エピローグ
「おーい、ヴェス君!この書類こっちに持って行ってくれ!」
「はい~ちょっとまってください!」
王城襲撃事件からすでに一年。
王城の内部は右に左にと大忙しだった。
「シンク団長!これ、警備の予定表です、確認してください!」
「わかった!おい、おまえら!こっち来い!」
「はっ!」
「今年から始まる『時』と『光』の十日祭は新たなる国家の始まりを祝した、第一回目の大事な式典だ!各自、気合入れていきましょう!」
アドが王城内の執務室で大声を張り上げる。
「そんなこと言うならアドさんも手伝ってくださいよ!」
「こっちも人手が足りない!誰か、大工仕事に覚えのあるやついないか?」
「こっちは計算だ!金勘定うまいやつ!」
「金?金なら私に任せ、ぐぇっ!」
アドがヴェスの襟首をつかんで引き寄せる。
「私は休憩中だ!そして、ヴェス君はお金に触るの禁止です!」
「ええ!そんなぁ・・・!」
執務室が笑いに包まれた。
「でも、今年のお祭り、うまくいくといいですね」
「ああ、この一年間いろいろあった。だけどそれらを乗り越えて来たじゃないか。きっと大丈夫だ!」
アドは一年を思い返す。
あれから、アドは一年間かけて王政を廃止し、議会制を国に導入した。
というのも、王政が意味を成していたのは、時計塔の秘密を守る。
この一点だけであった。これが無くなった今、王政である必要はなく、国王は襲撃事件を受けて、引退すると表明した。
これまで、貴族制度に胡坐をかいていた貴族たちは当然反対したが、一部の有力貴族はすでにアドが懐柔していたため、そこから、徐々に貴族たちを崩して行った。
貴族たちを崩すことは本当に命がけだった。
ヴェスは毒殺や暗殺などからアドを守る役職に就き、片腕ながら、アドの命を何度救ったかわからない。
また、フォルテのいなくなった騎士団はシンクが引き継ぐこととなっていた。
これは団員達の強い要望でもあった。
真実を知った団員はむしろ、真実を一人で抱えていたシンクに同情し、秘密を共有してくれなかったことに憤慨していた。
シンク本人はしばらくの間、団長代理をするだけだと言っていたが、代理の期間はかなり長引きそうであった。
様々な思い出が頭の中を駆け巡る。
アドは、ゆっくりと窓際に移動した。
すでに、日は落ち、明日の祭りに向けて、街はあわただしく活動している。
しかし、窓から見える街並みに美しい光のグラデーションはなくなっていた。
「光技術が、まさか女神さまからお借りした力だとは思いませんでしたね」
「そうねぇ。まさか、すべてのあの時すべての光が人の扱えるものじゃなくなってしまうとは思わなかったわ」
「ええ、あの後、初代の王の時代に書かれた文献を見つけることができまして、その内容に驚きました。初代国王は、人間が持ちうる全てをもっていたお人でした。その方が望んだのは女神の力でした。その方女神と契約したことで、我々は少女の犠牲の上で光を使えていたのです。その犠牲が無くなった今、人間が光を使えなくなることは当然の流れだったのです」
「不便ね」
ヴェスは笑顔でそう言った。
「不便です。ですが、きっと、人間は自分の力でこれまでと同じところに到達できます。何百年かかるかわかりませんがきっと」
「そうね。私たちは死んじゃってるかもしれないけど」
アドもにっこり笑って、時計塔を見上げる。
「問題ありません。きっと、彼らがその世界を見てくれますから」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
楽しんでいただけたでしょうか…!拙いところも多いと思います。
精進します!!
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