればいい? ちゃんと対策済みのようですよ。

 左右にはビリビリ走る電流っぽい光の柵があって、それは決してこけおどしではない。

 ビリビリ痺れる→倒れる→ベルトコンベアで運ばれ穴へ。

 つまり結果は変わらないのだ。本当にえげつないよね。

 ベルトコンベアの速度は何段階かあり、調整は神様の部下がやっている。私を見てからは少し手加減してくれているようだ。ありがたい。

 いつ解放されるのかは知らん。我が子の案も企画だけだし、期間は神様次第だろうね。


「ちょっと聞きたい事あってさ。愛鈴って保険の事」

「見つけられるものなら見つけてごらんなさいっ! ホーッホッホッホッ」


 ありゃりゃ、相当自信がお有りのようで。


「それを知ってる人物って、君以外いる?」

「ルナシリーズが知って、いますわ、ね! ぐっ、また速度がっ」

「そのルナシリーズはゲスコーン分体の毒牙にかかったってのは知ってるよね? ヤバくない?」

「……言われてみれっ、ばー! 何が言いたいんですのっ!?」


 あ、また速度が変わった。少し速めになって、更に、あー……。


「こっちで保護する。聞きたいのは権能の所持の有無」


 加速が始まったなー。調整係の人が謝罪のジェスチャーをしているから、手元が狂っただけのようだ。


「何もっ、持っていませんっわ! 魔術に適性があり、わたくしとっ同等の魔力を、持っている、だけっですっ! 隠すのにっ権能なんて目立つものっ持たせっられるっ訳、ないーっあーっ」


 あ、コケた。穴の中に消えていったよ。

 お、出て来たね。あそこは植物……食虫植物系か。

 南ー無ー。合掌。


「まあ聞きたい事聞けたから今日はもういいわ。気が向いたらまた(もてあそ)びに来るね」


 さーて、閻魔大王の執務室に戻るかな。


 ◇◇◇◇◇◇


 ゲス共がやらかした仕掛けは無くなったけど、三途の川及び死者の河原での行方不明者は今後も出るだろうね。

 皆が皆、言われた通りにするとは限らないもの。フラリと集団から出ていく者は一定数いるし、それが自然だ。問題は好き勝手暴れるという点なんだよね。

 でもまあ、これはこれまでと同じ対応でいいと思う。原点が不明なのが不安要素ではあるけれど、ここは冥府の神様の領分だもの。代理である閻魔大王の仕事じゃない。


 閻魔大王というのは、大宇宙の冥府の神の代わりに死者たちの暮らしを支える役職。市長とかそんなイメージでいいらしい。

 当時神様は宇宙を支えるのに精一杯だったから、思いつきで初代様にやらせてみたのが始まりなんだってさ。

 で、偶然にもこの閻魔大王の仕事が神修業に丁度良かったみたい。

 街全体を見渡す事で周辺に漂う魔力のバランスを確認し、様々なタイプのトラブルに対処する事で自身の力を知り、制御の仕方や活用方法を覚えていく。

 初代様たち歴代閻魔大王はこうして力をつけていったのだそうな。

 私が閻魔大王をやらされているのは単に候補に挙がっていた紅月さんや群青さんより力(魔力の事)があったから。でも再生の神としてはすごく役に立つよ、この仕事。


 生者の宇宙と死者の宇宙の関係をエネルギー観点から話そう。

 生者の宇宙はエネルギーを放出している状態なんだ。放出され、消費されたエネルギーはそのまま消えてしまう。でも消費されなかったエネルギーは、密かに宇宙樹の枝を通って死者の宇宙へと流れていく。

 そういったエネルギーの一つひとつはとても小さい。その小さなエネルギーを回収し、溜めていく場所が死者の宇宙なのだ。

 十分に溜まったエネルギーは、次の宇宙創造に使われる事になる。このエネルギー管理は再生の神の仕事だったのね。


 つまり死者の宇宙を知る事も、宇宙経営には必要なのですな。

 でもだからと言って閻魔大王の仕事をずっとはやらん。紅星君が成長したら彼に引き継ぐつもりだ。

 だって私は本来リーダー向きじゃ無いし、太陽の権能の持ち主って例外無くリーダータイプだもの。彼の方が向いている。

 私にカリスマ性は皆無なんだよ……。


 ◇◇◇◇◇◇


「外向きが午前10時から午前11時と、午後1時から午後2時までか。閻魔大王の業務そのものは、その日のノルマさえこなせば後は自由なのね」

「そうそう。そのノルマがねー……って、書類仕事早っ!」


 閻魔大王の仕事内容とスケジュールについて四代目が説明してくれてたんだけど、そんなに驚く事? 20枚くらいしか読んでないのに。


 外向きってのはメカ閻魔大王を使って死者の問い合わせに対応する事を指す。「家族はどうなっている」とかそういった物だね。

 これからそのメカ閻魔大王の操作を教えてもらう予定だ。

 メカ閻魔大王というのは、いかにも地獄の閻魔様! なデザインのハリボテロボットの事。誰が喋っても声は厳つい閻魔様ボイスになる仕様らしい。閻魔大王が許可を出せば、あの世スタッフでも搭乗出来る。

 そんな閻魔大王様ゴッコは大人気らしいよ。皆さんそんなに偉い人気分を味わいたいのか。


「ええー、何で読むの早いの?」

「もっと早い人いるけど?」


 三代目の速読には及びません。私はあくまで一般人レベル。

 つまり四代目は(大変失礼な単語が続く)……よく務まったな。きっとこれまで物凄く頑張ってたんだな。だから業務中の飲酒は多少大目に見てもらってたのかも……?


 ◇◇◇◇◇◇


 メカ閻魔大王の操作楽しかった!

 高みからの視点、威厳のある重厚な声、平伏する人の姿、そしてレトロなロボの操作方法! ……こりゃ人気な訳だ。

 さて、お昼休みの時間ですよ。正午から午後1時になるまでの間は休みなのだ。

 ふむ、段々どこに再生の神としての活動を捩じ込めばいいのか掴めてきたぞ。

 ちょっとお出かけして買い物をする時間なら取れそうだね。でもどうシミュレートしても漫画読み放題の時間は取れそうにない。

 ああ、行ってみたいよ噂の漫画喫茶ビル。いつか行けるだろうか……。


 ◇◇◇◇◇◇


 待ち合わせていた食堂にやって来た。

 予約していたハンバーグ定食を受け取り、食堂内を見渡すと……ローゼルと群青さんが格闘談義に花を咲かせていましたわ。ああ、無手格闘家同士気が合ったのね。

 訳の分からん会話をしているので奴らは無視だ。ハテ奈さんを発見したのであちらに行こう。そもそも待ち合わせの相手は彼女だもの。


「回復用のスイーツオブジェにオススメのスイーツ一覧です」

「ありがとうございます。うん、座りやすそう」


 いやぁ、癒しのスイーツシリーズを作るにしても見た目だけでなく快適性も必要じゃん? 休むのならどっしり座ったり寝転んだり出来なきゃね。


「しかし随分とファンシーな見た目になりますね」

「神様に貰った惑星にさ、最初の拠点として広めのプレハブ住居を頼んだらさ、候補にアンパンドームとメロンパンドームなんて物があったからね。もうファンシー路線でいくよ」


 魂にまでファンシー趣味は刻まれているようだからね、開き直るしかないのさ。


 さて、夕食後にようやく惑星の現地視察だっけ。今日は午後5時の終業まで、あの世スタッフに姿を見せ続ける予定だ。

 うさぎでなくてガッカリするかと思ったら、”毎年十二月三十一日と一月一日の二日間、うさ姿で業務をこなしてください あの世スタッフ一同“ という要望書が執務机に置かれていたよ……。

 うむ、これくらいは叶えてやろう。なお、まだ十一月です。


 (注:あの世スタッフには休日があるけれど、閻魔大王に休日は無い。代わりに仕事は「きっかり朝9時から夕方5時までで残業一切無し!」になっている。ついでに盆休みとか年末年始のお休みとかゴールデンウィークなんて物は存在しない!)



 ◆再生の神のお仕事◆


 宇宙船に乗って(運転はハテ奈さんだ)目的の惑星に到着!

 指定された地点にちゃんとアンパンドームが建っていたよ。

 大きさは体育館くらい? そして物凄くアンパンだ……。食べられると勘違いしそうな程のリアルさだよ。

 何て所に凝るんだろう……でもそういう姿勢は大好きだ!


 さてさて、ここを拠点にして色々といじって行く予定です。中に入ってみると、ドームの中はすごく広かった。野球が出来るくらい広いぞ。

 私は早速下見に行くから居残り組に荷物の整理を頼もうか。リコちゃんとアナさん、ハテ奈さんを残してツバキさんに乗って……えっ!?

 何故レアとペンネがツバキさんの頭上におるっ!!

 ……どこかに隠れていたのか?

 そうなんだろうな、はぁ……。


「どうしてレアとペンネがいるの?」


 私はツバキさんに尋ねる。こいつらは幻獣共のまとめ役にしておいたから、本来は幻獣エリアにいるはずなのだ。


「何でも下見代表とか?」


 呆れた心情を隠さないツバキさんの言葉に、私は肩を落とした。ああそうだ、こいつらはいつもこうだった。


「下見かぁ……その屁理屈があったかー……」

「さあ、出発なんだな雑草!」


 悪びれた風も無く堂々としたその姿を見ていると、実はこいつらこそ最強の存在なのでは……? と思ってしまう。


「どうしたのだ? ローゼル様と二人だけになっても下見ではデートにすらならないのだから、我々がいても同じなのだ」

「とゆーか、ツバキを乗り物にする時点で二人きりでは無いんだな!」


 あ、ローゼルがへこんだ。昼休みの時の事を気に病んでいたらしく、挽回しようとしてたんだよね。私は気にして無いっちゅーに。


 ◇◇◇◇◇◇


「うーん、海を作った後がこんな感じか」


 ツバキさんに乗って周辺を探検し終えた後、私は惑星全体を探査した。そして皆への説明と今後の為に、地球儀の様な物を立体映像で作った。

 陸地が北極から南極までずーっと続いていて、しかも紡錘形。つまりオムレツとか、ライスをたまごで包んだタイプのオムライスを縦にしたような形だ。

 流石は死者の宇宙。生者の宇宙ではありえない形状の大地を創りおった。

 さらに陸地がこれしか無い。大小を問わず島は一つも無かった。そう、島が一切無いのだ!


「ありえない形状ですね……」


 かつて大地の神だったアナさんもビックリらしいです。


「死者の宇宙の惑星、噂以上でした……」


 同じくリコちゃんもビックリしている。


「真緑、死者の宇宙は確か……」


 ローゼルの顔がひきつっていた。聞いた事はあると思うけど、本気にしていなかったのかな?


「好きな色に着色出来るよ。こんな感じに」


 映像をいじって大陸を黄色く着色。中央にケチャップっぽい色を付け加えてみた。

 おお、オムレツ及びオムライスっぽい。


「海は……大陸の周囲を白で丸く……お皿の縁がエメラルドグリーンで、お皿から外れる部分を深い青に……と」


 シミュレーションだけどね。ああ、「元」が付くのを含めて大地の神たちが愕然としている。

 これが死者の宇宙の惑星の特徴。ゲーム的世界を作って遊ぶのに向いているのだ。

 もちろん地球っぽく作る事も可能だし、大地の神向けの練習場としても使える。ただツール作成方法が失われた為、ローゼルたちの時代には大地の神の修業場として使えなくなっていたようなのだ。

 ツール作成は大宇宙の再生の神の手による物だったから、その存在が消えたせいで次代に受け継がれなかったのね。

 冥土院一族の人々がその事実を覚えていて、ツール復元の為の研究を行っていたのだそうな。

 一つの惑星を使って実験しまくったおかげで現在は十分なデータが揃い、ツール増産計画の目処が立ったとの報告を今朝受けた。死者たちの暇潰しにもいいので私も神様も喜んで許可を出したよ。


「恐るべし死者の宇宙……なのだ」

「ご丁寧にこのオムレツ大陸はケチャップのかかってる中央部分が盛り上がってるんだな」


 おお、オムレツ大陸か。語呂がいいな。しかしこの形、新たに閃いてしまったぞ!

 早速立体映像をもう一つ作り、こちらは揚げパン風に着色する。これでは足りんな、パン粉っぽい形の奴を散らし……よし、完・成!


「カレーパン来たんだな!」


 オムレツもいいけど、カレーパンも美味だぞー。


「雑草の食い意地は変わっていないのだ!」


 いやー、どっちがいいかなぁ? アンパンドーム的にはカレーパンの方が色合いの面でまだ合う気がする。でもファンシーさだとオムレツの方が合うかも?

 ああっ! どっちを選べばいいのっ!!

 ……嘘です本気じゃ無いです。


「あのぅ……これ、実際の地面の色はどうなるんです?」


 リコちゃんの疑問は当然だろう。


「オムレツ大陸なら真っ黄色だね。大丈夫、これ一例だから。ちゃんと緑に覆われた大地にするから。利用予定者から流石に異議が出たんだよ」


 ほっとする皆さんだが、それはあくまでお外の事。アンパンドームは連絡・管理用の施設にし、その他の建物は食テーマごとの内装にせよとの要望があった。


 曰く、かき氷に頭から突っ込みたい。

 曰く、絞ったホイップクリームに埋もれたい。

 曰く、ビールの泡で泳ぎたい。


 いやぁ、皆様食い意地が張っていらっしゃる。内部に食べ物系が無かった反動かなぁ……。


 ◇後日談◇

 惑星名は ”クイージ・ハッテル“ になり、大陸名はマジで ”オムレツ大陸“ になった。

 オムレツ大陸の語呂が良すぎたんだ……。



 ◆これからの事◆


 転移陣の設置も終わった。

 ……神様、この作業くらいやってくれてていいじゃん!

 会話! 会話で交わしたよね!?

 ええー、許可だけって何よそれ。

 設置までやってくれてるものだと思っていたら、「道具は用意しておくから、好きな場所に設置してね!」っちゅーまさかの落とし穴!

 今度ゆっくりじっくり話そうや、ちくしょう。


「そういやローゼルがいた惑星はこれからどうするの?」

「悩みの種が半分無くなったとはいえ、現状何かを変える必要も無い。大地の神の研修地として使うくらいか。例の惑星に送り込む戦闘員が必要なら言ってくれ。魔王や勇者をやっていた奴らがいるし、ゲス連中への仕返しと被害者救出だと言えば協力してくれるだろう」


 悩みの種のもう半分て……ああ、まだ近くに健在だものね。


 メリッサはゲスコーンとイチャイチャしていた惑星の方に行っちゃったらしい。私が ”サゲマーン“ と名付けた方だね。(何と、私のネーミングが採用されてしまった!)

 ゲスコーン分体たちが理想王国作っている方…… ”グズデゲス“ と名付けた方ね、あちらに行かなかったのは馴染みが無かったからかな?

 ともかく惑星サゲマーンにメリッサは籠った。しばらく出てこないだろう。

 しかしそこには乳袋様の秘蔵っ子・愛鈴が隠されていた!

 ……というわけで、紅月さんに愛鈴回収を頼んだ。

 ”月“ の眷族、ペットも含めて総出です。今は冥土院一族からも人手を借りて作戦遂行中のはず。

 そう、ソレルさんは本当に ”ハム子“ として ”月“ の眷族のペットになってしまったのだ。あくまで助っ人的立場なので、一応大地の権能を戻しておいたよ。


 オレガノさんはマートルさん、マジョラムさんと共に大地の神として復帰し(私が修復した大地の権能を戻した)、自由に過ごしている。

 アンジェリカさんはアナさんの頼みで目覚めたアニスとチコリの世話をしつつ、アナさん専用の雑用係をしているよ。将来は軍神系の教育係をしてもらう予定だ。

 それからカモミールさんとローズマリーさんだけど、私の中で我が子たちと交流している。

 二人共魂の修復は終わったけれど、今のままだと大地の権能を渡せない。魂そのものが弱体化したために神になれるラインを下回ってしまったのだ。

 下回り具合がほんの少しって所が救いかな。まったく、やってくれたねあの性悪女共。


 例のシナリオを分析した結果、「弱体化させつつ神核を乗っ取る事」が最終目的だった事が判明した。

 イリアちゃんは「権能が無い時点で弱体化してんじゃん!」って屁理屈を主張してシナリオペナルティを回避し、神核乗っ取りのみに集中したそうだ。ソレルさん本当に幸運だった!

 他の人たちは「弱体化」をそのまま受け取った為、苦戦する羽目になった模様。

 ただ、カモミールとローズマリーの担当者たちは本当に実力があった。性格の悪さも手伝って、対象の弱体化に成功してしまったのだ。


 そういった理由で、カモミールさんとローズマリーさんの二人は地球で人間として人生を送ってもらおうと考えている。ネネさんに転生先を相談しなきゃね。

 あー、そうそう。イリアちゃんとオーレリーちゃんは神様経由で冥土院一族に預けた。今頃かの一族たちからスパルタ特訓・特盛を受けているはず。

 ハテ奈さんに聞いたその内容は、ある意味とってもスパルタだった……。

 頑張れ、君らはきっといいコンビになるよ!


 ◇◇◇◇◇◇


 太陽と月の代わりの照明が届くのは明日になるそうだ。これで四季とか気候の設定が可能になる。

 しかしこれ、時間毎に細かく確認せにゃならんのよね。閻魔大王の業務と並行して行うとなると、こりゃ明日は目まぐるしい事になるぞ。

 そんでもってその次は……。


「例の惑星って、本当に ”レーノ“ って名前なんだよね。閻魔帳に登録されている惑星名が ”レーノ“ だったの」

「……偶然ってすごいな。そこにはいつ行く?」

「ここの事が一段落ついたら行く予定。いい中継点があればいいんだけど、無かったら戦艦仕様の大型宇宙船を出すしかないね」


 そして混沌の渦だ。これはどうしても後回しになってしまう。でも宇宙樹の事やら ”運命“ の事やら色々重要だからね。特に ”運命“ は今度こそ表舞台に立ってもらうぞ。


「そうか。……結婚式だが、ウェディングベールはラベンダーが作っている。うさぎ用だぞ」


 ブハッ!

 ローゼルの方が結婚式ノリノリじゃん!? 私、結婚式の事忘れてたよ。

 いえ、夫婦になるのは望んでいるのよ? でもあの公開処刑としか思えない結婚式は……。

 嫌ぁーっ! 恥ずかしいーっ!!

 世の女の子たちは何であんな物に憧れを持てるの!?


「キャー! ラベンダー、グッジョブですぅー!」


 突然リコちゃんの叫び声が聞こえてきた。ああ、向こうとの通信が成功したのか。


「はー、これは結婚式を口実に ”運命“ を引きずり出すかな」


 よし、混沌の渦行きを優先しよう。巻き込んじゃる!


「俺も彼には会いたい」


 ああ、色々お節介焼いてくれたそうだものね。混沌の渦に行く時はローゼルも連れて行こう。


「リコちゃん、繋がったのならそちらの責任者のグリューネさんに挨拶したい」

「はいっ! ラベンダー、グリューネさんを呼んでください」


 通信画面の中にチラッと見えたウェディングベールは、可憐なお花付きでとても可愛くて綺麗だった。

 ……紅月さんが激写しまくる未来が見えたわ。

 あれを頭に着けたうさ姿の私か。……アリだな。

 後で写真でじっくり見れるなら、耐えられるか? ……耐えてみせよう。


 次回で最後です。

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