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第15話 真相ポロリと旅の終わり

 少々解説を。

 「けんぞく」の漢字変換で、「眷族」と「眷属」のどちらにするか迷いました。悩んで考え抜いた結果、スマホに丸投げする事にしたのです。

 ところが、うちのスマホったら「けんぞく」をそのまま漢字に変換してくれません。一字ずつ漢字変換する羽目になり、「族」が先に変換候補に来たので「眷族」になったのです。

 辞書ではどっちでも良さそうだったし、問題はない!……はず。


 ◆黒幕判明◆


 オレガノは自ら天空の城を出た。調査名目で出れるのなら、もっと早くに出来たのでは?

 そうリコちゃんに疑問をぶつけたら、きっと色々あったのだと云う回答が返ってきた。ふーむ、オレガノ当人に会ったら聞いてみるか。


「ずっと不思議だったのです。あのゲスコーンとミントですよ? 頭が足りているのか疑問を持つ程の芯まで色ボケになってる二人ですよ? 捕らえられて監禁され、ようやく外に出られた時には今の天空の城は完成していましたし、各地下都市の設計やら何やら全てが決まっていたのです。誰が考案して実行したのか気になりますよ。一応ゲスコーンに聞いたんですけど、 “俺様とミントの愛の力に決まってんだろクソボケ。そんなつまんねー事で話しかけんなつるぺたドブス。てめーは大人しく役割こなしてりゃいいんだよバーカ” と言われました。あいつ相手によって口調も態度もガラリと変わるんですよ。あ、ちょっと逸れましたね。とにかく、背後に誰か居るんじゃないかなーとは考えていました。けれど調べようにも色々と雑用を押し付けられたり、単独行動を封じられたりしていたのです。形は違えどオレガノたちも似たような状況だったのでしょう」


 成る程。確かに頭の回る誰かがいて、調査を妨害出来る立場にいるともなれば苦戦するか。


「となると、誰が裏にいるのでしょう? ノワさん、心当たりはないですか?」


 “輪廻の輪さん” では長いので “ノワさん” と呼ぶ事にしたのだ!

 何だかめっちゃ喜んで、しばらく回り続けてた。気に入ってくれて何よりだ。


[一人居るぞ。動機も十分だ。大宇宙の月の神だな。あいつは創造神様を恋敵として見ていた。しかし想い人の大宇宙の太陽の神もゲスコーンに殺された上に権能を奪われたしな、その辺りがよく分からんのだ]

「は? 三角関係ですか? しかし我が子が口にしたのはかわいい弟子たちの事ですよ? 太陽の神の事なんて口にしませんでしたが?」


 そういえばそれっぽいのは居たか? 過去の映像で出てきた男がそうなのかも?


[ああ、それはこういう事だ]


 ノワさんが図を書いてくれた。 “創造神” に対して “太陽の神” からハート付き矢印。 “月の神” から “太陽の神” にハート付き矢印。 “創造神” はどこにも矢印がなかった。


「ああ、片想いだけで両想いが無いんですね……。太陽の神と月の神は、それぞれどんな人物だったのですか?」

[太陽の神は絶世の美男だが、女嫌いだったな。月の神は絶世の美女で良妻賢母が行き過ぎたヤンデレ女だった。もう一度言うぞ。ヤンデレだ]


 大事な事なの? 大事な事だから二度も表示したの? あれ、リコちゃんさっきから喋ってくれないね。


「リコちゃん?」

「……どこから話すかちょっと迷ってて、んー、まぁ、創造神様と太陽神様の出会いは最悪だったんですよ。月と組んで創造神様にあれこれ命令して、まるで自分が一番偉いんだと言わんばかりの横暴な態度でした。当然弟子である私たち大地の神たちも彼に対する印象は最悪でしたね。冥府の神様が怒ってお仕置きしてくれた後、やっと大人しくなりました」


 そうだったのか。我が子の反応は静かなものだから、その頃の事は折り合いがついてるのかも。


「どうしてそうなったのか、いつの間にか太陽神は創造神様に想いを寄せるようになっていました。しかし創造神様はまだ警戒していて、 “友達” どころか “知人” 程度の距離を保っていましたね。眠りにつく頃には信頼するようになっていましたが、あれは恋愛成分ゼロだと思います」


 本当に何があった。うーむ……恋愛物としてはよくあるパターンだけど、現実はそんな物って見本だねー。


「月はどうです?」

[あいつはひたすらヤンデレ化していった。最初からヤンデレじゃん? って仲間と話して盛り上がったな。懐かしい。ともかく月は太陽と結ばれるのだとか、夫婦であるべきだとか口にしていた。マジで口にしていた。何であんな奴が選ばれた。基準がどうなっていたのか今となっては知る術が無い]


 よく宇宙経営(笑)成り立ったね。忍び耐える自分に酔っていたから仕事だけは上手く運んでたとかそんなオチ?


「月の神の特性は厄介なんですよ。隠れ、忍び、闇の中で対象を葬る術に長けているのです。今思うと暗躍や策謀にとても向いてますね。味方なら頼もしいですが、敵に回すと厄介なタイプです。敵に回っていたから、あー……彼女ならやれますねー」

[出来るな。しかしどうして太陽の神まで殺した?]


 犯人が大宇宙の月の神なら疑問だけど、実行したのはゲスコーンなんでしょ? ならちっとも不思議じゃないよ。


「単にゲスコーンが命令無視したってオチもありますよ。精神を操っていたのでなく、唆してけしかけただけなのなら十分可能性があるのでは?」

[それだな!]

「それですね! 表に出ない理由もスッキリしました。月の神はゲスコーンの好みド・ストライクのはずなんですよ。彼女一途ですから太陽の神以外の男性を受け入れないはずです」

「制御できない厄介者を手駒にしちゃって自分の首を締めたんですね。結構間抜けなのですね、月の神って」


 うーん、ちょっと憎めなくなってきたぞ。我が子の分もバッチリお仕置きはするけどね。


[あったぞ。恋模様を観察していた奴が作った “御月様おつきさま痛々(いたいた)失恋一本道” なる本!]


 私とリコちゃんは、そのタイトル名に揃って吹いた。



 ◆創造神の回想◆


 世界の終わりは映画の様な破壊的な物ではなかった。ただ自分以外のあらゆる存在が一瞬で消えてしまっていた。

 見えるのはただの暗闇。濃淡も無い闇そのものだった。

 その闇から突然極彩色の渦に巻き込まれ、再び闇に戻った時、私はやっと自分の体を見て感じる事が出来た。それまでは自分という存在は認識していても視覚的には何も見えず、感覚的には何も感じていなかったのだ。

 髪がとてつもない長さに伸びていて、さらに色は明るく鮮やかな緑色だった。前髪をつまんでよく見ると、一房だけ金色だ。白髪が集中していた場所だった事を思い出した。

 お腹引っ込んだなー、贅肉どこ行った? よく見ると全裸じゃん。どうにかならない? そう思っていたら布を肩にかけられた。


「創造の権能を得た者よ、全てを作り直すのだ」


 振り向くと、くたびれた風体の老人が居た。


「あなたは?」

「どのように見える」

「疲れ果てた老人に見えます」

 老人はホッとしたような表情を見せた。一体何なのだろう。

「そうか。本物だな」


 老人が消えかかった。


「あの、これ、ありがとうございます」


 お礼の言葉が届いたかは分からない。言い終えると同時に消えてしまった。

 一体何だったのだろう? “創造の権能” って、そんな物持っていたっけ? それに創造って、何をどれだけ作れるんだろうか。そもそもどうやるの?

 今作りたい物……うーん、一先ず地面があると安心かな。地に足がついてる感覚がないとどうも落ち着かない。

 そんな事を考えていたら足元に地面が現れた。同時に地面の面積分だけ周辺が明るくなる。

 現れた地面は私を中心にどんどん広がっていき、見渡せる範囲もぐんと広がった。

 少し疲れを感じたので「ここまで」と思ったら地面の広がりはそこで止んだ。そしていつの間にか空も明るく真昼のように真っ青な色になっていた。


「これが創造……?」


 呆然としていたら、ポタポタと魂たちが落ちてきて形を変え出した。人間に動物と様々だった。

 魚までいたので池を作った。それだけだと寂しいので草を地面に生やし、木も生やした。平らなのは味気ないので丘も作ってみた。

 人間の為に建物を幾つか作り、気付くと一つの村が出来上がっていた。

 それが創造神としての最初の一歩。

 私は私が出来る事をした。けれど太陽と月は、私の行為が不満だったらしい。「もっと大きく全てを一瞬でやれ出来損ない」と言われたっけ。

 当時は物凄く頭にきたけれど、ずっと後になって太陽から話を聞いて、原因が判明した。

 太陽と月は大勢の候補者の中から、競争によって選ばれた。彼は創造神も同じように選ばれたのだと思っていたそうだ。

 漫画とかでよくあるデスゲーム的なものをリアルで本当にやっちゃったみたい。太陽と月はそうして選ばれた、いや勝ち残った。

 選定の中で権能を理解し、馴染んでいったから、正式に権能を得ると同時に完全に扱う事が可能だった。

 そんな二人からすると、私は相当見苦しく見えたのだろう。まぁ自覚はあるよ……。

 私の事情を話したら、太陽の態度がガラリと変わった。一方で月の私に対する態度は更に冷たくなった……。

 月はまだいい。仕事に支障がなければ仲良しでなくてもいいのだ。

 けれど太陽の変わり様には困った。恋愛なんて、今さらだったのだから。


 宇宙の創造には二つのやり方がある。

 一つは以前の宇宙を一つ一つ再現していく事。言い換えると再構築。

 もう一つは創造神と太陽神が協力して一から全てを創造していく事。

 私は結果的に前者を選んだ事になる。全て成り行きだったのだけどね。後者は本当に今さらだった。

 神話の中での創造は、神様ひとりで成しちゃったり、男と女の神が協力したりと内容は様々だ。

 多分ミントを乗っ取ったメリッサは男と女の神が協力し合うパターンの色ボケ版を夢見たのだろう。

 うん、色々スッキリした。殺された理由に納得した。月があの時までに何を狙っていたのかも見当がついた。

 じゃあこれからどうしよう?

 ここは本当に居心地が良い。

 私を助けて逃がしてくれたローゼル。私は生きていていいらしい。

 私を包んでいた魔力の主は、ローゼルと一緒に居たうさぎさん。あの防壁魔術はずっと消える事なく私を守ってくれた。そして迎えに来てくれた。

 私は彼女を母として再誕する。けれど、どんな存在として再誕すればいいのだろう?

 彼女以外との会話は可能だろうか。今抱えている疑問は冥府の神でないと通じない内容だし。

 宇宙全体の本格的な再生時、あの時見た歪み。

 前の宇宙がどうして終わったのか、真相は語られなかった。おそらくその時間も無かったんだろう。

 最初に私の前に現れたあの老人が先代の大宇宙の冥府の神だと思う。今の大宇宙の冥府の神が出来ている事の範囲を鑑みると、太陽と月の選定をしていたのは彼ではない。

 うーん、謎が多い。それにどうも自分の不始末のようで、創造神をやめるのはただの逃亡に思えてきたぞ。

 本当に、どうしようか。



 ◆抱腹絶倒◆


 色々事の真相が見えてきた。ぐーすか寝ている初代様を叩き起こそう。


「初代様ー、起きて下さい。さっき新月さんとやらからケータイに電話あったですよ」


 文鳥ボディをうさ前肢でユサユサ。

 はっ! もしや、これって素晴らしくかわいいワンシーンなのでは!? な、何故こんな時に限ってカメラ係が寝ているのだっ!


「えー……何か変化あったの?」


 ムクリと文鳥姿の初代様が起き上がる。ぐお、文鳥かわいい。不意討ちくらった。


「オレガノさんとやらが捕虜になりました。色々話を聞けそうですよ」

「よっしゃ! まともなのゲット!」


 うん、アニスとチコリはアレだもんね。リコちゃん以外でまともなの来たの嬉しいよね。

 初代様はケータイを出して誰かにかけた。


「新月? ごめんね、寝てた。で、オレガノ捕虜ってホント?」


 新月さんと色々話し出したので、私は紅月さんを叩き起こすことにした。群青さんは休んでいていいと思う。だってリヤカー引いてもらってるんだし。肉体労働者は大切に扱わないと。


「紅月さーん、面白い本をノワさんが出してくれましたよ。一緒に読みましょう」

「……えー、マニュアルはもう読みましたよー……はい……」


 紅月さんは寝ぼけて私に冊子を渡し、そのまま眠ってしまった。


「何ですか? えー “月の神の権能ガイド” ……他人にホイホイ見せていいものですかね?」


 せっかくなので読もう。ちゃんと目次付きなのね。


 一、月は生命の誕生を補助する役割を持つ

 二、月は見守り続ける役目を担う

 三、月と太陽の関係について

 四、月の眷族について

 五、その他注意事項


 読み終えた。リコちゃんに渡す。元大地の女神のリコちゃんなら問題ないっしょ。

 ふー、ちょっと考えよう。

 月が地球の生命誕生に深く関わっていて、月が無ければ生命誕生が無かったと考えられるくらい、月は重要な存在だというのは元々知っていた。

 太陽は適度な距離から外れると、熱(暑)すぎたり寒すぎたりで恩恵なんてほぼ無である。これも知っていた。

 で、神としての役割だけど、月は太陽を利用出来るが支配は出来ないと書いてあった。

 何のこっちゃと思ったけど、考えてみると当然の事だ。わざわざ書いたのは先代が勘違いしたから?


「ノワさん、さっきの本を見せて下さい」

[腹筋と呼吸、この二つを覚悟せよ]


 ページを開いて数秒後、ノワさんの忠告通り腹筋が痛くなる程笑い、呼吸をするのが困難になった。

 完読にどれだけかかったろうか? 読み終える頃には起き上がる事は不可能になっていた。


 感想:何でこんな人物が大宇宙の月の神に選ばれたんだ。

 以上


 私は神様への質問事項を箇条書きにしているメモに、新たにこの事を書き加えた。

 途中で思い出しては行動不能になり、字もおかしくなっちゃってるけど、いいや。これはこれで伝わるでしょ。

 リコちゃんも読みながら痙攣している。


「お、お、御月様おつきさま、ひっ……ひどっ! その解釈とっ、行、動はな……いっ」


 抜粋しようか。先ずは選定終了から間もない時期のやつ。


 “最高の女であるわたくしに相応しい御方です。今は冷たいけれど、使命に忠実な方ですから、これから時間をかけて愛を育めば良いのですわ”


 自分で自分の事最高の女って言っちゃってるよ。さらに相手が自分に恋をすると信じて疑わない様子。この時点でお花畑思考決定です。


 “あの創造神は役立たずです。生き物の為にホイホイと生活の場を与えるなんて。しかも人間だった頃の感情まで引きずっています。誰かもっと優秀な方に代わらないかしら。そう思っていたけれど、考えを改めることにしました。宇宙再生のやり方は二つあり、一つはわたくしにとって最悪の方法でした。あの御方の事を考えるなら、今のままで良いのです。そう、このままあの御方と愛を育んでいければそれで良いのです”


 いやはや自分勝手です。ところでこの人 “愛を育む” と言ってますが、具体的に何をしていたかって? 読んで物凄く腹を抱えました。

 それ、ただのストーカーです。肉体の関係を持った時の為に事前に裸体の情報を集めるとか、完全に変態に成り下がっているのに気付いていないし。想い人の態度は仕事以外はどんどん冷たくなっていってるし、実に痛いお人だ。

 タイトルに偽りは無かった!


「は、はひっ、紅月様、どうっぞっ……」


 あ、紅月さん起きたのね。え? 私たちの声? 失礼しました。寝ぼけた猫ちゃんかわいいです。

 リコちゃんが這いつくばって紅月さんに例の本を渡した。


「はぁ~、私が倒すべき方の恥ずかしい情報ですか。ぜひ入手しておかねば……ぶっは!」


 早速吹いたね。ん? 何か最初の方の言い方引っかかるな。


「……ふっ、ふはっ! これはいい計画が練れそうです。くくっ、肉体と同時に精神も追い込んで差し上げましょう」


 あれ? 紅月さんは何やらやる気になってるぞ?


「再び我が息子に手を出してくるならば地獄の中の地獄に叩き込んでくれるっ!!」


 あー、息子さん絡みなのか。息子いたんだ。てゆーか、息子さんどんな存在よ?

 事情を聞いたら、息子さんは大宇宙の太陽の神の後継に選ばれ、先代の魂と同化したそうな。成る程ね。

 わー、ヤンデレとヤンデレの対決になりそー。紅月さん、結構ヤンデレだよね。ヤンデレ扱いでいいよね?


「ふうっ、では神様に報告しなきゃね」


 ふいに初代様の言葉が響いた。たまたま静かになった瞬間の呟きだったので、物凄くはっきり聞こえちゃったのだ。


「もしもし、神様? 今焼きイモおサルのとこ。……え? ルート変更? 棒ナスおサルでなくて、急須の中のタヌキさん? そこから花サボテンゲートに突入? はいはい、ええ、途中で……ハイ分かりました」


 あれ、ルート変更? どうしたのかな。

 ……ってゆーか!

 ケータイで会話出来たんか!? アドレスチェーック! ……入って、ない。わざとか!? わざと神様は外したのか!? 他のあの世スタッフの人のは何人か入っているのに何で?

 紅月さんに神様のケータイアドレスの事を聞いたら、あの世スタッフでは初代閻魔大王と紅月さんのみに教えられていて、さらに世間話程度でかけてくるなという注文も付いているとのこと。納得した。


「ルート変更だよ。群青に説明しなきゃね」


 何だ、結局群青さん叩き起こされちゃったじゃん。私の心遣いは無駄だったな。


 オレガノさんは今は合流しないそうな。何やら不安要素があるので、念のため神様の所へ行かない方が良いと判断したとのこと。代わりに情報はガンガン喋ってくれている。

 まぁ声は私を通して聞けたので、我が子はそれだけで満足していたけど。でもやっぱり会わせたいな。



 ◆拾い物◆


 何事もなく急須の中からタヌキさんが頭を出している像に辿り着いた。出発が日の出前だったせいか、まだ正午にもなっていない。午前11時近くくらいかな。


「神様にね、拾い物頼まれちゃってね。どこかの地下都市から逃げた子たちが、ここに辿り着いたんだって」


 初代様に従い、私たちは像の中に入る。

 そこには五つの魂が転がっていた。小さいけど辛うじて人の形をしている者、ただの球体になってしまった者。けれど皆等しく弱っているのが分かる。

 新月さんに一時保存用の器を頼んでいたけど、数は二つだったっけ。もっと頼んでおけば良かったかも。

 うーん、神様のとこまでギリギリいけるか?

 あれっ? そういえば回復アイテムが出てくるボタンが中の案内板の側にあったはず。あれを……と考えたところで初代様に呼ばれた。


「真緑、おいで」

「はい?」


 初代様について行くと、魂たちがこちらにヨロヨロと寄ってきた。


「保護お願い」

「はいっ!?」


 ポイポイと魂を私の中に突っ込んでいく初代様。私は魂保管庫ですか!? そしてちゃんと保管出来てる!


「ほら、大丈夫。まだ冬じゃないよ」


 初代様が最後の魂に語りかけ、魂はオドオドしながら私の方にやって来た。


「……ユキ、コワイ……クルマ……アブナイ……」


 ああ、冬でかつ雪がしっかり積もっている地域で自動車事故を起こしたか巻き込まれたかが原因で死んだのかな。死んだ瞬間の恐怖が張り付いてるんだ。

 いつの事なのか分からないけど、今日までよく存在できてたね。元々が強い魂だったのかな?


「もう死んじゃってるので大丈夫ですよ。車に乗る必要もありません」


 てっぺんを撫でる。少し落ち着いたみたいで、雰囲気がホワンと明るくなった。


「……フカフカ……ケガワ……モフ、モフ……。ペット、カイタカッタ……」


 おお、やはりモフモフ効果は侮れぬな。


「こっちでもペット飼えますよ。まずはゆっくり魂を休めて下さい」


 まるで布団にダイブするかのように、魂は私の中に入っていった。

 ……それにしてもどうなってんだ私って。



 少し休憩したら出発になった。群青さんが気合いを入れてリヤカーを引く。

 走って、走って、ひたすら走ってたら、段々と周囲の様子に変化が起き始め、やがて完全に景色が変わった。

 地面があった荒野から、天地の区別が全くつかない所に出ていた。

 宇宙空間的な感覚ながら見た目は違う。極彩色の光が混じり合い、常に色が変化する空間。その先に様々な種類の花を咲かせたゲート状の形のサボテンが見えた。

 以前、神様の所に行った時はクーラーBOX詰めだったから見てないんだけど、あの時もこんな光景だったのだろうか。

 ともかく、ようやく神様の所に到着。さて、ドロップキックはいつかまそうか。


 太陽神が創造神への態度を改めたのは、本格的に宇宙創造を行った直ぐ後です。

 この二人、恋愛カテゴリーで使えるネタが満載なのですが、ガチの恋愛物書く気起きねー。

 恋愛物は読み専なのですじゃ。

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